
■事業の内容
本開発研究は、有索遊泳式ロボットの運動制御技術の開発を目指し、平成3年度〜4年度の2ヶ年計画で実施するものであり、平成3年度は、ロボットの計画設計、水槽実験及びそれらの成果のとりまとめを行った。 (1) ロボットの計画設計 [1] 計画条件の設定 ロボットを使用する環境条件として沖合人工島を対象にし、水深、波浪、潮流など海気象条件ならびに高効率・高精度の海底測量を主体にしたロボットの運用条件を検討・設定した。 [2] 計画検討 上記の計画条件をもとに、ロボット・システムは、ロボット、デザーケ一ブル及び船上装置とし、それらのオペレーション要領を検討提案した。 また、ケーブル・カテナリを推算して、必要なケーブル長及び下降推力を決定した。 さらに、推進操縦システムは、前後スラスタ2基と前後部の十字舵で構成されるType A及び前後スラスタ2基と上下スラスタ2基から成るType Bの2案について検討し、Type Aを採用した。 [3] 計画設計 前記の計画検討にもとづいてロボットの計画設計を行い、搭載品、重量・浮量及び機器配置の検討を行って、ロボット主要目を決定し、これによる設計を行った。 (2) 水槽実験 計画設計から得られたロボット要目に対して、機体形状が相似な模型を制作し、平水中における拘束模型試験を行って、波浪中の3次元運動シミュレーション計算を行うに必要な流体力係数のデータを取得した。 [1] 供試模型 供試模型は実機の1/2.47縮尺相似模型であり、機体はアルミ合金製として、流体力計測用のブロックゲージを船体中央部に設置した。また、重心や慣性モーメントが計画値と一致させるようにバランスウェイトを調整した。 [2] 試験の種類 a. 平水中試験 自由表面の影響を避けるため、供試模型を水面下1.5mに没水させた状態で、下記の試験を行った。 ・ 抵抗試験 ・ 斜航試験 ・ 迎角試験 ・ 強制動揺試験 b. 波浪中試験 運動方程式に付加させる波浪流体力を求める試験であり、ロボットの没水深速度、波浪条件をパラメータとして行った。 (3) 成果のとりまとめ 上記の研究成果をとりまとめて報告書を作成し、委員ならびに関係機関に配付した。
■事業の成果
本事業は、今後の海洋工事の沖合化に伴う厳しい海気象条件下において、高精度な測量・検査が行える検測ロボットを目標に、強潮流下の有索遊泳式ロボットの運動制御技術の開発を行うものである。平成3年度は、ロボットの計画設計及び水槽実験を実施し運動シミュレーション計算に必要な流体力係数のデータを得た。
(1) ロボットの計画設計 本ロボットは母船とはテザーケーブルでつながれ、半自航半曳航の形でオペレーションされる。この場合のケーブル・カテナリを検討した結果、ロボットを6ktで航走させて深度10〜20mの範囲に制御するには、ケーブル長は100m程度、前進推力は100hgf程度あればよいことが判った。 また、操縦システムは、前後スラスタ2基と前後部の十字舵をもつType Aを採用した。 上記の検討結果をふまえ、ロボットの構造、推進操縦装置、電源伝送装置、調査観測装置の要目ならびに船上装置の要目を決定した。ロボットの主要目は次のとおり。 ・ 機体 : 径約0.6mφ×長さ約2.5m×高さ約1.4m×幅約1.4m ・ 空中重量/水中重量 : 340kgf/-5kgf ・ 前進最大速力 : 約6kt ・ 前後スラスタ : 3.0PS×1200rpmx2基 ・ テザーケーブル: 光ファイバ電力複合型26mmφx100m
(2) 水槽実験 縮尺1/2.47の模型を用い、平水中実験及び波浪中実験を行い、実験結果の解析から来年度実施予定の運動シミュレーション計算に用いる諸データを得た。 計測されたX、Y、Z軸方向の力や軸回りのモーメントは、それぞれ無次元表示で示した。 [1] 平水中実験 a. 抵抗試験 抵抗試験は、速度U=0.3〜1.5m/sの範囲で行った。低速時の抵抗は大きいが速度の増加とともに一定値に漸近し、U>0.7m/sではレイノルズ数の影響は小さいと見なされる。舵などの付加物の抵抗増は10%程間である。 b. 斜航試験 斜航試験は、速度U=0.5m/s、斜航角β=20〜180'の範囲で行った。舵無し状態に比べて全装備状態では、横流れ角に対する回頭モーメントが小さく安定側にあることが判った。 c. 迎角試験 迎角試験は、速度U=0.5m/s、迎角α=-30〜+30'の範囲で行った。 全装備状態では、舵無し状態に比べて揚力係数は大きく、ピッチング・モーメントは小さかった。 d. 強制動揺試験 強制動揺試験は、速度U=0、0.5m/s、周波数ω=0.2、0.4、0.6の範囲で行った。各流体力係数は、ほぼ妥当な値を示した。 [2] 波濃中試験 試験条件は、次のとおりである。 ・ 没水深d=0.65、1.3m ・ 速度U=0、0.5m/s ・ 波高Hw=0.2m ・ 波長λ=5、10、15m ・ 波方向μ=0〜180’ 上記の試験結果を波方向、速度、淡水深及び波高をパラメータにして、波強制力及びモーメントを整理したが、全体として、ほぼ妥当な値が得られた。
(3) 運動シミュレーション例 以上の試験結果を用いて、単純な条件設定のもとに運動シミュレーションを行い、検測ロボットの応答の概略を知り、次年度に行う予定の本格的運動シミュレーション計算の指針を得た。
(4) 予想効果 本年度は、有策遊泳式ロボットの計画設計、模型の製作及び水槽実験を行い、流体力係数等、貴重なデータを得ることができた。これらの係数は、次年度に実施する予定の運動シミュレーション計算の精度を挙げるとともに、ロボット形状変更に際しての基本的条件になり得ることなどの効果をもたらすものと思われる。
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