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第1章 世界のバランス

ー人口・食料ー

厚生省人口問題研究所元所長

岡崎 陽一

国際農林水産業研究所

大賀 圭治

1 世界人口の現状

 

1950年に25億人であった世界人口は、現在(1996年)58億人(UNPPA,The State of World Population 1996)に増加している。およそ半世紀のあいだに2.3倍になったわけで、その増加率は年率1.8%となる。このように第二次世界大戦後の世界人口の増加は、人類の長い歴史のなかで前例のないものであった。地球上の人間の数が増加をはじめたのは、おそらく、人類が定住して農業を営むようになってからのことであり、紀元前何千年という遠い昔のことであろう。しかし、その増加の速度は決して早いものではなかったし、自然条件の影響によって、しばしば増加と減少が繰り返されるという状態であった。1650年頃の世界人口はおよそ5億人と推定されているが、この頃から持続的な増加が始まった。とくに18世紀中頃に農業革命つづいて産業革命が始まってから人口増加のテンポが早まった。1750年におよそ8億人、1850年に13億人、そして1950年に25億人になった。1650年から1950年まで300年間に5倍にも増加したわけであるが、その増加は年率0.5%に過ぎなかった。それゆえ1950年以降現在までの増加率(年率1.8%)が人類史上異例の現象であることは明かである。

第二次世界大戦後の世界人口の特徴は、その増加が著しかったというだけではなく、人口の地域配分と増加の地域差が大きいという点にもある。国際連合は世界を先進地域(ヨーロッパ、北アメリカ日本、オーストラリア、ニュージーランド)と発展途上地域(先進地域以外の地域)に分けているが(表1)、1995年に世界人口57億人は、先進地域に12億人(21%)、発展途上地域に45億人(79%)という配分になっている。1950年は世界人口25億人であったが、先進地域に8億人(32%)、発展途上地域に17億人(68%)という配分であった。

1950年から1995年までの45年間に世界人口は32億人増加したが、先進地域では4億人、発展途上地域では28億人の増加であった。それゆえ第二次世界大戦後の世界人口の増加は、おもに、発展途上地域で起こったといってもよい。

 

 

 

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