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第5章 緑の革命の評価と将来

 

日本大学生物資源科学部教授
山田三郎

 

はじめに

 

第二次大戦後、途上国における人口爆発の結果、戦前には全く経験されなかった高率で世界の人口は増加し、食糧需要は著しく増大した。しかし、世界の食糧供給は、何回かの食糧危機と云われた時期はあったものの、需要増大に対応する供給拡大を実現し、世界規模での食糧不足が持続することなしに今日に至っている。(1)このような食糧の供給拡大がなかったらもたらされたかも知れない、地球規模でのマルサス的危機を回避する上で、最大の貢献を果たしたのが「緑の革命」(Green Revolution)である。
周知のように、緑の革命は、1960年代当初ロックフェラー財団・フォード財団を中心に設立された国際農業研究機関であるフィリピン、ロスバニオスの国際稲研究所(International Rice Research Institute, 略称IIRRI)で開発された高収量の稲の新品種、並びに、メキシコでロックフェラー財団が1940年代から進めてきた現在の国際とうもろこし小麦改良センター(略称CIMMYT)で開発されたとうもろこしと小麦の新品種の普及による、穀類の世界的大増産の実現である。これら高収量品種の開発は、アメリカ・日本を中心とした先進国農業技術の途上国農業への国際技術移転の典型的事例として位置づけられるものである。
本章では、特にアジアで重要な意味をもつ稲に限定して、まず、緑の革命を技術的側面から評価し、次いで経済的・社会的側面からの評価を行い、最後に、その将来的展望を試みる。

 

1 縁の革命の技術的評価

 

緑の革命の核となる技術的革新は、従来、アジアで広く栽培されてきた在来品種

 

 

 

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