3 縁の革命の将来展望と課題
以上で述べたように、緑の革命は、若しそれがなかっとしたら、これまでに世界で発生した可能性の強い深刻な食糧問題もしくはマルサス的危機を救った農業技術革新であり、先進国からの国際的技術移転と途上国側の政府・農民による積極的対応による国際協力の成果として、人類の歴史に必ず残るであろう世界的変革の出来事であったと云えよう。
確かに、その展開過程において、長年にわたって維持されてきた慣習的農村社会の秩序を破壊する性格はあったであろう。しかし、それも社会が近代化する上での一つのプロセスと見做せば、あったとしてもそれは必要悪とも云えよう。
しかしながら、緑の革命は、近年強調される環境保全や農業の持続的発展の面から問題がないわけではない。高収量品種の効果を高める上で、多量の化学肥料や農薬を必要とするし、水もポンプを使うなどして人為的に多用することにもなれば、それまでの環境や生態系の循環を狂わせる要因となろう。また、限られた特定品種の稲のみが広範囲にわたって植えられることになると、各地方の固有の自然環境の中で持続されてきた在来品種が絶滅してしまう危険がある。また、ひとたび病害虫や冷害が発生して、広範に植えられた特定品種が被害を受けることになると大凶作にもなりかねない。(15)
短期的には、そうした大凶作を防ぐために、性格の異る近代的品種を栽培する配慮が必要であろうし、将来の種の改善を保証するには、日頃から、意識的な多様な在来種の保存努力が必要であろう。また、ローインプットで自然環境によりやさしく、自然の生態系により合致した方向での品種改良も必要であろう。
日本の米需要の変化から明らかなように、消費者の所得が向上してくると、まずくても腹一杯の米を食べていたのが、美味しい米を少量食べる方向に変ってくる。つまり、近代品種ではあっても、収量を犠牲にしても美味しさを追求する方向での品種改良が、高所得層の米への需要を減らさぬ上で必要であろう。(16)
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