(1) 本事業の成果 本年度に得られた主な成果は次のとおり。 a. 燃料電池が船の推進用動力源として使われるためには、現在の主流であるディーゼル機関の諸性能と同等かそれを上回ることが必要である。そこで推進用動力源としての燃料電池の可能性を見極めるために、各種燃料電池の特徴や開発状況、舶用動力源としての必要条件などについて調査検討を行い、舶用に適する燃料電池の形式を選定した。 b. 燃料電池推進船として比較的実現性の高い1000kW以下の小型内航船を想定て燃料電池本体や燃料供給系・空気供給系・冷却系などを含む発電システムなどについて概念設計を行い、舶用燃料電池推進システムの基本仕様を作成し、性能向上のための課題をまとめた。 c. 現地開発が進められている燃料電池の開発レベル、起動・停止性能、負荷変動特性、重量寸法、保守性、開発課題などについて比較検討した結果、舶用に適した燃料電池の形式として個体高分子型燃料電池(PEFC)を選定した。PEFCまだ実績は少ないが、電池反応部分の構造がシンプルで電解質の管理が不要であること、反応温度が低く材料の選択の幅が広いこと、出力密度が高くコンパクトになること、コストダウンの可能性が大きく将来性が高い。 d. 燃料電池で推進用電動機を駆動する場合は、急激な負荷の増加に対応させるために、負荷変動の予測および改質器の負荷変動対策、蓄電池の搭載などが必要である。また、舶用発電機は複数台設備する必要があり、負荷に応じて単独および並列運転が可能でなければならない。 e. PEFC型燃料電池発電システムの重量・容積は、水素/酸素供給システムを1とすると、メタノール/空気システムでは重量で約2.2倍、容積で約5倍の増加になり、燃料供給系の軽量化およびコンパクト化を図る必要がなる。 f. 概念設計の結果、燃料電池のシステム効率は、メタノール/空気(常圧)供給システムで約37.5%、水素/酸素(4.5ata)供給システムで約54%であった。 g. 燃料電池は排気ガスがクリーンで環境に優しく、振動・騒音が少なく、メンテナンスが容易で、低負荷における効率低下が少なく、船内配置上の自由度が高いなどの特長があるが、今回概念設計を行ったPEFC型100kW燃料電池のシステム効率は、約37.5(メタノール/空気)〜54%(H2/O2)で、小型ディーゼル機関(100〜1000kW)の熱効率の35%〜45%をやや上回る程度であり、今後、効率UPを図る必要がある。