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■事業の内容

国連海洋法条約に規定する範囲は非常に広範囲に及んでおり、同条約に関し主要な海洋国は、条約の発効を待つまでもなく、二国間協定の締結、国際慣習とみなすことによる国内法化等という形で条約の規定を先取りしつつある状況である。
 従って海洋法条約の受入れに対し適確に対応していくためには、海上保安業務を遂行するうえでの重要事項について、これまでの検討を踏まえ引き続き各論的に検討を深めていくことが必要である。
 また、主要各国について、最近の条約に関する動向、条約関係条項の解釈・運用、その受け皿となる国内法令の整備状況、これらに関する判例・先例等について具体的な調査研究が不可欠である。
 このため官・学のメンバーによる「海洋法条約検討委員会」を設置し、海上保安業務に密接な関連を有する事項に範囲をしぼり、具体的かつ詳細に調査研究を行うとともに、外国における法制度等に関して調査を行い、これらを踏まえて国内法整備の方向付けに関して具体的な提言を行い、海上保安体制の円滑な整備に貢献するため、次の事業を実施した。
(1) 海洋法条約検討委員会における調査研究
 海洋法条約検討委員会(学者グループ7名、官庁グループ9名、計16名)の開催
[1] 第1回委員会
 平成2年度における海洋法条約検討委員会の進め方について
 領海警備について
[2] 第2回委員会
 海洋の科学的調査について
 海外調査事項について
[3] 第3回委員会
 海洋環境の保護および保全について
[4] 第4回委員会
 海上保安官の職務執行について
 航行障害物の規制について
[5] 第5回委員会
 海外調査結果について
(2) 海外の海洋法条約関連法制度の調査・関連資料の収集
 諸外国における海洋法条約関連法制度、判例等の現地調査及び関連資料収集のため、委員1名を下記により派遣し海外調査を実施した。
[1] 調査期間   平成3年1月16日(水)〜平成3年1月29日(火)
[2] 調査対象国  アメリカ及びカナダ
[3] 派遣委員   慶応義塾大学教授 安 富  潔 氏
[4] 訪問機関   カナダ運輸省、ハーバード大学
アメリカ沿岸警備隊 太平洋方面司令部 等
■事業の成果

海洋法条約検討委員会において、国連海洋法条約の批准に伴う国内法の整備等につき多角的に検討を加え、排他的経済水域等に対して我が国の管轄権が拡大した場合等の海上保安分野における法的、制度的問題点等を浮き彫りにしたことにより、現下の海上保安業務に反映させるとともに、将来の海上保安体制のあら方等について検討するうえで、貢献するところが大きかったものと思料される。
 また、本委員会における始めての海外調査は、今後の国内法の整備にあたり参考になるものと期待される。





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