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■事業の内容

(1) 実船実験の実施
 実験に必要な諸装置を製作し、前年度に製作した実験用装置機器とともに供試船に取付け、供試船の装置機器に対する所要の改造工事を行った後、総合調整ならびに実験を実施した。
[1] 実験に必要な諸装置の製作
 実験に必要なセンサ類、入出力信号分配函及び制御信号切替装置を製作した。
[2] 実験用装置機器の取付・撤去
 実験用装置機器を供試船に運搬・取付け、実験終了後これらを撤去した。
[3] 実験用装置機器の総合調整
a. 実験用装置機器を供試船に運搬する前に信号授受確認テストを行った。  (工場)
b. 一部の実験用装置機器については、実験前に供試船に装備して調整を行った。
(大分)
c. 供試船に装備された実験用装置機器の単体調整の後、実験用装置機器及び供試船の装置機器を含めた総合調整を実施した。  (志布志)
[4] 実船実験
 昭和62年11月4日〜10日の7日間、志布志国家石油備蓄基地造成工事現場において、実船実験方案にもとづいて実験を行った。
[5] 試験委託
a. 供試船の主要目(ポンプ圧力、回転数、負荷、カッタ電流、スイング電流、含泥率等)を記録した。
b. データ収録は、運輸省港湾技術研究所に委託した。
(2) データの解析及び成果の取りまとめ
[1] 自動浚渫制御システムについて
 自動浚渫制御システムには熟練オペレータのノウハウを十分に反映させるために、従来のシーケンス制御に加えてファジー制御を取入れることとし、2回にわたる「ポンプ浚渫船の運転制御に関するアンケート調査」の分析結果をもとに、ファジ制御の基礎となる制御規則及びメンバーシップ関数を作成した。当初、制御規則数は244としたが、実船実験時の状況によって取捨選択され、今回の実験では69の規則数で熟練オペレータに匹敵する作業能力を上げることが立証された。実験時の厳しい波浪条件及びそのために設定値を安全サイドに設定したこと、他分科会の情報を組込むこと等を考慮すれば、通常運転時には、熟練オペレータと同等以上の能率向上が見込まれよう。
[2] 管内流動土質検出装置について
 管内を流れるスラリー中の土砂によって管壁振動が変わることに着目して、管内の土質判定を行うと云うユニークな装置を開発した。模型実験及び実船実験を通じて振動パターン及び振動レベルによって大まかな土質判定が可能であることが判った。同時に外部情報(含泥率、流速、ポンプ圧力等)との組合せによって、排送管内における土砂の沈澱警報装置としての有効性が確認された。
[3] 表層土質検出装置について
 表層数mの土質探知を目標にして開発された超音波探知装置である。パラメトリック方式及びモノパルス方式について海域実験を繰返し行い、それらのデータの検討結果から、両方式の特徴を生かした土質判別手法をもとに試作機を設計・製作した実船実験によって、超音波の反射レベル及びパルス幅の組合せから表層土資の判別が可能であることが立証され、本装置の有効性が確認された。
[4] 自動浚渫管理装置について
 アンケート調査の検討結果から、開発を要するセンサとして「カッタ深度計測装置」及び「深度(掘跡)計測装置」を取上げ、同時に各種センサ情報による「浚渫監祝装置」の開発を目標とした。
a. カッタ深度計測装置について
 アンケート調査による要求精度から、水晶式水位センサを選択し、2個のセンサをラダー上に設置して、センサ深度及びラダー角度からカッタ深度を算出する方法とした。実船実験によって、波浪による平均化特性及び応答特性について検討し、十分な精度が得られることが確認され、同時に耐久性、耐衝撃性についても実用性があることが立証された。
b. 深度(掘跡)計測装置について
 浚渫後の掘跡を検知し、仕上り状況や掘り残しの有無をリアルタイムに確認しようとする装置である。本装置では、特に法面を電子的な斜測によって測定する方法とした。実船実験によって、振り角度20°までは、十分な精度で測深できることが確認された。
c. 浚渫監視装置について
 各種の外部情報を入力してCRT画面に「カッタ軌跡」及び「掘跡断面」を表示し同時に「掘進図」をX-Yプロッタに描かせる装置である。
 「カッタ軌跡」画面では、カッタ負荷に応じて軌跡を色分けすることによって、土質の硬軟を表わすようにした。「掘跡断面」画面は、深度深度(掘跡)計測装置からの情報を入力して、必要に応じて画面選択が可能にしてある。実船実験によって、それらの機能は良好であることが確認された。
■事業の成果

本調査研究のポンプ浚渫船の自動化においては、新しいファジー制御理論にもとづく高度な制御システムを開発すると同時に、土質情報を得る装置及び浚渫状況を監視できる装置の開発を行った。
 これらのシステム及び装置の開発により、作業条件に応じた高能率運転と合理的・経済的な浚渫が可能になり、公共事業の円滑な推進及び関連業界の技術力の向上と海外競争力の強化に寄与することが期待される。
 さらに、各装置機器についての波及効果は次のとおりである。
(1) 自動浚渫制御システム
 従来、浚渫作業は自動化しにくい対象とされてきたが、本システムの開発によって他の浚渫船或いはクレーンの制御等にも応用されることが可能である。
(2) 管内流動土質検出装置
 泥と砂の判別が可能となり、これによって埋立地での土砂管理が容易となる、また他分野におけるスラリー輸送に対する利用も可能である。
(3) 表層土質検出装置
 海底のみならず湖沼、ダム等の表層土質判別装置としての利用が考えられる。
(4) カッタ深度計測装置
 現状技術では最も精度の高い深度計であり、水位計、喫水計としての応用、或いは水中ロボット等の深度計としても利用可能である。
(5) 深度計測装置、浚渫監祝装置
 海中作業の施工状況をビジュアル化し、管理・監視計器としての利用範囲が広い。





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