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■事業の内容

(1) 21世紀における近畿圏の貨物物流ビジョン策定に関する調査研究
[1] 近畿圏における将来の物流構造の展望
a. 近畿圏における物流の将来予測
 既存の物流関連データ及び経済指標等を用い、将来の経済構造、産業構造等を踏まえたうえで、2005年を目標年次とした近畿の貨物需要量を予測した。
b. 近畿圏における物流の展望
 前年度実施した荷主・物流事業者のアンケート・ヒアリング調査結果並びに、委員会での検討を踏まえ、また、近畿圏物流に影響を及ぼす経済社会・物流変化等の定性的変化も踏まえ、近畿圏における将来の物流構造について展望し、とりまとめた。
[2] 近畿圏におるけ物流効率化方策の検討
a. 近畿圏における物流の課題抽出
 前年度調査結果並びに、上記(1)の検討結果に基づき、近畿圏の物流の課題について、直面する課題、将来変化での課題、物流基盤整備からみた課題、物流の担い手(物流専業者)からみた課題の視点から10項目の課題を抽出し、整理した。
b. 物流システムの高度化の事例研究
 物流システム高度化の事例研究のため、東京、八戸、博多地区の荷主・物流事業者を対象にヒアリング調査を実施し、今後の物流効率化方策を検討するための示唆を得た。
c. 今後の変化に対応した物流効率化方策の検討
 上記調査検討結果を踏まえ、将来の近畿圏の物流需要の量的変化並びに、経済社会、物流環境・ニーズ等の定性的変化に対応した物流の効率化方策について委員会で検討のうえ、とりまとめた。
[3] 近畿圏の貨物流通ビジョンの策定
a. 近畿圏における物流の目標
 近畿圏における物流の将来展望と課題を踏まえ、近畿圏の物流のあるべき姿として「近畿圏ソーシャル・ロジスティクスの構築」を基本目標とした。また、ソーシャル・ロジスティクスを推進するため、[1]国際ゲートウェイ機能の整備、[2]近畿圏の国内広域物流システムの形成、[3]災害に強い物流の構築、[4]地域・環境と調和する物流の構築、[5]将来の変化に対応した物流への改革の5つを基本方向としてそれを達成するための方策について検討し、近畿圏の貨物流通ビジョンを策定した。
b. 近畿圏における物流の将来への提言
 上記で策定した貨物流通ビジョンの実現を図るため、[1]ソーシャル・ロジスティクスセンターの整備、[2]災害に強い物流の構築、[3]物流に対する意識改革の推進と新しい物流ルールづくりの3つを重点方策として検討するとともに、国・自治体、荷主企業及び、物流専業者のそれぞれについて「主体別アクションプログラム」としてとりまとめ、提言した。
[4] 調査のまとめ、報告書の作成
上記の調査結果を委員会で検討のうえ、報告書を作成した。
・ 部数   A4判  200部
・ 配付先  関係官庁、地方公共団体、関係団体等

(2) 移動制約者のための円滑な交通体系整備のあり方に関する調査研究
[1] 調査基本方針の策定
 高齢者・障害者の社会参加を促進するために、発地から目的地に至る移動ニーズを満足する連続性のある公共交通機関等の体系的整備が必要であるとの認識を基本理念として、調査の具体的内容及び調査の前提について検討し、調査の基本方針を策定した。
a. 調査対象モデル地区の設定
 高齢者・障害者等のための都市施設整備として「市民の福祉をまもる条例に規定する都市施設の整備に関する規則」が策定されている神戸市の中で、高齢者・障害者の人口及び人口に占める比率が高く、また、鉄道、バス路線の密度が高く利用者数が多い中央区、兵庫区、長田区をモデル地区と設定した。
b. 調査対象交通機関及び施設
 モデル地区内の発地(自宅等)より目的地までの一連の都市施設並びに、鉄軌道、バス、タクシー等を対象とした。
[2] モデル地区における公共交通の現状把握
 モデル地区における公共交通機関(鉄軌道、バス、タクシー等)の利用状況を把握するとともに、高齢者・障害者の人口、福祉施設等の公共施設の概要についてとりまとめた。
[3] 移動制約者に対する設備等の把握
 モデル地区における主要駅、ターミナルの施設、設備等の現状と実態について、鉄道、バス、タクシー事業者を対象にアンケート調査を実施し、とりまとめた。
[4] 移動制約者の公共交通機関等の利用目的及び移動手段並びに、具体的移動ニーズの把握
 モデル地区における移動制約者の公共交通機関等の利用目的及び移動手段並びに、具体的移動ニーズについて、以下のアンケート、ヒアリング調査により把握し、とりまとめた。
a. 健常者へのヒアリング調査
 健常者における移動上の制約、障害者・高齢者に対する介護意識について調査を実施した。              (調査対象)  350サンプル
b. 高齢者・障害者へのアンケート調査
 高齢者・障害者の移動の状況、移動ニーズ等に関する調査を実施した。
(調査対象)高齢者 150サンプル
     障害者 342サンプル
c. 高齢者・障害者へのヒアリング調査
 高齢者・障害者の内、公共施設等の利用者を対象とした移動時の制約、移動ルート上の問題点についての調査を実施した。
(調査対象)高齢者 100サンプル
     障害者 100サンプル
[5] 移動制約者のための先進的事例の把握
 移動制約者のための公共交通機関の施設、設備等の設置状況における先進事例を把握するため、仙台、札幌、横浜、東京、埼玉地区の鉄道駅、ターミナル施設等について、関係事業者に対してヒアリング調査を実施し、とりまとめた。
[6] 移動制約者のための交通環境整備のあり方の検討及び問題点・課題の抽出
 移動制約者の公共交通機関等の利用目的及び移動手段、具体的移動ニーズと移動阻害要因等に関するアンケート・ヒアリング調査結果、並びに公共交通機関及び、それに付随した施設(駅・ターミナル等)における移動制約者のための設備・施設の設置状況等のアンケート調査結果を基に、「移動の連続性」に主眼を置いた移動時の問題点、課題を抽出した。
[7] 調査のまとめ、中間報告書の作成
 上記(1)〜(6)の調査結果をとりまとめ、委員会で検討のうえ、中間報告書を作成した。
・ 部数   A4判  80部
・ 配付先  関係官庁、地方自治体等

(3) カーフェリー・旅客船の乗用車客・個人客の利用促進に関する調査研究
[1] 輸送機関別旅客輸送の実態把握
a. 旅客輸送
 既存資料により、カーフェリー・旅客船の旅客輸送の実績について、北海道、四国、九州の方面別、月別経年変化について把握するとともに、カーフェリーのリプレース状況についてとりまとめた。
 また、近畿圏のフェリーターミナルの現状についても整理した。
b. 旅客サービス
 カーフェリー・旅客船事業の各種営業割引の現状について把握するとともに、JR、航空等地の輸送機関の営業割引との比較を行った。
[2] ターミナル等の施設、設備、サービス等の利便性調査
a. フェリーターミナルの先進事例調査
 カーフェリー・旅客船で提供されている個人客向けのターミナル施設・整備・サービス・アクセス交通等について、その動向を把握するため、小樽、東京、徳島、高知、新門司、別府、宮崎・鹿児島の各フェリーターミナルにおいて現地ヒアリング調査を実施した。
 また、既存文献で提言されているフェリーターミナルの将来性についても整理し、これらを踏まえてカーフェリー・旅客船ターミナルの施設・設備及びアクセス交通、情報提供などに関する利便性向上方策をとりまとめた。
b. 鉄道、航空、高速バス等地の交通機関との輸送サービスの比較
 大阪と四国、九州間をケーススタディとして、カーフェリーと他の輸送機関とのサービス比較を、運賃、所要時間等から行った。
c. カーフェリー事業者における利用者ニーズヘの対応調査
 カーフェリー事業者を対象にアンケート調査を実施し、船内サービスの向上・多様化、割引商品の提供、PR方法等、ハード・ソフト両面からの利用促進方策の実施状況を把握するとともに、今後の利用促進方策を図っていく上での重要方策についてとりまとめた。
[3] 利用者のニーズの把握
 乗船経験の少ない一般市民600人及び、カーフェリー乗船者2,000人を対象に、2種類のアンケート調査を実施し、乗船者、未乗船者のカーフェリーに対するイメージ、必要とする情報等のニーズを把握するととも、両者の比較により、今後のカーフェリーの利用促進方策を検討するための資料をとりまとめた。
[4] 乗用車客・個人客に対する利用促進方策の検討
 上記のターミナル先進事例調査、カーフェリー事業者、利用者アンケート調査結果から、カーフェリーの利用促進方策を推進するための課題を整理し、これらを踏まえて、[1]カーフェリーのイメージの良さのアピールと悪さの払拭、[2]カーフェリー独自の特徴の活用、[3]船旅の魅力の向上、[4]身近な船情報の発信を4本の柱として、今後のカーフェリーの利用促進方策について検討した。
[5] 個別事例研究
 関西国際空港の開港に伴い、旅客利便性調査のケーススタディとして、海上アクセス旅客の現状を把握した。また、海上アクセス事業者へのヒアリング調査により、海上アクセス交通の問題点を把握するとともに、対応策についてとりまとめた。
[6] 調査のまとめ
 上記の調査、検討結果を踏まえ、利用促進方策の基本的考え方、方向性をとりまとめるとともに、重点施策の具体的な検討を行い、今後の方向性を示した。
[7] 報告書の作成
 上記の調査結果をとりまとめ、委員会で検討のうえ、報告書を作成した。
・ 部数   A4判  200部
・ 配付先  関係官庁、地方公共団体、海上運送事業者等

(4) 神戸港における輸入促進地域の整備に対応した港湾物流事業の高度化に関する調査研究
[1] 港湾物流の概況把握
(a) 我が国経済及び国際経済の動向把握
 既存資料により、主要国及びわが国の経済成長、景気動向並びに、生産拠点の海外シフトの状況等についてとりまとめた。
(b) 我が国の貿易動向の把握
 既存資料により、我が国の貿易動向について、輸出入別、品目別、相手国別に金額、貨物量を把握し、とりまとめた。
(c) FAZ(輸入促進地域)の概要把握
 輸入の促進及び対内投資事業の円滑化に関する臨時措置法(平成4年7月16日施行)の概要及び、FAZ指定地域の施設整備等の状況について、既存資料により把握した。
(d) 神戸港のFAZ指定に伴う施設整備状況の把握
 神戸港六甲アイランドがFAZの指定を受けたのに伴い、整備が計画されている航空貨物基地(K-ACT)、冷蔵倉庫団地、六甲国際流通センターの整備計画等についてヒアリング調査により、把握した。
[2] 港湾物流に対する利用者ニーズ並びに、港湾物流事業者の意向等の把握
 神戸港における輸入促進地域の整備に対応した港湾物流事業の高度化に関するアンケート・ヒアリング調査を実施し、荷主ニーズの変化、神戸港のFAZ指定に対する評価、FAZ指定に伴う対応策、神戸港の施設整備等に対する要望等について把握した。
(調査対象)港運元請・倉庫事業者  150社
港運専業事業者     80社
荷主企業        400社
船社・代理店       60社
[3] 国内主要港における港湾物流の実態調査
 国内主要港の中で、輸入促進地域の整備が進められている港湾(千歳・苫小牧、東京・横浜、名古屋・清水、長崎・北九州、大分、那覇地区)を対象に、FAZの整備に対応した港湾物流事業者の取組状況、施設整備等に対する要望等についてヒアリング調査を実施した。
[4] 港湾物流事業の高度化方策の検討
 港運・倉庫事業者、荷主、船社・代理店へのアンケート・ヒアリング調査結果及び国内主要港湾の実態調査結果を踏まえ、委員会で検討のうえ、神戸港における輸入促進地域の整備に対応した港湾物流事業の高度化の具体的方策についてとりまとめた。
[5] 調査のまとめ、報告書の作成
 上記の調査結果を踏まえ、委員会で検討のうえ、報告書を作成した。
・ 部数   A4判 200部
・ 配付先  関係官庁、地方公共団体、港湾運送事業者等
*本事業は平成7年6月30日完了予定である。
■事業の成果

近畿圏においては、関西国際空港、大阪湾ベイエリア構想等様々なプロジェクトが進展する中で、産業・経済構造は今後大きく変化するものと予想される。
 本調査は、このような状況の中で、豊かさを実感できる地域社会を形成する交通体系の整備、産業・物流構造の変化に対応した貨物流通の効率化方策等、運輸交通事業のあり方について調査研究したもので、その成果は以下のとおりである。
[1] 21世紀における近畿圏の貨物流通ビジョン策定に関する調査研究
 本調査は、2005年を目標年次とした近畿圏の貨物需要の量的把握と、経済社会・物流変化等の定性的把握、並びに災害対策等、将来の物流構築の展望を踏まえ、「近畿圏ソーシャル・ロジスティクスの構築」を目標に貨物流通ビジョンを策定したもので、国、地方自治体、物流専業者の理解の下に、その実現に向けて指針となるものと思料する。
[2] 移動制約者のための円滑な交通体系整備のあり方に関する調査研究
 本調査は、社会の急速な高齢化が進展する中で、移動制約者の「移動の連続性」に主眼を置いた移動時の課題・問題点を抽出し、次年度の移動制約者のための円滑な交通体系整備のあり方を検討するめたの基礎資料をとりまとめた。
[3] カーフェリー・旅客船の乗用車客・個人客の利用促進に関する調査研究
 本調査は、カーフェリー・旅客船の乗用車客・個人客の利用促進方策について、業界全体での取組み、事業者個々の取組み等、具体的な施策を提案したものであり、今後の利用促進を図る上での有機的な資料として活用されるものと思料する。
[4] 神戸港における輸入促進地域の整備に対応した港湾物流事業の高度化に関する調査研究
 本調査は、荷主等のニーズに対応する港湾物流、及び製品輸入等の新規事業に対応する港湾物流等について具体的な対応策をとりまとめたもので、この成果が、震災により新たに整備されることとなった神戸港のFAZの指定に伴う港湾整備に対応した港湾物流事業の高度化に役立つものと思料する。
 以上のように、本事業は、近畿圏における運輸交通事業のあり方について方策策定に寄与するものと思料される。





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