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中位推計によれば、世界人口は2150年に115億人となり、22世紀後半に120億人台で安定すると予測される。一方中/高位推計をみると、世界人口の安定化はまだ先のことのようにみえる。2150年には208億人となり、中位推計よりも1.8倍増える。高位推計によれば、2150年の世界人口は280億人で、安定化はみられない。一方、1990年の出生率を一定とする推計では、2150年の世界人口は6,942億人で、これは途方もない数字である。最後に順序が後先になったが、NRRが一據に1.0に低下する推計によれば、それでも人口増加はしばらく続き、2150年の人口は1990年の人口の1.6倍となる。これが人口のモメンタムと呼ばれる、人口の惰性的増加である。
以上の将来の世界人口推計をみて、中位推計は途上地域の出生率低下、特にアフリカのそれをやや楽観的にみているように思われるので、中/高位推計の方がより現実的であるとも考えられる。そうであれば2150年の世界人口は208億人でその後さらにいくらか増加するのは必至である。はたして世界の人口扶養力が200億人以上の人口を支えるほどあるのかどうかが、次の課題となろう。次節においてそれらを論ずる。
さて、図1は世界人口の増加率の超長期的推計を示したものである。先史時代から現在までの推移で特徴的なのは、18世紀以前は人口増加率が平均して極めて低かったことである。もし世界人口の静止が将来の姿だとする国連推計が正しければ、図1に示すように何百万年にも及ぶ人類の歴史と今後の長い未来を通じて、人口増加率が1%を超えたのは20世紀から21世紀前半にかけての100年にも満たないごく短い時代にすぎなかったことになる。現在生を受けた人々は、まことにもって希有の時代を生き、人口の歴史の上で最も劇的な転換を眼の当たりにする無上の機会に恵まれることになる。

 

5 世界の人口扶養力

 

地球はどのくらいの世界人口を扶養できるか。これは古くて新しい問題である。最近書かれたコーエン(Joel E. Cohen)のHow Many People Can the Earth Support? (W.W.Norton& Company 1995)によれば、世界人口の扶養力を初めて計算した人は顕微鏡の

 

 

 

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