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■事業の内容

(1) 調査の方法
 本事業は2年計画とし、本年度は基本的事項の調査研究を行い、2年目は初年度の調査研究結果を基に、最大可航船舶等の調査研究等、狭水道における航行安全対策策定手法について調査研究を行うもので、本年度は下記のとおり実施した。
[1] 委員会による検討
 学識経験者、海事関係者及び関係官庁等で構成する「狭水道航行安全対策開発調査研究委員会」及び「狭水道航行安全対策モデルケース作業部会」を設けて、それぞれ下記の事項を検討した。
a. 狭水道航行安全対策開発調査研究委員会
(a) 第1回委員会を開催し、次の事項を検討した。
イ. 事業計画について
ロ. モデル狭水道の選定について
ハ. 作業部会長の指名について
ニ. その他
(b) 第2回委員会を開催し、次の事項を検討した。
イ. 研究結果のとりまとめ
ロ. その他
b. 狭水道航行安全対策モデルケース作業部会
(a) 第1回作業部会を開催し、次の事項を検討した。
イ. 事業実施計画の細目
ロ. 調査方法の細目
ハ. その他
(b) 第2回作業部会を開催し、次の事項を検討した。
イ. アンケート調査票の検討
ロ. 音戸瀬戸の交通環境の現況
ハ. 音戸瀬戸の主要海難事例
ニ. 音戸瀬戸における船舶交通の実態(平成4年8月観測結果)
ホ. 音戸瀬戸における航行安全対策の検討
(c) 第3回作業部会を開催し、次の事項を検討した。
イ. レーダーによる航行船舶実態調査結果
ロ. 定期旅客船航路の状況
ハ. 音戸瀬戸通航船舶の状況をビデオ映写
ニ. 音戸瀬戸の主要海難事例
ホ. 音戸瀬戸における航行安全対策
へ. その他
(d) 第4回作業部会を開催し、次の事項を検討した。
イ. 研究結果のとりまとめ
ロ. その他
[2] アンケート調査
 モデル狭水道(音戸瀬戸)における船舶交通の実態について、下記のとおり実施した。
a. アンケート調査の対象者:音戸瀬戸の通航実績がある船橋における操船者
b. 配布数:700通
c. 回答数:303通
[3] 委託研究
 上記アンケート調査結果の集計及び解析業務並びに、航行船舶実態調査及び観測データ整理調査業務を委託して実施した。
(2) 調査項目及び内容
 本年度実施した調査研究の項目及び内容は次のとおりである。
[1] モデル狭水道の選定
 本調査研究の対象である中小型内航船の交通の要衝となっている狭水道は、瀬戸内海に多く存在するが、最狭可航幅、見通し、潮流、通航隻数等の交通環境及び最近の重要海難の発生を総合的に考慮し、モデル狭水道として音戸瀬戸を選定した。
[2] モデル狭水道の交通環境の現況
a. 地形……『別区参照』
b. 気象
 音戸瀬戸(呉市)の気候は、年間を通じて気温格差が少なく、平均15.5度(5か年平均)で、日照時間が多い。また、風については、平均2.0m/s(5か年平均)で、年間を通じて穏やかな日が多く、降水量も年間1,385mm(5か年平均)と少なく、典型的な瀬戸内の多照寡雨型気象である。
c. 潮流
 音戸瀬戸の潮流は一種の変態を示している。瀬戸の最狭部では、大潮期には高潮1.5〜2時間後頃に北流が開始する。それから平均1.2時間後に第1回目の北流の最強に達する。その後次第に流速を減じ、北流開始から平均3時間後頃に北流の中間憩流(時によっては南流することもある)に達し、次に再び北流の流速を増し、北流開始4.5時間後頃に第2回目とも4ノットに達することがあるが、小潮期には2ノット程度である。その後次第に流速を減じ、北流開始約6時間後(低潮1.5〜2時間後頃)に南流が開始される。南流の潮型も流速も北流と同じである。ただし。小潮期には潮型がきわめて複雑になる。
d. 航行援助施設
 音戸瀬戸には音戸灯台、音戸瀬戸北口灯浮標、音戸瀬戸南口灯浮標、音戸大橋橋梁灯の航路標識が設置されている。
[3] モデル狭水道における船舶交通の実態
a. 最狭部の通航船舶出会い状況
 音戸瀬戸は東方から広島湾に通じる最短距離にある狭水道であり、多数の中小型船が通航している。その最狭部における通航船舶の出会い状況は、旅客船、貨物船、タンカー、台船を曳航した曳船等の極限状態による危険な見会い関係が発生している。
b. 通航船舶の状況
 本年8月に実施した通航船舶実態調査結果では、1日の通航隻数は、貨物船44隻、タンカー20隻、旅客船等75隻、漁船211隻、曳航船39隻、その他の船舶109隻であり合計498隻であった。また、10月の通航船舶実態調査では、1日の通航隻数は、船種別による多少のばらつきはあるが496隻であった。
c. 漁船の操業状況
 8月の実態調査期間中の操業漁船は遊漁船が1隻のみであった。また、10月の実態調査期間中の操業漁船は2日間の延べ隻数で16隻であり、操業方法は縄、網、一本釣りであった。
d. 定期旅客航路の状況
 音戸瀬戸を通航する定期旅客船の船社は3船社があり、旅客フェリー、水中翼船及び高速船を広島〜松山航路、宮島〜尾道航路及び広島〜今治航路に就航している。

『別図』

運航時刻表より見ると音戸瀬戸を通航する旅客船の1日の通航隻数は、北航・南航合わせて、旅客フェリー12隻、水中翼船16隻及び高速船6隻である。通航時間帯06時から22時までの1時間当たりの通航隻数は約4隻となり、約15分に1隻の割合で定期旅客船が音戸瀬戸を通航している。
e. 海難の発生状況
(a) 音戸瀬戸北口灯浮標及び南口灯浮標は昭和50年に設置された。灯浮標設置前後の海難の発生状況について見ると、設置前の発生隻数は年平均3.0であったのが、設置後は年平均1.8に減少している。
(b) 最近、音戸瀬戸を通航している最大船型は699トンフエリーであるが、昭和55年当時には、977トンのLPGタンカーが通航しており、衝突事故を起こしている。
(c) 音戸大橋直下の南側に海難の発生が集中している。
f. アンケート調整
 航行安全対策策定の基礎資料を得るため、音戸瀬戸の航行実績のある船橋における操船者を対象にアンケート調査を実施した。
 調査の結果、航行安全に対する生の声を集計、解析できた。
(3) 調査結果のまとめ
 本年度の調査研究結果を取り纒めた。
[1] 部数 :50部(コピー製本)
[2] 配布先:委員、関係官庁、その他
(4) 委員会の開催
[1] 狭水道航行安全対策開発調査研究委員会  2回
[2] 狭水道航行安全対策モデルケース作業部会 4回
■事業の成果

本年度の事業は、我が国の多くの狭水道の中からモデル狭水道として、音戸瀬戸を選定し、現地調査により、地形、見通し、最狭可航幅等の交通環境を実感でき、アンケート調査により、操船者の生の声を集計、解析できた。また、通航船舶実態調査により、船舶の通航状況が詳細に観測でき、航行安全対策策定のための基礎資料を得ることができたものと思われる。





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