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■事業の内容

(1) 航路標識用新光源に関する調査研究
[1] 委員会による検討
 委員会を4回開催して、試作及び実験について指導し、成果のまとめを行った。
a. 研究方針の検討
 平成元年度の研究方針を検討して、調査計画を決定した。
b. 基礎資料による検討
 放電灯用点滅システムの試作・実験にかんする基本的問題を検討して、試作実験について指導を行った。
c. 実験方法の検討
 LED灯器システム、HIDランプ及び同灯器システム、放電灯用点滅システムの寿命及び耐候性試験等の実験方法について検討し、指導した。
[2] 灯器システムの試作、実験
a. LED灯器システムの実験
 昨年度につづき、灯器システムの連続通電試験、屋外暴露試験、LED素子の高温連続試験及び促進耐候性試験を行い、光度の低下と灯器の老化を調査・分析した。
 屋外視認実験を行い、灯器の実用性を調査した。
b. HIDランプ灯器システムの実験
 HIDランプ(緑色及び赤色)について寿命テストを中心に電力、光束、色度、効率等のテストを行い、その結果を分析した。
 HIDランプ灯器屋外暴論試験、及び屋外視認実験を行い、実用性について調査した。
c. 放電灯点滅システムの試作実験
 研究方針を検討して、試作実験方法を計画した。
 螢光灯、HIDランプ、キャノンランプについて、点滅システムの試作を行って、光度、色度、寿命テスト等を行った。
[3] まとめ
 平成元年度に実施した調査研究結果を分析整理し、昭和62年度昭和63年度のものの要約と併せて、完了報告書を100部作成した。
(2) 新方式レーダービーコン装置に関する調査研究
[1] 委員会による検討
 委員会3回、作業部会4回を開催して調査研究の手順、方法等を指導、助言するとともに成果の検討評価、研究のまとめを実施した。
a. 研究方針、手順の検討
b. 試験装置の総合設計の検討及び試作の助言
c. 評価試験方法の検討
d. 研究成果のまとめ
[2] 試験装置の総合設計及び試作
 試験装置の性能として、周波数識別はI/Q方式による周波数弁別回路とし、周波数弁別精度は5MHzを、また、パルス識別はパルス幅を0.2μs未満、以上の2段階判別とし、さらに、サイドローブの識別はレベルを検出し、同一周波数でレベル差が20dB以上の場合、装置の送信を停止することとして設計を行い、試作した。
[3] 評価試験方法の検討
 評価試験は、室内試験と室外試験を行うこととし、室内試験においては信号発生器から疑似レーダー波を入力して、周波数識別特性、サイドロープ識別、応答の揚圧特性、パルス識別特性、応答遅れ時間、2波入力特性のほか、レーダービーコン共通性能項目を、まれ、室外試験において停泊中の海上保安庁の見回り船搭載レーダーと近傍の陸上に設置した試験装置の間で応答動作させ、レーダーPPI上のビーコン符号画像の出現状況により評価をおこなった。
[4] 研究成果のまとめ
 2ケ年にわたり実施した本調査研究のデータを検討し、新たなデータ、成果とともに実用化の提案をまとめた報告書100部作成した。
 関係官庁、関係団体、賛助会員等に配布し、本研究成果の有効利用をはかることとする。
(3) 陸上レーダーによる船舶識別装置に関する調査研究
[1] 委員会による検討
 委員会3回、作業部会2回を開催して調査研究の手順、方法等を指導、助言するともに、本年度の研究成果のまとめを実施した。
a. 研究方針、手順の検討
b. 小型船の定性的確認
c. 混雑海域での船の特定方式の検討
d. 船上識別回路方式と識別符号の検討
e. 単方向通報方式の検討
f. 研究成果のまとめ
[2] 小型船の定性的確認
 東京湾海上交通セクターにおいて、近海を航行する船舶の追尾実験及び実験用の船舶を使用し、コーナーリフレクタ・レンズリフレクタの使用効果を実験した。
[3] 混雑海域での船の特定方式の検討
 各種方式について、比較、検討を行い、トランスポンダ方式でレーダー波起動/レーダー波通報方式を採用することとした。
[4] 船上識別回路方式と識別符号の決定
 船上識別器の必要条件を分析し送受信部の制御部よりなる構成を決定した。また、応答する識別パルスの形式、変調方式も決定した。
[5] 単方向通報方式の検討
 通報方式は、情報によってレーダーパルスの発射位置間隔をずらせるPPM変調方式を採ることが有利なため、その方法として伝送符号方式・変調方式を決定した。また、本方式による偽応答・不要通報の種類を分析し、発生の可能性を調査し、さらにこれらの除去方法についても調査し対策を考案し決定した。
[6] 研究成果のまとめ
 本年度を実施した、調査研究の成果をまとめた報告書100部を作成した。関係官庁、関係団体、賛助会員等に配布し、本研究成果の有効利用を図ることとする。
(4) IALA理事会への出席
[1] 第72回IALA理事会は、平成元年4月5、6日フランス(パリ)において開催された。当協会から総務部長名和芳雄が政府委員の補助者として出席し、参加各国と技術上の情報交換を行い、国際的な動向把握につとめた。
 なお、議題は、下記の通りであり、これ等について報告し、また討議された。
a. 会員の加入、退会について
b. 関係国際会議について
c. 他の国際機関との協同研究について
d. 第12回IALA会議について
e. IALA組織及び憲章改訂について
f. IALA技術委員会について
g. IALA刊行物について
h. 会計について
[2] 第73回理事会は平成元年10月11日〜13日のサウジアラビア王国(リアド、ジェッダ)において開催された。当協会から総務部長名和芳雄が政府委員の補助者として出席し、参加各国との技術上の情報交換を行い国際的な動向把握につとめた。
 なお、議題は下記の通りであり、これ等について報告し、又は討議された。
a. 会員の加入、退会について
b. 関係国際会議について
c. 国際海事機関等の共同研究
d. IALA総会ほか関係会議について
e. IALA憲章について
f. IALA技術委員会における検討結果について
g. IALA本部の拡大、移転について
h. IALA刊行物について
i. 会計について
[3] 期間
第72回理事会
H1.4.02〜H1.4.08
第73回理事会
H1.10.08〜H1.10.15
[4] 各理事会の出席報告書を作成した。
(5) 近隣諸国における航路標識事業及び関係システム等の開発状況の調査
[1] 対象国の中華人民共和国(以下中国)とし調査実施を9月として実施計画の検討に入ったが、中国内の情報変化が報じられたことから、調査実施を9月以降として情勢を見守るとともに、対象国を本事業の目的に沿った範囲内で他の国とすることも併せて検討することとなった。
 その後、中国の情報が次第に改善の方向にある旨が報じられたことから、海上保安庁、在北京日本大使館と協議を行い、4/4半期に当初目的の調査実施が確定した。
[2] 調査日程を8日間とし、調査実施項目、調査員を決定した。
[3] 平成2年2月21日から2月28日の間、中国における標記調査のため、当協会審議役江並脩及び主任研究員廣田直照を北京、天津上海に派遣した。
[4] 標記調査を実施し、報告書を作波した。
(6) IALA技術委員会への出席
[1] IALA技術委員会(第18回IALA海上標識システム技術委員会:MMS)は平成元年10月2日〜6日の間、トロントで開催され、当協会から嘱託小原昭一郎が出席し、各国と技術情報の交換、討議を行った。
 なお、本委員会は開催場所がカナダに変更になったが、主催者から我が国政府委員(MMS委員:海上保安庁灯台部工務課長)あて開催通知、出席案内があったが、政府委員は出席できなかった。
[2] 下記の議題について討議が行われた。
a. NAVGUIDEの改訂について
b. ディファレンシャルGPSについて
c. ECDIS(電子海図表示装置)について
d. 太陽電池、風力発電による電源システムについて
e. MMS委員会の業務と今後の事業計画について
[3] 討議結果をとりまとめ、報告書を作成した。
■事業の成果

(1) 航路標識用新光源に関する調査研究
[1] LED灯器システムの実験
 LED素子の、高温環境連続通電試験・促進耐候性試験及び灯器システムの屋外連続通電試験・屋外暴露試験を行ったが、いずれの場合も光度の低下は緩やかで光束の維持率は高く、航路標識用として、十分に実用にたえる。
 また、屋外視認試験において、在来型灯器を上回る評価を得た。
[2] HIDランプ灯器システムの実験
 緑色・赤色ランプ共に目標とする色度、光度、光束の維持率を得ることができ、航路標識用光源として実用できることを示した。灯器システムの屋外暴露試験では光度の維持率は問題はなかったが、防水性を強化する必要がある。
 また、屋外視認実験では、在来型灯器と同等又は、上回る評価を得た。
[3] 放電灯点滅システムの試作実験
 螢光灯が点滅システムについては、全く問題点はなく、直ちに実用化できる。キャノランプ及びHIDランプの連続点滅システムでは、不動光度と、点灯光度との比が目標値に達せず、実用化には今後更に研究改善の必要がある。
(2) 新方式レーダービーコン装置に関する調査研究
[1] 周波数識別について
 周波数識別の精度と直線性は、I/Q位相弁別による方式を使用し、送受信周波数合致度(ビーコンがレーダー電波を受信して周波数識別し、識別結果による送信する周波数間の誤差)は周波数9340〜9470MHzにおいて5MHz以下とすることができる。
[2] パルス幅識別について
 パルス幅識別の結果は、符号画像の視認性向上のため、識別パルス幅を0.2μs未満、以上の2段階判別としたことにより、船舶遠近(レーダーpPI距離レンジ)に対応した符号画像長が得られた。
[3] サイドローブ識別と応答の抑圧について
 レーダー波のメインロープとサイドローブのレベル差20dBを検出し、送信応答を阻止することができた。また、このレベル検出結果と周波数識別による周波数特定結果からサイドローブを判定する今回の方法が有効であることが確認できた。
[4] 送信応答遅れ
 上記(1)〜(3)の機能にたいして、送信応答遅れ(受信してから送信するまでの時間)は0.6μs以下で達成できた。
[5] 二波入力における動作
 二波入力の時間挙が0.3μs以上(受信識別系の遅れと周波数データサンプリング時間)であれば問題のないことが確認できた。
[6] 本調査研究の結果、上記基本性能の確認とともに、今後の実用化に対する基礎資料を得ることができた。
(3) 陸上レーダーによる船舶識別装置に関する調査研究
[1] 小型船の定性確認
 陸上レーダーによる識別装置の開発に際し、現状を把握するため、観音崎レーダー局において小型船の捕捉状況及びレーダーリフレクタ搭載による効果について実験を実施した結果「小型船は安定的には捕捉できない」「レーダーリフレクタの搭載により捕捉しやすくなるが十分ではない」ことが判明し、「小型船には識別装置を考慮する必要がある」との調査結果を得た。
[2] 識別通報システムの基本設計
 識別通報システムとしては、陸上レーダー局側の通報装置、船舶に搭載する船上装置、伝送方式から成るもので、本システムにおける必要機能を抽出し、各種方式について比較検討した結果、使用する電波が少なく、船上装置が安価に構成できるレーダー波通報/レーダー波起動方式を採用することとした。
 変調方式としては、陸上レーダー局側は、PPM変調、船上側はPPM変調とし、それぞれについて通報内容の符号割当てを決定した。
[3] 識別通報システムの不要通報、偽応答についての検討
 識別通報システムの不要通報・偽応答の可能性について検討し、その対策方法を研究した。
 採用した処理方法は、距離の一番近い応答を真応答とし、同一距離の最大レベルの応答を選択するもので、これにより反射による偽応答、サイドロープによる偽応答を除去できる簡単で有利な方法と思われる。
(4) IALA理事会への出席
 IALA理事会へ出席し、参加各国の関係者と意見交換を行い、国際的な動向を把握できたことは、今後の当協会の事業運営上寄与するところ極めて大であると思料される。
(5) 近隣諸国における航路標識事業及び関係システム等の開発状況の調査
 航路標識の整備、運用については国際的な調和が必要であり、特に近隣諸国とは航路標識の運営に関して密接に連携をもつべきであるが、この点が現実には充分でない。特に大国である中国とは航路標識の分野での交流は殆どなかったと云うべきであり、今回の調査が、今後の技術交流、情報交換の糸口となるものと思料され、大きな成果が得られたと云える。
(6) IALA技術委員会への出席
 航路標識の分野でも技術革新は著しいものがあり、航路標識システムへの新技術の応用、あるいは、新システムの開発等が常に考えられているが、それらの情報が得られ、あるいは討議できるこの種の委員会への出来は極めて有益である。
 従来から政府委員が諸般の都合で出席していないが、今回初めて当協会から出席でき、予想以上に有益な情報が得られる等大きな成果が得られた。





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