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2 南アジア

 

1) 継続する食料問題
インドを中心とする南アジアの貧困人口は5.2億人、栄養不良人口は2.7億人で、全世界の各人口の47%と34%、また南アジアの総人口の51%と24%を占めている1。飢餓が購買力の不足を基本的原因とするものである以上、飢餓の解消は、食料の再分配ではなく、飢餓の生じているその地で農業・農村振興を行う以外に道はない。農業で直接・間接に生計を立てている人口が圧倒的多数を占める南アジアなどでは特にそうである。
南アジアの経済に占める農業の地位は依然高い(表2)。GDPシェアこそ近年急速に低下し30%を下回る状況も出てきたが、人口の70〜90%は農村居住者であり、また労働力人口の50〜60%以上を吸収しているのが現状である。
土地資源に恵まれない南アジアでは、農業は、経済発展のエンジンにはなり得ないであろう。しかし、農業成長が経済発展の重要な基礎条件の一つであり、農業を軽視した開発戦略が失敗に帰してきたことは、食料危機を契機とした1960年代半ばのインドの重化学工業化の挫折を想起するまでもなく、歴史が雄弁に物語る通りである。1991年以来、インドは本格的な経済自由化路線に転換し、これまでのところ「新中間層」の消費ブームに支えられて順調であるが、農業の動向次第では予断を許さない。1970年代末の農村改革による農業生産力の上昇と農村所得の平等で大幅な引上げを前提条件として、郷鎮企業を中心とする急速な工業化を達成しつつある中国の経験は、南アジアにとっても貴重な教訓となろう。
南アジアの農業は、可耕地が耕され尽くして久しく人口増加圧力による環境劣化が強まるという悪条件に抗し、食料増産を通じて住民の貧困と栄養不良を改善しつつ、経済発展の基盤を形成していくという、重要かつ困難な課題を背負わされているのである。

 

 

 

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