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大学についても、インドネシアは1970年代の1%を下回っていたのが、90年には2%へと大きく上昇している。また、産業高度化ではアセアン諸国に比べ10年程度の段階差をもつNIEsタイワンの例では80年代において既に学歴構成で大学・短大は10%を上回るに至っている。(第9表参照)
このような労働力の質の上昇の経済効果については、最近の20年間のマクロ的実績では、平均就学年数の3年の増加(中等教育主流から高等教育主流への変化に見合うもの)は1人当たりGNPの上昇率の4%程度上昇と見合うとされている。教育投資の収益率は決して小さなものでないことを示唆している。財政に占める教育の比率はフィリピンを例外として、この地域のすべての国で増大しており、90年代に入ってからは韓国の23%を筆頭にフィリピンでも10%となっている。(第10表参照)
以上みてきた普通教育は、短期的に必ずしも顕著な経済効果をあげるとは限らない。こうした事情が、絶えず熟練労働力不足を企業産業サイドから要求させるところとなるのである。これへの対応として、民間レベルでも各種専門学校、職業教育機関も開設されているが、公的サイドでも職業訓練センターが拡充されつつある。日本も鈴木首相のアセアン訪問時を契機とした職業訓練機関の設立拡充支援を提起するところとなった。マレーシア、フィリピン、インドネシアなどでは公的職業訓練機関の養成者数を80年代の10年間に2倍以上に増加させ、機械、電機など先端技術職の比率を後者では6割、前者でも2割強と工業技術重視の傾向を強めている。
アセアン諸国の人的資源開発、技能養成はこれらの国の企業の零細性の関係で現状は必ずしもニーズに対応し切れていない。企業の規模はタイを除けば、その他アセアン諸国は10人未満の小零細企業の比率が90%前後と高く、企業負担での養成には限界がある。こうした事情の中では、進出外資系企業の技術養成の寄与は大きいといえよう。日本の進出企業は現地主義を人材面でも実施するため、下級、中級監督職の確保が急務とされているが、研修生受入れは89年の2.9万人から93年の4.3万人へとかなり大きく増加している。

 

 

 

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