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これらの問題については世界的に見てもようやく端緒的な研究が開始されたという段階である。需要面についてもアジアの急成長発展途上国、とりわけ中国の食糧・農産物需要構造変化のスピードとその国際貿易に及ぼす影響についても、悲観楽観論の両極端に分かれていることに示されるように研究は始まったばかりである。
また、自由な市場経済への世界的な流れの中で、農工間・地域間格差の拡大をいかに克服するか、サブサハラアフリカ、南アジア、ラテンアメリカの土地なし農民、貧民に象徴される飢餓、栄養不足を解決できる新たな世界食糧需給システムはいかにあるべきか、などの政策的な問題も、冷戦構造化でのように社会主義化の防止という観点か離れて、人類共通の問題として取り組むことが必要である。さらに、自由な市場経済の下で、各国政府による政策介入は、世界的な食糧需給や地球的な環境問題にどのような影響を及ぼすのか、農林水産業や人口抑制に対する国際協力のはどうあるべきかなどの問題を解明し、政策の方向を明らかにする必要がある。この場合、林水産業の技術開発の方向付けにとどまらず、先進食糧輸出国の過剰処理という短期的政策に振り回されることのない、開発途上諸国の食糧自立のための長期プラン構築など、食糧・貿易政策の形成を支援することが重要となろう。

 

 

 

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