
■事業の内容
(1)ビデオ映画のナレーションの吹替え等 日本籍の混乗船に乗り組む外国人船員及び船舶所有者等に対する視聴覚教材の一環として既存の安全教育指導用ビデオ映画の日本語のナレーションを英語のナレーションに吹替え等を行った。 [1] ビデオ映画の題名 「生き抜くために」(サバイバルトレーニング)一式 [2] 規 格 日本語のナレーションを英語のナレーションに吹替え等。 [3] 数 量 オリジナル1本、プリント20本 [4] 内 容 先般、運輸大臣から平成5年度を初年度とする第6次船員災害防止基本計画並びに平成6年度船員災害防止実施計画が策定されたが、その中で昨今における外国人船員との混乗船の増加に伴い、これら混乗外国人船員に対する安全衛生対策が大きな施策として掲げられている。 当協会としても策定された施策に基づいて事業を展開していく上から、これら混乗外国人船員に対する安全対策の一環として既存のビデオ映画「生き抜くために」(サバイバルトレーニング)の日本語のナレーションを英語のナレーションに吹替える等外国人船員の災害防止対策を強化するため作製した。 [5] 配布先 本部及び各支部(11カ所) (2)小冊子の作製 各種船舶に乗り組む中高年齢船員に対する安全衛生教育用教材として小冊子を作製した。 [1] 題 名 「いつまでも健やかに」―中高年船員の成人病予防― [2] 規 格 A5判 125頁 [3] 数 量 4,000部 [4] 内 容 近年における若者の海離れにより、いわゆる35才以上の中高年齢船員の占める割合は平成4年度においては78%を占めるにいたり、これら中高年齢船員の疾病率も船員法第111条報告によると非常に高く全体の85.4%を占めており、主要疾患発生状況を疾病別にみると、潰瘍406人(12.8%)、脊椎367人(11・6%)・糖尿病139人(3・7%)と多くなっており、また、疾病別に死亡をみると胃の悪性新生物等15人(28,3%)、虚血性等心疾患14人(26・4%)、脳出血等の脳血管疾患11人(20.8%)、肝疾患7人(13・2%)となっており、これらの状況を踏まえて成人病予防対策を分り易く解説するとともにイラストを多用して小冊子を作製した。 [5] 配布先 支部、地区支部及び関係団体等173カ所 (3)訪船安全・衛生技術指導 船員労働災害の発生率が比較的高い中小型船舶を対象に、これらの船舶の在港時に各支部(11カ所)の訪船安全・衛生技術指導員が訪船し、安全・衛生措置の細目にわたり実地に指導した。 [1] 指導場所 函館港地247港 [2] 指導回数 697回 [3] 指導員派遣延人数 697人 [4] 指導船舶数 1,383隻 [5] 内 容 船員法、船員災害防止活動の促進に関する法律、船員労働安全衛生規則、船員災害防止協会制定の船員災害防止規程及び訪船安全・衛生指導要領等に基づき、船内安全・衛生管理体制、作業環境、居住環境、設備、機械、器具、安全標識、保護具、検知器等について指導助言した。 (4)漁船船員の生存対策の強化に関する教育訓練 漁船船員の労働災害は、主に船舶の転覆や操業中の海中転落によって発生している。このため、運輸省の指導によりSTCW条約に定められた救命設備の使用方法等について研修会を開催し、船員の生存技術に関する知識の修得とその普及を図った。 [1] 開催場所 伊根港地8港 [2] 研修回数 9回 [3] 講師等派遣人数 講師1名 本部、支部職員各1名 [4] 受講者数 477名 [5] 内 容 全国の漁船基地のうち9カ所において船舶の遭難緊急事態発生時における膨張式救命いかだによる生存技術習得のための教育訓練を行った。この訓練はSTCW条約に基づくもので、具体的には船体放棄に際しての注意事項を座学・映画により指導するほか、膨張式救命いかだ(ライフラフト)の投下展張等の実習並びに艤装品類の解説、指導を行った。 (5)船員労働安全衛生月間資料 平成7年度(第39回)船員労働安全衛生月間(H.7.9.1〜H.7.9.30)の実施にあたり、運輸省ほか関係官庁主唱のもとに、協賛者として船舶所有者及び関係団体等に対し、本運動の趣旨の徹底を図るため、当該月間の活動資料を次のとおり作製した。 [1] 実施のしおり a.規 格 A5判 28頁 b.数 量 17,900部 c.内 容 月間活動実施要網、主唱者・協賛者及び協力者の実施要綱並びに船舶所有者のための実施の手引等 d.配布先 船舶所有者及び関係団体等580カ所 [2] ポスター a.規 格 B2判 4色 b.数 量 21,000枚 c.内 容 月間周知用ポスター d.配布先 船舶所有者及び関係団体等580カ所 [3] 標語ビラ a.規 格 変型B5判 2色 5種 1組 b.数 量 22,300組 c.内 容 安全・衛生標語ビラ d.配布先 船舶所有者及び関係団体等580カ所 (6)高年齢船員の死傷災害防止対策 近年の高齢化社会と若者の海離れとが相挨って船員の高齢化(50才以上)が進み、平成3年度は全体の27%、平成4年度には28.5%と増加しており、また、一方高年齢船員の被災の割合も平成3年度では38.3%であったものが平成4年度には38.9%と上昇している。 このような状況に鑑み、平成6年度はこれら高年齢船員に対する心身機能等の調査を行い、高齢化に伴う心身機能の変化について調査を行ったので、平成7年度はその第2段階として、海上労働科学研究所と調査のための業務委託契約を締結し、船内の作業環境(照明、温度、騒音等)、作業方法について実態調査を行い、高年齢船員の災害防止のためのデータ収集及び集計・解析を行った。 [1] 調査実施場所 稚内港地5カ所 [2] 調査延回数 6回 [3] 開き取り調査等参加者 100名 [4] 内 容 高年齢船員の死傷災害防止対策検討委員会を開催し、本年度実施する調査方法等について検討を行うとともに、国内の6カ所の港等においてメンタルヘルスのデータの乏しい主に漁船、その他官庁船等の船員100名を対象に調査を行い、既存の外航船船員のデータと併せて集計・解析を行った、また、船内作業環境等の実態調査を行うため調査員を6隻の国内航路の船舶に乗船させ就労実態すなわち、照明、温度、騒音等、また作業現場でのビデオ撮影、心拍数の計測、疲労度等についてそれぞれ調査を実施し、資料の収集を行い、これらのデータを集計・解析して、被害発生の潜在要因等を明らかにした。
■事業の成果
(1)ビデオ映画のナレーションの吹替え ビデオ映画の「生き抜くために」(サバイバル・トレーニング)の日本語のナレーションを英語のナレーションに吹替え日本籍の混乗船に乗り組む外国人船員等に対する安全教育のための視聴覚教材として活用することにより、船員労働災害防止の意識の高揚を図った。 (2)小冊子の作製 小冊子「いつまでも健やかに」―中高年船員の成人病予防―を支部、地区支部及び会員ならびに関係団体等に配布し、中高年船員の疾病の予防の意識の高揚を図った。 (3)訪船安全・衛生技術指導 各支部(11カ所)が所管する区域の各港において、労働災害の発生率の比較的高い漁船等中小型船舶の在港時に安全・衛生技術指導員を派遣して適正な船内環境の維持、改善並びに安全・衛生意識の啓発を図った。 (4)漁船船員の生存対策の強化に関する教育訓練 国内の各漁港のうち9港を選定し、船舶の遭難等緊急時にいかに対応するかの生存対策と膨張式救命いかだ(ライフラフト)の取扱い等について座学で説明するほか、特に膨張式救命いかだの展張とその救命いかだに救助収容する方法等の実技を加え、参加者に対し生存意識の高揚を図った。 (5)船員労働安全衛生月間資料 運輸省ほか関係官庁が主唱する平成7年度(第39回)船員労働安全衛生月間(H.7.9.1〜H.7.9.30)の実施にあたり、船舶所有者及び船員のための手引書として「実施のしおり」を配布するとともに、ポスター、標語ビラを船舶所有者等関係者により船内及び事業所等に掲示して、当該月間の意識の高揚を図った。 (6)高年齢船員の死傷災害防止対策 高年齢船員の死傷災害の被災率は、年々増加傾向にあり、これら高年齢船員の災害防止のための船内作業環境(照明、温度、騒音等)、作業方法等について実態調査を行い、資料の収集を図り集計・解析を行った。 以上のとおり各種事業を実施した結果、船舶所有者、船員及び船舶所有者の団体等に対し船員災害防止活動の啓発に多大の貢献をするとともに、船員労働安全衛生月間において、当該月間の趣旨を啓蒙し、船舶所有者及び船員の安全・衛生意識の高揚を図り、船員労働災害の防止に顕著な成果をあげた。
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