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求できることとなるのである。このような事態に応じた情報安全保障の基本的な考え方、具体的措置等が確立されなければならない時点に達していると考えるべきである。

情報安全保障は、情報自体の保護対策という消極的な側面だけではなく、国としての情報イニシアティブの確立という積極的な側面もある。情報産業の育成、情報利用環境の整備等によって、一国における情報イニシアティブを確立しないと、他国の情報侵略を受け、国の基幹産業、経済社会活動、国民生活へ多大な影響を受けることになるという問題である。第2章で記述されたEDIや電子マネーという極めて現実的で今日的なプロジェクトが、日本の商業取引の在り方を国際的な舞台で見直しすることが求められているのであり、金融政策にまで影響を及ぼしかねないとされているのである。国の行政機関、地方公共団体だけではなく、民間団体、国民等、国をあげて検討し、確立することが求められる今後の重要な課題であることは間違いない。

 

6.行政情報化の計画的推進

 

行政の情報化が四半世紀を経て、行政運営の様々な分野において大きく貢献し、行政の改革、効率化に不可欠な存在となりつつも、従来は個々の省庁の個別努力によって推進され、政府全体に関連する場合においてのみ、総務庁の総合調整機能によって調整されるという状況があった。平成6年に策定された「行政情報化推進基本計画」の意義は、先ず各省庁の情報化を含め、行政全体の情報化を一定の方向性の下に、整合性を図りつつ、重複を排除して推進するという方針を各省庁全体が認めたことにある。

本来、国の行政は、各省庁の分掌が明確に規定され、その間のグレーゾーンや要調整領域がないようにできているのである。しかしながら、情報技術の進歩やネットワークの普及は、既存のフレームワークを超えて機能する要素を持っており、それを活用することによる新しい行政運営が期待されるようになるに至って、個々の省庁の個別情報化だけでは、対応できない事態が発生するに至り、初めて政府全体としての計画の必要性が認識されたのである。

このような状況において、行政の情報化全体の方向を示す「行政情報化推進基本計画」の下に、その内容の実現に必要な共通推進事項を明らかにした上で、各省庁の個別計画作成を促したという基本的な方向は適切なフレームであると考えられる。この「行政情報化推進基本計画」の推進に関する今後の課題については、第3章で記述したとおりであるが、

 

 

 

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