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クは育種に重要な手段として組み込まれており、それは単収のブレーク・スルーをもたらすものではなくて、漸増をもたらすものと認識されている。29)フィリピンのIRRIでハイテクも使用して開発されている「超高収量稲」は、穂の付かない茎をなくし、 4本ほどの大きな穂の付く90センチほどの高さの短く強い茎を持った草型で30%増収することを計画している。30)しかし京都大学の堀江教授によれば、日本でのこの稲の栽培試験ではこのような成果は得られないとのことである。

 

4 需要要因

 

人口爆発は戦後主として発展途上諸国で発生してきたが、国連の推計によればそれは1990年から2020年にかけてピークとなる。この期間世界人口は毎年9千万人から1億人増加し、90年の53億人の世界人口が2020年には80.5億人になる。この人口爆発はほとんどが発展途上諸国で起こり、同期間に途上国の人口は40.8億人から66.6億人と年率1.7%で増加する。アジアの人口は、29億人から45億人へと年率1.64%で増加する。そして2050年頃には世界人口は約100億人と現在の2倍となる。穀物(コメ、小麦、大麦、ライ麦、とうもろこし、オート麦、ソルガム・雑穀の合計)は爆発する世界人口が必要とするカロリーの主要部分、そして特に現在もそして21世紀にも世界人口のほぼ8割を占める発展途上諸国の人々のカロリーの大部分を供給する。31)90年から2020年にかけての発展途上諸国やアジアでの人口爆発はそれだけで穀物必要量を爆発させ、だからこの期間に穀物供給量も急増しなければならない。
穀物需要は人口爆発に加えて所得増に伴って増加する。特に発展途上諸国で1人当たり所得が増加すれば、先ずそれによって直接に穀物需要が増加し、さらに食糧消費で動物性蛋白質の重要性が増し、その増産のための飼料穀物需要が急速に増加する。アジア発展途上諸国の人口1人当たりGNP(所得)は世界銀行の統計32)によれば、1980〜93年の期間年率3.0〜6.4%と他の発展途上諸国のそれが全体としてマイナスの成長しかしてこなかったのに比べ突出した成長をしてきた。このアジアの高成長により発展途上諸国全体の1人当たりGNPは80〜93年の期間ほぼ1%の成長をしてきた。

 

 

 

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