途上諸国は同図が示すように先進諸国と逆に純輸出から純輸入地域になり純輸入量を急増させた。これは欧米による過剰農産物のダンピング輸出による途上諸国の食糧価格の低落と途上諸国自身の農業搾取政策が大きな要因と考えられ、不公正であり、また工業先進諸国が農業的途上諸国へ食料を輸出するのであるから比較優位性から見ても望ましくない。
欧米の農業政策の転換は、しかし直接これら不公正の是正と比較優位性の確保のためではなく、上述のように国内農業保護の削減と輸出補助の削減による過度の財政負担の軽減と環境保全と地域格差是正のため、上述のように80年代後半から始まった。先進諸国の食糧純輸出は85年にかなり減少し、90年代には急減しているFAOの先進諸国農業生産指数は86年から92年にかけて逓減している。欧州の人口1人当たり食糧生産はPAOによれば84年のピークから92年にかけて傾向的に減少している。アメリカのそれも81年のピークから逓減傾向が認められる。この転換は92年のECの農政改革、85年と90年のアメリカ農業法とウルグアイ・ラウンドの農産物合意によって強化され、その結果世界の穀物在庫は上述のように傾向的減少を続け、穀物価格は上昇を続けたのである。この転換はWTO体制とアメリカのデイカップルした世界市場対応の96年農業法とEUの農業保護削減の継続の下21世紀にかけて継続され、低位世界穀物備蓄と高位穀物価格の状態が維持されよう。転換によって結果として上述の不公正が軽減されはじめ、比較優位性にもどりつつある。しかし、欧米の穀物国際備蓄がなくなるから穀物価格が高くなり、不安定になり、世界の11億人の貧困人口、8億人の飢餓人口を危機に陥れるという大きなコストが発生する。
3 供給要因
穀物の長期供給規定要因には土地、水・潅がいなど自然資源と農業技術などがある。世界の耕地面積の年増加率は、FAOのデータでは60、70、80年代に0.33、0.28、0.18%と減少してきた。後述するように人口爆発はこの間激化してきたから、世界の人口1人当たり穀物収穫面積は、図3が示すように50年の0.24ヘクタールから94年の0.12
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