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発明者であるオランダ人Leeuwenhoekであり、1679年に134憶という数字を出している。これは、当時世界で最も人口稠密であったオランダの人口密度を地球の表面で生存できる面積に掛けて計算したものである。しかしこの数字が、300年以上も経った現在、国連や世界銀行が最近行った22世紀半ばの、安定化に入った時期の世界人口推計(国連115億、世銀114億)とあまり変らないのは興味深い。
コーエンによれば、これまで地球の扶養力を計算した事例は67あるという。これらの研究結果をみると、一番小さい数字は10億人、一番大きい数字は1兆人である。一番大きい数字は一番小さい数字の1000倍もあり、非常に大きな範囲にあることが分かる。種々な推計方法があるが、その中で最も多いのは、世界でどのくらい食料が生産できるかの極大値を計算し、それを人間一人当たりに必要な食料所要量で割るという方法である。中には食料の代りに地球で得られる真水の量から計算したものもある。コーエンによれば、67の推計の中で集中的に多いのは40億から160億の間であり、この範囲の推計値を平均すると120億になるという。これは前述の国連や世銀の推計人口により近い。こうしてみると、地球の人口扶養力は大体120億前後くらいというのが一つの目安であるといえる。
ここで地球の扶養力についてさらに論ずる余裕はないが、一つのことがいえると思う。それは、今の段階でまだ地球の扶養力について決定的なことはとてもいえないのではないかということである。そこで二つの要因が考えられる。第1は科学技術の進歩が22世紀頃までどのくらい進歩するか分からないということである。ローマクラブの有名な『成長の限界』(1972)は、人類は食糧不足の危機以前に地球環境破壊によって滅亡するという警告を発した。しかしそこでは、科学技術は工業生産・農業生産と連結して地球公害を増幅するだけの悪い科学技術として主に考えられている。アーリック(Paul R. Ehrlich)の有名なI=PAT、つまり環境破壊に対するインパクトは、P(人口)、A(消費)、T(技術)の相乗積として想定されているが、ここでも技術は悪いテクノロジーだけとして捉えられている。
しかし、科学技術は悪い面ばかりではない。そこには良い技術の側面も十分考えられる。巨大人口と大量消費からもたらされる環境破壊のインパクトを抑制する技術であり、環境を浄化する技術である。たとえば、大量の藍藻を培養して酸素を発生させ

 

 

 

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