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■事業の内容

(1) 海上交通システムおよび港湾施設の基本要件の検討
a. 伊豆諸島におけるレクリエーション需要の把握
 地域全体の観光・リゾート開発の将来像、各島別の地域特性と将像、観光クルーズの整備イメージを検討し、大島地区、新島・式根島地区・神津島地区、観光クルーズの4項目については開発整備計画を策定し、開発方針、計画の機能構成、施設展開を提示した。さらに、開発整備計画に基づく観光入り込み客数(観光需要)の予測作業を行った。
b. 海上交通システムおよび港湾施設の整備にあたっての基本要件検討
 比較的厳しい海象条件を有する伊豆諸島海域に導入することが可能な高速船について、適合船舶として小型高速船3タイプ、中型高速船3タイプの合計6タイプの船舶を適合船舶として選定し、各々の主要性能項目を定め、本海域への就航の技術的な可能性を検討した。

(2) 海上交通システム及び港湾施設整備内容の具体化と整備方法の検討
・ 海上交通システム
 高速船等の海上交通システムの利用客数をルート別に推計した。海上交通システムの将来像をとりまとめ、高速船就航、本土側利用港湾の新設、海域のネットワーク化などを柱とする新な海上交通システムを提案した。
・ 港湾施設
 新波浪制御構造物の開発により、新しく得られた低天端斜面半没水型上部斜面ケーソン堤の試設計、施工法の検討結果を用いて、モデル港湾の整備方策を検討した。この結果、所要の港湾静穏度を得るためには、防波堤を沖合いに延長することの他、港口幅の縮小、港内での副堤設置などの方策が必要であることが確認された。モデル港湾の配置計画に関しては、3つの案を可能な整備方向として提示した。

(3) 海上交通システム及び港湾施設整備の効果分析
a. 海上交通システム及び港湾施設整備に伴なう経済効果
 観光入り込み客数の増大に伴なう消費効果、高速船の導入による造船需要効果、港湾施設の整備による建設需要効果について、金額推計を行うと同時に、経済的波及効果についても分析した。
b. 海上交通システム及び港湾施設整備に伴なう非経済効果
 地域活性化、コミュニティー存続、地域における観光業を中心とする自立型産業群の形成、新型高速船の建造による技術的波及効果に関する分析を実施した。
c. 海上交通システム及び港湾施設整備に係わる投資額の推計
 海上交通システムに関しては、投資額を推計すると同時に、運航事業の特性を分析した。
d. 開発・整備プロジェクトの採算性分析
 航路別の事業収支を分析するとともに、統合航路の構築、新海上交通システムの提案を行い、全体の採算性分析、利益分析、投資規模分析を行い、事業特性を把握した。また、港湾施設に関しては、モデル港湾の建設工費の推計を行ない、港湾整備費用の総額を算出した。

(4) 伊豆諸島地域振興と海上交通システム及び港湾施設の整備に向けての提案
a. 海上交通システムの開発の総合的評価と問題点
 新たな海上交通システムが各方面に与える影響を分析し、プランの現実が強く望まれるとの結果を得た。高速船就航を地域整備の呼び水としていく方策が、より実際的との評価を得た。問題点としては、フェリー就航、高速船の技術性能、東京湾内の速度規制など、今後の検討課題としてとりまとめた。
b. 港湾施設の総合的評価と問題点
 モデル港湾の整備費用に関しては、新波浪制御構造物の導入により、従来工法に比較して、工費に格段の削減効果があることが確認された。離島港湾の場合、整備費用が限られているので、各種の開発効果を考慮すると、将来的には整備費用の増加を図る必要があるとの検討結果を提示した。
c. 本プロジェクトの推進にあたっての提案
 本調査で得られた整備計画の実現が強く望まれる点を協調すると同時に、実現上の課題として既存団体による活性化努力の必要性、地元住民へのインセンティブの付与と意欲の醸成、交通インフラ整備の重要性、ソフト施策の重要性、各種事業制度の活用策等をとりまとめた。

(5) 新波浪制御構造物の開発
 港湾関連の実験及び数値シミレーションは、伊豆諸島地域での港湾整備のあり方、実現可能性を探るとともに、広く国内における今後の新波浪制御構造物の開発、整備の指針と在りうる結果をとりまとめた。
a. 新波浪構造物の推理特性
 低天端斜面半没水型上部斜面ケーソン堤には、高速船就航の限界である外海有義波高3.5mにおいては、伝達率は2割前後と消波効果が高いこと、また、従来の直立堤に比べて滑動合成波力低減効果が大きいことを、確認した。
b. 新波浪制御構造物による港内静穏度に関する新しい算定法を提示するとともに、その有用性を検証した。
c. 新波浪制御構造物の構造及び施工
 半没水型上部斜面堤を伊豆諸島で施工する際の斜面部の構造、工法手順、工期に関して比較的、容易に施工が可能であるとの結果を得た。また、工費的にも約3割の費用削減効果が見込まれる点を確認した。
d. 係留方法の改良
 片舷係留方式、対象係留方式、ドック方式の3方法を比較、検討する形で、防舷材の特性などを考慮しつつ検討した。対象係留方式の利用による船体の動揺低減効果が比較的高い点が確かめられた。

(6) 報告書の作成
a. 部数:200部
b. 配布先:関係官庁、造船関係者、委員等

(7) 委員会の開催
委員会           3回
統括作業部会        3回
海上交通システム作業部会  1回
港湾施設作業部会      3回
■事業の成果

伊豆諸島、特に大島、新島地区は、距離的には伊東、下田など伊豆半島のリゾートエリアと変わらないにもかかわらず、その開発の遅れが目立っている。これは、現在伊豆諸島への主たる足である船舶交通が、時間がかかりすぎると、船内で快適に過ごせないこと、海象条件が厳しくかつ天然の良港に恵まていないことなどの欠点を有しており、このため伊豆諸島への入り込み人数の向上が図れないことなどに起因していると考えられる。
 今後の伊豆諸島の活性化を図っていくためには、人々の多様なニーズに対応したリゾート拠点の整備を図るとともに、これと一体となった、高速性、信頼性、快適性の高い海上交通システム及び港湾施設の整備を行っていくことが望まれるところである。
 本事業は、海上交通システム及び港湾施設の整備を図るため、利用者ニーズに対応した航路設定、地域開発のあり方、これを担う新しい船舶のあり方、これを担う新しい船舶のあり方、スムーズな離発着システム、簡単な平穏海域の創出などについて調査研究するとともに、伊豆諸島海域振興と新たな海上交通システム及び港湾施設の整備に向けての提案を行なった。すなわち、海上交通システムの開発の総合的評価と問題点として、新たな海上交通システムが各方面に与える影響を分析し、プランの現実が強く望まれるとの結果を得た。問題点としては、フェリー就航、高速船の技術性能、東京湾内の速度規制など、今後の検討課題を把握した。また、港湾施設の総合的評価と問題点として、新波浪制御構造物の導入により、従来工法に比較して、工費に格段の削減効果があることが確認された。但し、離島港湾の場合、整備費用が限られているので、各種の開発効果を考慮すると、将来的には整備費用の増加を図る必要があることを把握した。さらに、本プロジェクトの推進にあたっての提案として、本調査で得られた整備計画の実現が強く望まれる点を協調すると同時に、実現上の課題として既存団体による活性化努力の必要性、地元住民へのインセンティブの付与と意欲の醸成、交通インフラ整備の重要性、ソフト施策の重要性、各種事業制度の活用策等を提案した。
 これらにより、運航会社の経営基盤強化及び島嶼航路の維持に資するとともに、造船技術の振興ならびにわが国造船業の活性化に大きく貢献したものと思科される。





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