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3 途上地域の人口爆発とその鎮静化への努力

 

日本では人口問題というと人口高齢化、少子化、そして21世紀の人口減少の予想である。しかし世界全体をみると、世界人口、特に途上地域における人口爆発的増加、それに関係する貧困の増大、環境破壊が進行しており、この方がメジャーな地球的規模の問題である。先進地域における出生率の異常低下と人口高齢化はそれ自身として由々しい問題であるが、このところ毎年9000万人近い人口が新らたに加わって地球の収容力に負担を増している現状と比較すると、まだマイナーな問題である。(もっとも将来中国、インドで出生率低下の必然の帰結として高齢化問題が深刻になる可能性もあるが、インドはまだ大分先の話である。)しかも、世界人口増加の95%は貧しい途上地域で現在起きていることが、事態の深刻さを物語っている。
すでに述べたように、途上地域の烈しい人口増加は、何といっても出生率が非常に高くその低下がこれまで緩慢であったのに対して、戦後の死亡率低下が予想以上に著しく低下したことである。もちろんそのほかに、これまた前述の、戦前から現在までに集積されたべース人口が巨大であるという人口モメンタムの効果も重要である。しかしいずれにせよ、将来の世界人口の動向は途上地域の出生率がこれからいかに低下するかにかかっているといえよう。
そこで、出生率の指標として合計特殊出生率をとり、途上地域と先進地域の過去の趨勢、そして将来の予測された動向を眺めておく必要がある。表3は国連の人口推計に基づいて合計特殊出生率の推移を途上・先進地域別に示したものである。合計特殊出生率とはある時点における年齢別出生率を合計したもので、年齢構成の影響を除いたものである。この率がそのまま長期的に続くと1人の女性が再生産期間を通じて平均何人の子供を産むかを示す指標である。さて途上地域をみると、1950−55年では合計特殊出生率(原語はtotalfertility rateであるので以下TFRと省略)は6.13と非常に高かった。しかし1970年を過ぎる頃から顕著に低下し始め、1985−90年は3.83、1990−95年は3.48となっている。しかしながら、

 

 

 

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