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■事業の内容

(1) 実船試験
 平成5年度において実施した陸上試験の結果に基づき、船舶に適用する場合の最適システムの構築を行い、本システムを実船に搭載し、性能の確認、動特性の確認並びに経時変化の調査を実施した。
供試機関  488GT水産高等学校練習船
4サイクル中速ディーゼル機関
[1] 脱硝性能試験
 陸上で得られた、ある負荷に対する尿素(具体的には、尿素から分解し生成するアンモニア量)/NOxのモル比と脱硝性能の関係を計測した。また、未反応のアンモニア(リークアンモニア)濃度及び周囲条件の変化(気温や湿度)による機関出口のNOx値の変化を計測した。
[2] 脱硝制御試験
 既に平成5年度に陸上で実施した脱硝制御試験のうち最適な、PID制御試験(フィードバック制御)、推算制御試験(開ループ制御)の両方につき、海上において負荷変動を起こして試験し、応答性の評価を行った。
[3] 騒音計測試験
 脱硝反応器の消音効果を船舶に備え付けた状態で、停泊中及び海上航海中(約50、75、100%の負荷)に、騒音を計測した。
[4] 振動計測試験(脱硝反応器周辺)
 脱硝反応器の取付付近に加速度計を取付け、ハンマーで打撃して固有振動数を計測した。また、海上航行中に、約50、75、100%の負荷にて脱硝反応器及び船体の振動を計測した。
[5] 安全装置の確認試験
 脱硝反応器内部に設置されている排ガスの緊急バイパス回路を開け、そこを問題なく排ガスが流れ船舶が安全に航行が可能なことを確認した。
[6] 還元剤溶解装置の操作性確認試験
 船上で500lのプラスチック製タンクを用い、撹拌器や加熱器を取付けた簡便な装置を試作し、尿素の溶解、船内タンクへの輸送の操作性、作業性の確認を行った。

(2) 追跡試験
 本船の実航海に合わせ、本装置へ継続的に排ガスを流して使用するにあたり、経時的な性能を把握すると同時にシステムとしての信頼性の確認を行った。また、絶硝反応器の圧損計測及びスートブロー装置の確認を行った。さらに、試験終了後に触媒の汚損や損耗状況を調査し耐久性の評価を行った。
 なお、試験終了後、脱硝装置を船から撤去する予定を変更し、脱硝装置の経時的性能変化や信頼性・耐久性を把握するために、実船試験を継続して実施する必要性から、実船試験を継続して実施するために必要な脱硝システムの一部改造及び機器類のオーバーホールを行った。
■事業の成果

小型船舶主機関用の4サイクルディーゼル機関を対象として、これの排ガス中のNOxを低減するための技術的手法として、選択接触還元法(SCR法)を用いた内向船用小型排ガス脱硝装置(499G/T級船舶の煙突内に収納可能な脱硝装置)を製作し、陸上での試験を平成5年度に実施した。本年度はその試験結果を基に、船舶に適合するシステムを選び、海上試験を実施するため実船に搭載して、性能の確認、動特性の確認及び経時性能変化の調査を行った。その結果、舶用排ガス脱硝装置の初期性能及び数千時間排ガス通過後の性能は満足できるものであり、75%負荷相当時であるが、当初の目標(脱硝率80%以上、リークNH310ppm以下)を達成するなど、陸上試験時と比較しても同性能を示した。
 これにより、環境汚染防止に寄与するとともに、造船技術の振興及び我が国造船業の発展に大いに貢献するものと思料される。





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