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■事業の内容

(1) 田楽稚児装束他の複製
 国の重要無形民俗文化財春日若宮おん祭に使用される、田楽「稚児装束」皆具2組と田楽楽器「小鼓」の調製
[1] 製作物『田楽 稚児装束 皆具2組』 品名 仕様 数
a. 綾藺笠 藺草畳地皮覆輪、金箔頭 2蓋
b. 水干 赤緑正絹緞子地、手組袖露、首紙紐付 2具
c. 差貫 紫羽二重地、平絹裏付 2具
d. 沓 黒牛皮造、返し襟付 2足
e. 高足 檜地、黒漆塗胡粉彩色仕上げ 2本
[2] 製作物『田楽楽器 小鼓』 品名 仕様 数
a. 小鼓 鼓面馬皮、胴黒漆塗に蒔絵、調べ本麻 1鼓
(2) 春日文化の普及啓蒙活動
[1] 春日古典芸能フェスティバル
a. 開催日時  11月26日(土)午後6時30分〜午後9時
b. 会場    札幌市 札幌市民会館大ホール <観客数> 1,200名
c. 出演    (a) 講演  奈良大学名誉教授
(b) 公演  雅楽 (社)南都楽所    24名
和舞 春日古楽保存会   10名
松前神楽 後志松前神楽会 10名
d. 内容    「マルチイメージスライドシステムの整備」事業により製作したスライドを上映した後、奈良大学名誉教授より春日古典芸能について解説が行われた。次いで春日古楽保存会による「和舞」や(社)南都楽所による「舞楽」が解説を交えながら演じられた。又地元後志地区の後志松前神楽会による北海道指定無形文化財・松前神楽「榊舞」「神遊舞」他2曲も演じられ、盛況裡に終演した。
(3) 古儀の復興に伴う御神楽装束の調製
 御神楽は古代より伝承された日本神楽史上誠に重要な芸能で、春日大社での再興を図るため、「御神楽装束 正服」を調製する。
[1] 製作物『御神楽装束 正服 10組』 品名 仕様 数
a. 袍 正絹緑綾織、裏平絹 10領
b. 単 正絹両練固地菱綾紋 10領
c. 差貫 正絹浅葱羽二重、裏平絹 10具
d. 冠 一貫張黒漆塗り、黒紗着せ 10頭
e. 浅沓 樹脂地黒漆塗り 10足
f. 檜扇 白木檜 10握
g. 笏 檪 10本
h. 帖紙 和紙 10折

■事業の成果

(1) 田楽稚児装束他の複製
 国の重要無形民俗文化財に指定されている「春日若宮おん祭」の中心的古典芸能は、田楽でありその古態を示す芸能は誠に貴重なものである。しかしながらこの貴重な芸能である田楽も、古くから使われている装束の傷みが激しく、特に子供用の装束については装束の消滅や付属道具一式の損傷が甚だしく、後継者の養成の為にも困難な状況にある。
 今回の複製品製作事業により、これらの貴重な装束類が後世に受け継がれ、貴重な文化財の復興、保存、並びに伝統的な製作技術の伝承向上にも大きく寄与したものと思われる。
(2) 春日文化の普及啓蒙活動
 春日大社には、雅楽をはじめ田楽、細男、猿楽、和舞、社伝神楽など日本の数ある芸能の中でも貴重な古典芸能が千数百年を経た今も古来そのままに伝えられている。
 このような古典芸能を中心に、日本文化の中に現在も脈々と息づく春日文化について、今年度は北海道札幌市において、「春日古典芸能フェスティバル北海道」として講話と公演(雅楽・和舞)を行うことができた。当日は、熱心な入場者により盛況を呈し、伝統文化に親しみ、これを正しく理解する機会として貢献することができた。特に、大陸からの渡来芸能である雅楽に地元での大きな反響があり、テレビ局、文化団体の熱心な協力を得て、浸透力のある広報活動を行うことができ、大きな成果を上げることができた。
 また、北海道指定無形文化財保存団体である後志松前神楽会との交歓をはかることにより、貴重な伝統芸能の保存顕彰にも寄与したものと思われる。
(3) 古儀の復興に伴う御神楽装束の調製
 御神楽は古代より伝承された神楽を、平安朝にいたって宮廷にて集大成されたものであり、明治初年まで厳重な秘伝として頑なに宮中において伝承されてきたものである。春日大社はこの貴重な御神楽が宮廷より派遣奉納された数少ない神社である。その歴史は、保安3年(1122)3月14日を始まりとするが、室町時代にいたって朝廷のご衰微と共に御神楽のご差遣も中絶のやむなきに至った。
 今回の御神楽装束の複製により、この日本神楽史上誠に重要なる位置を占める御神楽が春日大杜において再興され、日本古来の伝統文化の復興、保存、顕彰に寄与したものと思われる。





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