2 製造業の高度化
つぎに製造業内部の産業構造の変化をGDP構成比の面から眺めてみよう。アジア地域に止まらず発展途上国の産業発展戦略は1960年代の輸入代替戦略から1970年代の輸出育成戦略へと基本的には転換された。輸入代替産業の中心はいわば素材産業で、インフラ整備など経済発展の初期段階のニーズに応えるものとされたのであるが、国内市場が相対的に規模小で、かつ国際競争力が弱いこと、他方、資本集約的であるために雇用創出力が小さいことなどを理由としてこの産業戦略は転換させられた。輸出育成産業はこれらの国々に存在する豊富にして低廉な労働力を有効活用することによって、国際競争力に優位であること、雇用創出効果が大きいこと、先進工業国からの資本進出に伴う技術移転が比較的容易であることなどを理由としてこの戦略が採用されたものである。
こうした輸出産業の尖兵となったのが製造業としては繊維衣料産業、食料加工農産業であり、ついで、機械機器産業であった。70年代はアセアン諸国はいずれも食料加工産業は製造業の内部ではトップのシェアをもつものであり、フィリピンなどは40%をこえていたほか、他の3国も20%前後のシェアをもっていた。また、繊維衣料産業は、タイ、フィリピンなどこれにつぐシェアをもつ国が多かった。(第2表参照)
これらの比較的労働集約的産業は80年代に入っても、そのシェアを低下させることなく維持されたのであるが、これに続くものとしての機械機器産業のシェア拡大が80年代に入ると注目されるところとなった。とくに顕著なのはマレーシア、シンガポールで、シェアでは食料加工産業を上回るレベルを実現するまでになった。経済成長に意欲的で、外資導入に積極的な姿勢をとり、技術移転効果をも期待した半導体産業の育成はその典型であった。たまたま、時期的には、日本をはじめとする先進工業国のグローバル市場戦略とも利益が一致したことの影響が大きかったのである。
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