日本財団 図書館


■事業の内容

[1] 高速船用高速ディーゼル主機関の整備等に関する調査研究
 近年、時間価値の増大による強い社会的要請から、航海速力が30〜40ノットに達するような高速船が増加傾向にある。
 これら高速船の主機関は、最新のハイテク技術を活用して小型、軽量、高出力、高回転化が図られ、国際的な高性能な機関ではあるが、機関各部は大きな熱的負荷や機械的負荷が加わって、従来のディーゼル機関に較べて、過酷な状況下で使用されている。
 また、航行中は近代的なメカトロ技術を活用して、操舵室に設置されている監視装置等により常時監視されながら、リモートコントロール装置により運転制御されている。
 このようなことから、高速船用高速ディーゼル主機関は、その構成部品の材質、製作技術、品質管理等をはじめ、運航中の点検維持管理や保守整備技術についても、従来型ディーゼル機関よりはるかに高度なものが要求される。
 従って、高速船用高速ディーゼル主機関については安全性の確保の見地から、従来の主機関とは異なった観点に立って検査を行う必要があると思料される。
a. 高速旅客船「ソレイユ」主機関整備状況現地調査
 平成6年9月28日、(株)サノヤス・ヒシノ明昌大阪工場において、徳島高速船(株)「ソレイユ」の主機関整備状況調査を実施した。
b. 「アクアジェット3」主機関整備状況現地調査
 平成6年11月9、10日、(株)サノヤス・ヒシノ明昌大阪工場及び(株)大阪補機製作所鶴町工場において実施した共同汽船(株)「アクアジェット3」の主機関の整備状況調査を実施した。
c. 「おおとり」主機関整備状況現地調査
 平成6年11月22日、富永物産(株)九州事業所において、長崎県漁業取締船「おおとり」の主機関整備状況調査を実施した。
d. 高速船主機関の運転・日常点検整備管理の乗船調査
 主機関の運転状況及び当日の整備状況の調査結果の概要は以下に示すとおりである。
イ. 主機関の運転状況
 12月8日及び12月9日の両日、本船に乗船し、主機関の運転状況の調査を行った。
 主機関の負荷率は夫々89%、94%程度(回転数べース)であった。なお、本船の推進装置はウォータージェットであるため、主機関の回転数一定の航海にもかかわらず、船速は風・波等の影響を受け、かなり変化が見られたが、主機関の吸収馬力はほぼ一定であるように思われた。また、旋回性能についてはほぼその場旋回が可能で、狭隘な港湾での操船性に有効であるように思われた。
ロ. 運転終了後の整備状況
 毎日の運転終了後は、機関長の指示(日常整備マニアル、その他)の整備オーダーに基づいて洲本港における独立整備チームの支援のもとに各船(6隻)の整備を行っている。
 整備チームは独立した4名で構成されており、そのうち3名が毎日勤務し、各船の整備に当り、1名は交替で休暇することとなっている。
 整備チームは、各船の入港前に整備作業を準備しておき、着岸後、整備に取りかかっている。
 全般の整備には、日によって変化はあるが、20時〜03時までかかるようである。
e. 高速船主機関についてアンケートによる調査
 本調査は、高速旅客船におけるアンケートによる運航中の主機関についての運転性能、年間の運転時間、日常および定期的に行う点検・整備内容等、主機関の運転状況並びに点検・整備の実態調査を行った。
[2] 救命設備の経年劣化に関する調査研究
 救命設備の経年劣化に関する調査研究の一環として、昨年度の救命浮環に続き、本年度は、救命胴衣及び作業用救命衣、ならびにこれらに装着される再帰反射材の経年劣化を調査研究の対象とした。
 救命胴衣は、船舶の海難事故発生時に乗船者全員が着用する唯一の法的個人用救命設備で、海上脱出者の意識の有無に関係なく、24時間以上、呼吸可能な姿勢で海上に浮遊させる性能を保持しなければならない。一般に、救命胴衣は、室内等の良環境の場所に保管され、その使用頻度は、操練の場合のみで、少なく、製品の性能保持の面からみると恵まれた条件下にあるといえる。しかし、条約等規則の変遷や、材料の進歩に応じて、救命胴衣の浮体材料は、カポックから、ポリエチレン等の化学発泡材料に、外装布は、木綿繊維から化学合成繊維に、人体固縛方式は木綿紐から化学繊維紐及びファスナーへと変化してきた。従って、救命胴衣の各部使用材料の違いによる経年劣化の影響を調査することは、製品の品質・信頼性向上に有効な資料を提供するものと考える。
 作業用救命衣は、海中転落の危険がある船上暴露部での作業時に常時着用されるもので、その使用頻度は高く、更に、日射、海水飛沫、摩耗等による影響が大きく、胴衣に比べて性能・材料の劣化は著しくなるものと予想される。そのため、使用頻度を加味して作業用救命衣の経年劣化の状況を調査する必要がある。
 再帰反射材は、海上浮遊者の夜間捜索を容易にするため、救命胴衣や作業用救命衣に貼り付けられるものである。昨年度の救命浮環の経年劣化調査時浮環に貼付けされた再帰反射材の経年劣化が指摘されたため、本年度の調査研究項目に追加することとした。
a. 供試品
 船舶等に搭載されていた救命胴衣(固型式)及び作業用救命衣(固型式)を回収して供試品とする。
 救命胴衣(固型式)については、昭和61年のSOLAS改正以前の型式とし、2型式とする。供試品の数は、約7年、約10年、約13年経過後のもので、各々旅客船、貨物船、漁船に搭載されていたものを目標として、各型式9個の合計18個とする。
 作業用救命衣(固型式)については、主に小型船舶用救命胴衣の要件に適合するものを対象とし、4型式とする。供試品の数は、各々貨物船、漁船、ヨット及び港湾作業船に使用されたもので、経年には特にこだわらず損傷の激しいものを各型式12個の合計48個とする。
 また、供試品回収の際、アンケートを実施し、その供試品の保管状況及び使用状況を調査する。
b. 試験項目
イ. 外観検査
ロ. 荷重試験(その1)
ハ. 荷重試験(その2)
ニ. 浮力試験
ホ. 覆布、テープ等の引張強度試験
へ. 反射テープの試験
■事業の成果

認定物件及び型式承認物件は、国の安全検査の要件に適合することはもとより、需要構造や使用環境の変化、または要求品質の高度化に対応していく必要があり、加えて国際競争力においても優れたものでなければならない。本事業の実施により、上記の観点から製品の品質の改善及び生産の合理化が促進され、もって製品の品質の向上が図られるものと思料される。





日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION