■事業の内容
(1) 海洋開発関連の国際会議・展示会への出席 [1] OTC'92への出席 a. 派遣人員 1名 b. OTC'92調査 (a) 期間 1992年5月3日(日)〜17日(日) (b) 場所 ヒューストン(アストロホール) (c) 共催 米国石油地質学協会を含む米国11の海洋開発関連学・協会 (d) 会議・展示会の参加者数 約35,000名 (e) 論文発表会 48のセッション,231作の論文が発表された。 (f) 展示会 1,257団体から展示物が出品された。 c. 研究機関等の調査・視察 (a) ハワイ自然エネルギー研究所 自然エネルギー利用技術としてバイオマス、地熱、水素、太陽エネルギー、風力及び海洋温度差発電等について研究を行っている。 (b) ハワイ大学海洋・地球科学技術学部 観測鉛及び有人潜水船等を運用して、海洋学、水産学、海洋地質学等の研究を行っている。 (c) テキサスA&M大学 海洋開発に関する研究を行っており、WOCE等に関する研究も行っている。また、国際海洋掘削計画の事務局もある。さらに、テキサス-ルイジアナ大陸棚海域における海洋観測計画(LATEX)を実施している。 (d) マサチューセッツ工科大学 流体力学、構造力学、材料及び溶接など海洋工学に関する全般的な基礎的研究を行っている。また、海洋音響トモグラフィー等の海洋観測機器の開発も行っている。 (e) ボストン科学博物館 展示館、プラネタリウム及び映画館から構成されており、数学、物理学、地球物理・地質、宇宙、生物学、医学及び技術(航空宇宙、自動車、エネルギー利用等)等の科学に関する理解を深めさせる展示がなされている。 (f) ロードアイランド大学 海洋学全般にわたって教育・研究が行われており、メソコズム水槽、リモートセンシング施設等がある。 (g) ウッズホール海洋研究所 4,000m級有人深海調査船アルビン号他海洋調査船を運用して海洋に係わる広範囲な研究・調査を実施している。海洋科学技術センターと研究協力協定を締結し広範囲に研究協力を行っている。 (h) TOGA-COARE事務所 TOGA-COARE(赤道太平洋における海洋・大気結合作用に関する研究)の事務所であり、TOGAにおける西部赤道太平洋における海洋大気間の熱輸送作用の解明を目的とした国際共同研究を行っている。 (i) カナダ海洋研究所 海洋物理、海洋化学、海洋生物等の基礎科学分野と、これらを支える技術として海洋工学を研究分野としている。また、カナダ水路部等の他機関と連携して、海洋地質、地球物理及び海図の作成等も行っている。 [2] ROV'92への出席 a. 派遣人員 1名 b. ROV'92調査 (a) 期間 1992年5月31日(日)〜6月14日(日) (b) 場所 サンディエゴ(コンベンションセンター) (c) 共催 ROV Commitee及びMTS c. 研究機関等の調査・視察 (a) イーストポートインターナショナル社 米海軍と密接な関係を有しており、ROVの設計・製造ならびに回収調査作業等の運用まではばひろいオーシャンエンジニアリングを手がけている。今回は、同社の一般紹介をうけると共に最近の回収作業の実例等の情報収集を行った。 (b) ジェトロ・ニューヨーク 米国及び日本の海洋機器開発状況・動向について情報交換及び意見交換を行った。 (d) ウッズホール海洋研究所 本年10月、海洋科学技術センターと共催予定の「潜水船の救難に関するシンポジウム」について打合せを行うと共に、同研究所が開発した高解像度TVについて情報収集を行った。 (e) インターナショナルサブマリンエンジニアリング社 世界的に有名なカナダのROV製造会社であり、同社製造の実機の説明を受けると共に、AUV(自立型無人機)全般にわたる情報収集を行った。 [3] MTS '92への出席 a. 派遣人員1名 b. MTS '92調査 (a) 期間 1992年10月18日(日)〜11月1日(日) (b) 場所 ワシントンD.C.(シェラトンワシントンホテル) (c) 主催 Marine Texhnology Society(MTS) (d) 研究発表件数 234件及び2つのワークショップ (e) 展示会 民間企業や政府機関による160の展示が行われた。 c. 研究機関等の調査・視察 (a) ルイジアナ州立大学沿岸漁業研究所 音響機器を主体として、メキシコ湾に設置されている海洋石油生産用プラットホームに分布する魚類の資源量計測等を行っている。 (b) フロリダ州立大学資源保護研究室 サンゴやマングローブの生態研究のため、フロリダ半島北部西岸に14ケ所のモニタリングステーションを設けて潜水を主体にした研究や潜水艇を用いた深海性のカニの生態研究等を行っている。 (c) フロリダシーグランドカレッジ フロリダ州におけるNOAAのジーグランド(海洋研究に関わる研究補助金)の配分を担当している機関であり、サンゴやマングローブに関連した研究等をおこなっている。 (d) NOAA海中研究プログラム(NURP) 物質の流れ、生産、生態系、地球規模変動、物質循環、海洋施設、有人潜水、海洋工学の項目の研究を行っている。実際の研究は、全米の6ケ所の地域海中研究センターNURC(National Undersea Research Center)が実施している。 (e) NOAAフロリダ支局(北カロナイナ大学キーラルゴ基地) キーラルゴ基地は、北カロナイナ大学ウイルミントン海中研究センター(UNCW)が運用している臨海実験場であり、海洋生態学、水質と汚染のモニタリング、生物の回遊行動、海洋学、地質学(サンゴ生態学を含む)を研究するとともに、海中研究室アクエリアスの実験準備作業等を行っている。 (f) 海中研究室アクエリアス 北カロナイナ大学ウイルミントン海中研究センター(UNCW)に所属し、ハビタットと設置回収移動用支援ブイLRTからなる海中研究室であり、水深50mまでの空気・酸素、ヘリウム・酸素の飽和潜水に対応できる。また、大気圧で海中計測用ステーションとしても活用できる。 (2) 海外の研究者・技術者の招へい [1] 深海生物研究に関する研究者の招へい a. 招へい研究者 仏国 IFREMER 深海環境研究部長 b. 招へいの成果 (a) 当センターが実施している深海生物研究について、助言を受けるとともに、今後の深海生物研究に関する共同研究の可能性について打合せを行った。 (b) 1987年から1991年まで実施した、日仏共同研究「STAR MER計画」の深海生物に関する研究結果について打合せを行った。 (c) 12月2日、当センターが主催する「しんかいシンポジウム」において、演題「The vent communities in two back-arc basins」についての講演が行われ、多数の研究者等が聴講した。 [2] 海洋観測研究に関する研究者の招へい a. 招へい研究者 米国 スクリップス海洋研究所 気候変動部門教授 b. 招へいの成果 (a) 当センター横須賀本部において大気海洋結合数値模型の研究について講義及び海洋研究に関する意見交換を行った。 (b) 12月3日、当センター横須賀本部において開催したR&Dミーティングで、演題「大気海洋数値模型による気候変動の予測について」の講演が行われ、多数の研究者等が聴講した。 (c) 1991年に当センターとスクリップス海洋研究所間で締結した研究協力協定に基づき、「海洋大循環に関わる調査研究」について打合せを行った。 (3) 国際協力の推進 [1] WHOI(ウッズホール海洋研究所)への職員派遣 a. 派遣人員 1名 b. 国際協力の推進の内容 (a) WHOI(ウッズホール海洋研究所)と共同研究開発している自律型深海底探査機(ABE)に関する打合せ及びカメラシステム機能向上のための作業・試験を実施した。 (b) MARQUEST社を訪問し、近距離用高精度音響測位装置に関する調査を行った。 [2] UJNR海洋構造物専門部会への役員派遣 a. 派遣人員 1名 b. 国際協力の推進の内容 (a) UJNR海洋構造物専門部会第18回日米合同部会へ出席し、当センターが開発している1万メートル級無人探査機及び深海微生物保回収装置等の開発状況について発表を行った。 (b) 上記専門部会のスタディツアーに参加し、米国における海洋構造物に係わる技術開発の状況及び関連研究施設の調査を行った。 (c) ハワイ大学海中調査研究所及びハワイ州立自然エネルギー研究所を訪問し、海中調査及び深層水の利用に関連した研究施設を調査するとともに意見交換を行った。
■事業の成果
本年度においては、[1]OTC'92会議・展示会及び米国の海洋開発関連機関、[2]ROV'92会議・展示会及び米国の海洋開発関連機関、[3]MTS'92会議・展示会及び米国やカナダの海洋開発関連機関の調査等を実施し、最新の技術動向を調査した。 その結果、当初予期した以上の技術情報、資料の収集を行うことができ、特に、現在当センターが進めている1万メートル級無人探査機の研究開発等、先端的研究開発事業の推進にとって、極めて重要なデータや情報が得られた。 また、海外の研究者・技術者の招へいについては、仏国のIFREMERから、深海環境研究部長を招き、深海生物研究及び深海生物研究に関する協同研究の可能性等について、また、米国のスクリップス海洋研究所から、気候変動部門教授を招き、大気海洋結合数値模型の研究及び海洋大循環に関わる研究等について意見交換を行い、指導、助言を受けた。 さらに、国際協力の推進については、米国の主要な海洋研究所の一つであるWHOI(ウッズホール海洋研究所)と当センターの協力関係を推進するため、両機関で協同研究開発している自律型深海底探査機(ABE)に関する打合せ等を実施、また、UJNR海洋構造物専門部会第18回日米合同部会では、当センターが開発している1万メートル級無人探査機及び海洋微生物保圧回収装置等の開発状況について発表するとともに、海洋構造物の開発に係わる研究機関等を訪問し、技術開発の状況調査等を実施した。 これらにより研究開発等の事業の推進に資するとともに、わが国の海洋科学技術の発展に寄与するものと思われる。
|
|