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■事業の内容

(1) 流出油拡散漂流シミュレーション・プログラムの開発に関する調査研究
[1] 紀伊水道海域のシミュレーション・プログラムの作成
 平成3年度に設計した流出油拡散漂流予測モデル(5つのサブモデルから構成)をコンピューターにプログラミングして、紀伊水道海域のシミュレーション・プログラムについて下記の事項を作成した。
・ プログラムの移植
(流況サブモデル、風の分布予測サブモデル及び風圧流予測サブモデル)
・ 油の移植・拡散サブモデルの構築
・ 風化予測サブモデルの構築
・ 入出力ルーチンの作成
・ プログラムの検証
[2] ハードウエアの整備
 [1]項のシミュレーション・プログラム開発に必要なハードウェアを整備した。
・ EWS本体          1台  ・ レーザービームプリンター  1台
・ キーボード        1台  ・ プリンターインターフェース 1台
・ カラーディスプレー    1台  ・ 光磁気ディスクユニット   1台
・ カラービットマップボード 1台  ・ 光磁気ディスク       1枚
[3] 2次元風洞水槽の製作
 原油の風化過程を調査するための2次元風洞水槽を設計・製作して下記の事項を調査した。
・ 2次元風洞水槽の流体特性調査
・ 原油の風化予備実験
(2) 流出油防除措置に関する調査研究
[1] 可搬式船舶搭載型外洋向油回収装置の調査研究
 外洋の気象・海象条件下で、かつ高粘度油でも充分な機能を発揮する油回収装置を製作して、その油回収性能を調査した。
供試体:油回収原理模型(傾斜板式)
供試油 :20℃100cSt(B重油相当潤滑油)
20℃  1,500cSt(C重油相当潤滑油)
25℃ 10,000cSt(超高粘度油)
試験条件:潮流(0.8m/s〜1.2m/s)
:潮流+波浪(波長10m、波高0.15m)
[2] オイルフェンス及び放水ノズルの流出油流動制御方法に関する調査研究
a. オイルフェンスの流出油流動制御試験
 B型オイルフェンスを用いて開口比及び誘導角度を種々組み合せ、平水中及び波浪中において流動制御を調査した。
供試体 :B型オイルフェンス(20m)
供試油 :20℃ 100cSt(B重油相当潤滑油)
試験条件:曳航速度(流動制御不能となる速度まで)
波長10m、波高0m、0.15m及び0.3m 3種
b. 放水ノズルの流出油流動制御試験
 各種船舶が装備している消火用及び雑用水ポンプの流出油流動制御に利用する方法について調査した。
放水圧力(kgf/cm):5.0、7.2   2種
誘導角度(deg.) :0、20、40  3種
ノズル本数   :3、4、7
ノズル口径(mm) :13、16、20
供試油     :20℃ 100cSt(B重油相当潤滑油)
試験条件    :放水ノズルの移動速度
(0.6m/s〜流動制御不能速度)
波長10m、波高0m、0.15及び0.3m  3種
 上記a、bの試験は角水槽を使用して実施した。
[3] 乾舷付漁網の調査研究
 大量流出油の緊急時に漁網を使用して油拡散防止あるいは集油、滑滞油に利用する方法について調査した。
漁網  :いわし漁に使用する旋網漁網                1種
供試油 :漂流油の高粘度化を想定して5,000cp〜26,700cpのグリース  3種
試験条件:潮流(0.2m/s〜漏油する速度)
潮流+波浪(波長10m、波高0.3m)
潮流+波浪+風(8m/s)
 上記の試験は回流水槽を使用して実施した。
[4] 海外調査
 欧米諸国の政府機関、大学、研究機関、石油業者及び油防除資機材メーカー等が計画あるいは実施している油汚染に関する研究・開発の動向について調査した。
・ 期間 :平成4年5月30日〜6月14日
・ 調査員:事務局 1名
・ 出張先:a. アメリカ−国際油汚染研究開発フォーラム(ワシントン)
b. アメリカ−第2回日米油防除専門家会議
(USCGと海上保安庁との会議・フォートテックス)
c. カナダ −AMOP TECHNICAL SEMINAR−1992
(エドモントン)
■事業の成果

(1) 流出油拡散漂流シミュレーション・プログラムの開発に関する調査研究について
[1] 我が国周辺海域の主要なタンカー・ルートに位置する紀伊水道海域について流況予測、風の分布予測及び風圧流予測の各サブモデルを編集し、これらを合成して流動場を求めた。この流動場に油の移流拡散予測サブモデル及び油の風化サブモデルを加えて流出油の拡散・漂流を予測することのできるシミュレーション・プログラムを開発した。
[2] 開発したシミュレーション・プログラムには流出した油の経時変化の物性値を表示することができる。
[3] 計算された漂流油の位置と実際に観測された漂流油の位置にずれが生じた場合、逐次漂流油の位置の修正をして予測することができる。
[4] 原油が海面に流出した時の環境条件をシミュレートできる風洞水槽を設計・製作し、予備調査によりその流体力学的基本特性が把握できる計測・解析方法を明らかにした。また、一例として中東産原油について風化予備実験を行い、物性の計測方法を検討する上で必要なデータが得られた。
(2) 流出油防除措置に関する調査研究について
[1] 昨年度実施した国内、国外の文献調査の結果、可搬式船舶搭載型外洋向油回収装置は的確なものを得るまでに至っていないが、多くのヒントを得た。
 これらのヒントから外洋でも機能を有し、且つ、高粘度油も回収できる油回収原理模型を製作して水槽試験を実施した。その結果、低粘度油及び高粘度油でも回収率の高い成果が得られた。
[2] 放水ノズル及びオイルフェンスの流出油流動制御方法については、予想以上に有効性のあることが示され実用化に向けて大きな指針を得た。これらの実用化のため、引き続き高粘度油についても系統的実験を続けて有効な資料作成を行うものとする。
[3] 漁網による滞油性能については、従来型のC型及びD型オイルフェンスの滞油性能と同等あるいはそれを上回る値を示し、油防除資機材として利用することができる成果を得た。今後、実用化に向けて更に調査研究を行うものとする。
[4] 海外調査により、諸外国の調査研究及び研究開発の動向を把握することができた。これらにより、今後の海洋油汚染の研究開発についての指針を得た。
 この結果、これら事業を実施したことにより、流出油防除措置体制整備、併せてこれに必要な資機材の開発に資するものと思われる。





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