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■事業の内容

(1) 小型船舶整備士検定制度の検討
 平成元年度に実施した小型船舶の製造・整備事業者の実態調査を基にまた既に制度として確立されている自動車や飛行機等の整備士検定制度を参考にして、小型船舶整備士検定制度の検定方法、検定機関等どうあるべきかについて調査・検討を実施した。
 調査・検討にあたっては、[1]利用者保護の観点から小型船舶の利用者が安全に航行し、安心して海洋性レクリエーションを楽しむことができること、[2]安全面について、整備士が日常点検等の整備サービスを積極的に行っていくこと、[3]マリーナ、ディーラー及び専業工場等において小型船舶の整備に従事する者の技能の向上を図る事、等を主たる日的として、制度の検討を行った。実際の調査については、整備事業者にヒアリング及びアンケートを実施して現状を詳細に把握し、小型船舶整備士検定制度の検討と同時に、優良整備事業場の要件についても検討した。
 また、小型船舶整備士の資格種類及び等級を検討する基礎資料として舟艇及び自動車整備事業者が実施している整備技術者の教育制度に関して調査を行った。さらに、(社)日本舟艇工業会が販売・整備事業者を対象として実施したアンケート調査結果も参考とした。
(2) 小型船舶特定制度の検討
 小型船舶の所有者を特定する方法として、艇体の番号を付して識別する方法が考えられるが、国内における他分野の特定方法、その他諸外国で実施されている方法等を調査し、小型船舶の特定方法、特定機関等に関し調査・検討を実施した。
 また、ISO(国際標準化機構)の提案している船体識別番号(HIN)付与システム(全てのボートの艇体を国際的に統一した方法で識別する基本的な必要最小限の番号システム)について、その導入による効果と問題点について検討した。
(3) 中古艇査定システムの検討
 平成元年度の実施した中古市場の実態調査を基礎資料として、また既に査定システムとして確立されている自動車や中古エンジン等の査定システムを参考にして、中古艇査定システムの査定機関、査定基準等はどうあるべきかについて調査検討を実施した。調査にあたっては、基礎資料に加えて一般の中古艇流通事業者20社を対象にヒアリングを実施した。
 また、(社)日本舟艇工業会が会員会収を通じ実施した中古艇流通実態に関するアンケート調査も参考に、実現可能な中古艇査定システムの構築について検討した。
(4) とりまとめ
 以上1〜3の検討結果について、それぞれ調査項目ごとに提言をとりまとめた。
[1] 小型船舶整備士検定制度
 小型船舶整備士として必要とされる知識技能について、わかりやすく教育することのできる講習教本を作成することが必要である。また整備士の資格について、それぞれ技術全般の責任者から実際に作業にあたる技術者まで3等級制とすることが適当である。
 資格の取得については小型船舶整備の知識、技能に関する一定の講習を行い、認定のための試験を行うことが適当であり、講習及び試験とともに整備士として要求される知識の学科試験と、要求される技能についての実技試験を併せて行うことが必要である。
 また、本検定制度は利用者保護や関連整備業の発展等多面的観点からその実施を図るものであり、本制度を実施する機関としては、これらの要請に対応できる適切な民間団体を活用していくことが必要である。
[2] 小型船舶特定制度
 舟艇と所有者を特定(登録)した場合は、所有者、製造者等の事業者及び行政サイド等第三者にいずれも大きな効果が生じることから、登録制度の導入が各方面から求められているものであるが、登録制度の維持に伴う経済的負担は最終的に所有者が担うこととなることから出来る限り登録手続きを簡素化し、経済的負担を少なくするような配慮が必要であり、今後、関係者の合意を得て登録制度の実現に向けて具体的な検討を進めていくべきである。
[3] 中古艇査定システム
 現在、中古艇の流通はまだ、新艇の販売実績と比較すれば微小な状況にある。よって、中古艇査定システムの作成にあたっては、中古艇販売事業者の継続的な実態調査及び中古艇査定制度に対するニーズ調査というような基礎調査をさらに綿密に行って、利用者が望むシステムを設立するよう今後とも検討を行っていく必要がある。また、システムの作成にあたっては、ユーザーの利益を保護する立場でユーザーの意見をいれて行われねばならない。その制度の骨子となるのは、ユーザー自身が公正さや艇の整備に関し、いつでも明確に判断できる査定基準とそれに伴う査定員の信頼ある査定パフォーマンス、そしてユーザーに対してオープンな機構とするとが望まれる。
■事業の成果

近年、国民意識の変化等により余暇活動に対する価値観も大きく変化しており、こうした中でヨットやモーターボート等小型船舶を用いた海洋性レクリェーションの健全な振興を図る重要性は、ますます高くなりつつある。しかしながら。小型船舶については船舶所有者を特定する制度がなく保有隻数や整備状況等不明なために、安全対策等の利用者保護体制の不備が目立っている。したがって、このような事態に対処するため、平成元年度に実施した実態調査の結果をもとに、利用者保護対策として小型船舶整備士検定制度、小型船舶特定制度及び中古艇査定システムに関する調査・検討を行った。
 調査の結果・小型船舶整備士として必要な技術、検定方法、検定機関等を含めた検定制度のあり方、登録制度導入により舟艇と所有者を特定した場合の効果と問題点、また、中古艇査定システムの査定機関、査定基準のあり方等、小型船舶の利用者保護体制確立に必要な諸問題の解決方法についてそれぞれ提言を行うことができ、小型船舶の健全な振興に資することができた。





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