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■事業の内容

(1) ばら積み化学薬品の危険性の評価と基準の検討
 現行のばら積み化学薬品に関する危険性評価基準により具体的な評価基準とするため、本年度は未確立基準7項目のうち下記3項目について実施した。
[1] 蒸気の吸入によりアレルギー性反応を起こすことがわかっており、これが深刻かつ長期にわたる影響を及ぼすようなもの。
[2] 長時間にわたり、蒸気に対し断続的に曝露すると、軽度から重度の障害を発生させるようなもの。
[3] 皮膚に対する感光剤となるような液であり、深刻かつ長期にわたる影響を及ぼすようなもの。
 [1]及び[3]の2基準は、医学的に考えるとその発生部位が呼吸器系であるか皮膚であるかという差はあるものの、発生機序は免疫学的な反応であるという点で共通しているので、試験研究は以下のとおり同時に論じた。
a. アレルギー性評価基準
 感作性物質に関する評価基準の考え方を、個々の感作性物質データが充実してくれば感作成立頻度又は感作成立濃度による基準を採用することが妥当であるが、当面は感作性の有無による基準によって評価することとした。
b. 蒸気への曝露に対する評価基準
 ばら積み運送の実態を考慮すると、蒸気曝露危険性を示す数値レベルによって分類し、分類毎の対応の方法を決定することが適当であるが、真に危険性の高い物質については「時期-濃度-反応」の3次元の関係についての危険物評価をする必要がある。このため、シランを試薬として動物実験を行った。実験の結果、死亡に関しては「10,000ppm30分」は危険ではないというデータが得られ、このことはシランの有する爆発危険性と短時間高濃度曝露における健康影響のバランスを考える上で非常に有益な実験結果であるといえる。
■事業の成果

液体化学薬品のばら積み運送時に船舶乗組員等の関係者が短時間・高濃度の蒸気曝露による健康障害について、その危険性評価をする際には「時間-濃度-反応」関係曲線(閾値曲線)に基づき判断する方が、既存の参照値等によるより優れていることが判った。
 しかしながら、個々の物質毎にデータを収集することは非常に困難な作業であるので、今後は運送量の実態などの因子から優先順位を設定し、この閾値曲線を求めて行く努力が望まれる。





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