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■事業の内容

本開発は、開発の評価試験用として、[1]直流式サイリスタモータ、[2]交流式サイリスタモータの2つの制御方式による、各々の電動機並びに制御盤を設計・製作し、両機を直結して一方を電動機、他方を制動機として種々の試験を行い、実用化の確認を行った。

(1) 開発品の要求性能(直流式・交流式共)
[1] 出力   100KW
[2] 電圧   440V
[3] 回転数  0〜11Orpm
[4] 極数   10P

(2) 試験
下記項目で試験を実施した。
[1] 単体特性試験
 直流式サイリスタモータ(凸極界磁形)及び交流式サイリスタモータ(円筒界磁形)について、捲線抵抗、定数、時定数、無負荷飽和特性、短絡特性を計測し、いずれも計画値どおりである事を確認した。
[2] 負荷変動特性試験
 直流式サイリスタモータと交流式サイリスタモータを制御装置と組み合わせ、片方を駆動機もう片方を負荷機とし、またそれぞれを入れ替えて試験を行った特性は、サイリスタモータの回転数を一定にして25、50、75、100%の負荷をかけ各部の特性を取った。
 直流式サイリヌタモータは、β(制御角)固定にて行ったので電動機力率は負荷の増加によるu(重り角)/2のみが増加しているが略一定している。
 交流式サイリスタモータは、β(制御角)が電動機の内部相差角によって変動するようにしており、内部相差角は負荷によって変動するため、電動機力率は負荷の増加に伴い良くなっている。
 いずれも計画値どおりの良好な結果を得られた。
 尚、交流式サイリスタモータは、電圧が一定となるように界磁電流を制御したが余裕角一定となるように制御すれば直流式サイリスタモータと同じような電動機力率となる事も確認できた。
[3] 回転変動特性試験
 試験方法は、負荷変動特性試験と同様にして、特性はサイリスタモータに規定の負荷をかけて回転数を110、100、75、50、25%と変化させた場合の各部の特性を測定し計画値どおりの良好な結果を得られた。また、テストスタンドの操作レバーによる、正転加速-正転減速-逆転加速-逆転減速の信号による動作確認を行い、いずれもスムーズに行える事を確認した。
[4] 温度上昇、振動、騒音等の測定試験
 試験方法は、負荷変動特性試験と同様にして、特性はサイリスタモータに定格負荷をかけ温度上昇、振動、騒音等の測定を行った。結果は、いずれも計画値どおりで良好な結果であった。
[5] 軸トルクリップルの計測
 サイリスタモータと制御装置を組み合わせて行った。
 また、軸のトルクリップルの計測を行い、6パルス時より12パルス時の方がトルクリップルが改善された事を確認した。
[6] 保護回路動作試験
 保護回路一覧により保護が的確に動作する事を確認した。
[7] 波形観測及び制御角測定
 サイリスタモータに定格負荷をかけ制御回路の各部の波形をオシログラフにて観測し制御角の測定を行った。
いずれも計画値どおりの良好な結果を得られた。
[8] 総合効率算定
 負荷試験結果よりサイリスタモータと制御盤の効率算定を行い、総合効率算定を行った。
 制御盤の効率にはサイリスタモータの強制通風ファン及び励磁分を含んでおり低めになっているが、いずれも計画値どおりであり良好な結果である。
[9] 高調波吸収トランスの効果の確認
 制御パネルの電源側へ、△-Y-△のトランスを挿入して、2次側電圧位相を3000ずらし、制御パネルから発生する低次の奇数次の高調波抑圧効果及び、歪率の改善効果について確認し、特に5次、7次について効果が高く、歪率も良くなっていることが明らかである。
[10] 専用調相機による力率改善の確認
 専用調相機を電源と制御パネル間に並列に挿入し、低負荷時及び低速時の電源発電機側の力率が改善されたことを確認した。当然、電圧波形は、電源側リアクタンスが下がることになり、重り角が減少し歪率が良くなっている。

(3) 委員会の開催
電気推進電動機の開発委員会   2回
■事業の成果

本事業の試験結果から、直流式サイリスタモータ及び交流式サイリスタモータの両方とも、電気推進電動機として、予定通りの優れた性能及び制御性を有しており、それぞれの特長を生かして、実用化しうるものであることが、確認実証された。
[1] 直流式サイリスタモータ
 低速回転域で断続始動をすることにより、始動トルクが低くなるので、低速回転域での負荷側トルクの小さいもの、軸発電機と共用するものに適し、主回路構成が簡単であることから、小型で安価なシステムに向いていると考えられる。
[2] 交流式サイリスタモータ
 全域にわたり一定のトルクを出せるので、電気推進専用として使用される場合に適し、大型のシステムに向いていると考えられる。
 いずれのシステムにおいても、操作性・操縦性については、ディーゼルエンジンの様な補機類の立ち上げ等の作業が殆ど省略され、直流電動機と同等の操作性・操縦性の良さが得られたので、船舶の高度化・近代化に寄与するものと思料される。





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