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るとか、砂漠を緑化させるといった技術である。これら良いテクノロジーが将来どれだけ発達して、環境破壊を食い止めることができるかはまだ分からない。しかしともあれ、科学技術の発達いかんによって地球の扶養力の計算が変る余地はまだありそうである。
第2の要因は、それぞれの国、文化、宗教におけるtaste、趣向、食習慣、消費性向、ライフスタイルが将来どうなるかによって、地球の扶養力は変り得るということである。地球の全員が現在の米国のように大量の食肉を食べ、石油を消費し、広い敷地の大きな住宅に住むことを理想とすれば、前述の120億人という人口を支えることは難しいだろう。しかし、インド人は永久に牛肉を食べないかもしれないし、日本人は米国の中流の家庭が1200坪の敷地に3人くらい住むというライフスタイルを拒否し、兎小屋に住むのを良しとするかも知れない。世界のすべての人が米国を代表する西洋物質文明を最高善として、それに収鮫して行くかどうかは、これまた分からない。東洋哲学をとり入れた別のライフスタイル、別のパラダイムの文明が現われてくるかも知れないのである。

 

6 世界人口増加の衝撃と対応

 

人口増加はマルサス以来否定的に考えられることが多い。1950年代、60年代の議論として、発展途上国においては、人口増加は開発の遅滞と生活水準の向上を阻害するものと考えられた。高出生率に帰因する人口増加は当然巨大な年少人口をもたらし、その養育・教育のための経済的負担のために、とても経済の開発の余裕は生まれないというものであった。しかしこれに対して、最近はリビジォニズムとよばれる修正主義的考え方が欧米で起こり、人口増加が烈しくない限り、それが経済開発を促進する効果もあることが指摘されている。
しかし過去10年の間に、世界の人口増加、特に途上地域の人口増加が今度は地球環境に大きな悪影響を与えていることが明らかとなった。特に貧しい途上地域における烈しい人口増加は、農地の酷使や無理な拡大となって、地球生態系の均衡を大きく崩

 

 

 

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