
■事業の内容
(1)消波性能シミュレーション 仮設防波堤が一基設置されている状態を想定して、堤体背後の波高分布、堤体端部からの波浪の回り込みの影響については、中古VLCCのような大型浮体の堤体背後の広い海域における波高分布とその波の特性(波周期、波方向、波の集中度パラメータ)の影響が解明された。 (2)浮防波堤の配置検討 静穏海域創出に有効な浮防波堤の配置を検討して[1]直列配置[2]千鳥配置を選定し、堤体隙間を変え、消波性能に関するシミュレーション計算をおこない、水槽試験の堤体配置として、直列配置と千鳥配置の2種を選定した。 (3)静穏海域創出シミュレーション 選定した浮防波堤の配置について、堤体を複数基配置した状態に対して、堤体背後海域の静穏海域の静穏度に関するシミュレーション計算をおこない、各防波堤配置による堤体背後海域の静穏度の特性が把握され、効果的な堤体の配置・間隔等が明らかとなった。 (4)係留システムの検討 大型浮体の係留システムとして、強化繊維ロープとチェーンを合わせたハイブリッド係留方式が大型浮体の係留システムとして有効な方法であることを確認した。 (5)水槽試験 [1] 3次元水槽試験 a.消波性能確認試験 浮防波堤を複数基設置した状態で消波性能確認試験をおこない、堤体端部からの波の回り込みや堤体間の隙間からの進入波を考慮した消波性能を確認した。また、消波性能に対するシミュレーション計算結果との整合性が良好であることを確認した。 b.上記係留システム検証試験 浮防波堤一基を本係留システムにて係留設置し、設備能力範囲の大波高で試験し、係留力及び堤体の運動等を計測した結果、有効かつ十分に成り立つ事が検証された。 [2] 総合水槽試験 具体的な作業船の稼動海域を想定した、複数基の仮設防波堤での総合水槽試験を実施した結果、中古VLCCを仮設防波堤として設置することにより、全体として、透過率0.4〜0.6の範囲に収まっており、施工海域の静穏性を確認した。 (6)成果のまとめ [1] 研究成果報告書 中古VLCC利用の静穏海域創出について、船体改造法、係留システム、堤体配置等の2年間にわたる研究成果を「中古VLCC利用による外海工事用仮設防波堤の研究」としてとりまとめた。 [2] 中古VLCC利用の仮設防波堤による稼動率と経済性 a.稼働率 作業船の稼動率を常陸那珂を対象としてみたとき、施工限界波高を有義波高が0.5Mより低い状態であるとした場合の作業船の稼働率は以下のとおり改善することができる。 (a)3次元水槽試験結果 堤体後方500mにて、通年72.8%、春62.9% 夏83.3% (b)シミュレーション結果 堤体後方500mにて、通年66.5% b.経済性 仮設防波堤を設置しない場合の作業船の稼動率を5%から20%の中間と想定した場合、複数の仮設防波堤を設置することによって十分な経済性を確保出来ることを確認した。
■事業の成果
本事業は、中古VLCCを仮設浮防波堤として利用するために必要な船体改造による消波性能の向上と外海における係留システムの確立等に関する研究を行い、工事用作業船の稼動率の確保並びに経費の節減及び安全性に寄附することを目的としている。本年度の基本的研究成果を基に、静穏海域創出の全体システムの検証、中古VLCC利用の浮防波堤による静穏海域創出技術の総合的な解析及び評価をおこない、性能の面から効果的な静穏海域創出の目処が得られた。
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