
■事業の内容
本事業は、下記主要目の高性能クローズドサイクルディーゼル主機関(CCDE)を開発するもので、59年度は、潜水艇の概要設計、熱サイクルの検討、基本設計、機能設計、機関部品設計、補機計画・基本設計、ディーゼルエンジンの試作購入を行い、60年度は、CCDE周辺機器及び制御系の詳細設計並びに周辺機器、制御機器等の試作・購入及び組立・据付を行った。61年度は、CCDEのカプセル及び周辺機器の一部の設計・試作並びに機関用制御系の制御系ソフトウェアの作成を行い、陸上で機関特性試験、周辺機器特性試験を実施し、解析とりまとめを行った。 本年度は、次の内容を実施した。 (1) CCDEの主要目 [1] 出力/回転数 320ps/1,800rpm [2] 燃料消費率 220g/bhp・hr [3] 給気温度 15℃ [4] 連続運転時間 200hr [5] 使用最大水深 450m (2) 設計 模擬海中試験用機器及び制御系の一部として、下記の設計を行った。 [1] 模擬海中試験用カプセル詳細設計 模擬海中試験用カプセルとその内部に設置する機器の配置について詳細な設計を行った。カプセルは、主機関、圧縮機等の1番架台と周辺機器の2番架台の二重支持構造とした。 外形寸法 長さ4.8×高さ2.3×奥行2.3m 機器類を含めた全重量 約12トン [2] 酸素供給系設計 模擬海中試験時に使用する液体酸素タンク及び液体酸素蒸発器の詳細設計を行った。 a. 液体酸素タンク 長さ7.1×直径1.4m×2基 合計10m3 b. 液体酸素蒸発器 流体 :液体〜気体酸素、 流量:242kg/h 設計圧力:15kg/cm2g、 設計温度:-196〜40℃ 長さ0.8×幅0.83×高さ0.45m [3] 煤塵除去装置 煤塵除去方法として、充填槽水洗方式、ベンチュリースクラバー方式、バグフィルター方式について種々検討を行い、バグフィルター方式を採用した煤塵除去装置を設計した。 濾過面積:34m2、処理風量:2,479m3(150℃) 処理ガス:ディーゼル排気、設計耐圧:800mmAq 長さ2.22×幅0.42×高さ0.75m [4] 配管・計装設計 模擬海中試験時に使用するカプセルの中の水系、燃料系、潤滑油系、排気系、計装空気系、電気系について、配管や配線の詳細な設計を行った。 [5] システム自動化設計 主機関の起動、停止、負荷変動に対応して、周辺機器全体を総括的に制御し、システムの自動運転を可能にするための制御系の設計を行った。 [6] 模擬海中試験モニター方法の検討 模擬海中試験を実施する場合に、オペレーターが主機関や周辺機器の状態を常に監視するための方法や、所要機器について検討を行った。モニター項目は、温度、圧力、差圧、流量、濃度、液面レベル、回転数、その他で約80点である。 (3) 試作 模擬海中試験用機器として下記のものを試作するとともに、配管改造工事、電気系改造工事、機関改造工事を行った。 [1] 煤塵除去装置 排気中の煤塵を効果的に除去し、長時間の連続稼動に耐えるためのコンパクトで高性能な、フィルター方式の煤塵除去装置を試作購入した。 [2] 液体酸素蒸発器 CCDEカプセル内で液体酸素を蒸発させ、主機関にそれを供給するためのコンパクトな液体酸素蒸発器を試作した。 [3] 制御用機器 システム全体の自動化のために必要な制御用の機器として、コンピューターやその電源、制御弁等信頼性の高いものを試作購入した。 [4] 模擬海中試験用カプセル 模擬海中試験に使用するカプセルを試作購入した。 (4) 実験 試作した機器の性能を確認調査し、システム特性の向上をはかるために、陸上で下記の模擬海中試験を行った。 [1] 機器特性及びシステム制御試験 a. 排ガス排出処理装置 排ガス中の炭酸ガスを吸収除去するのに、モノエタノールアミンの40W%の水溶液を炭酸ガス吸収液として使用した装置によって、動作流体中から炭酸ガスを吸収除去し、同時に、この吸収液より炭酸ガスを放出させる実験を行い、本装置が100%の炭酸ガス吸収除去能力があることが確認された。また、炭酸ガスを海中に放出するための炭酸ガス圧縮機を作動させ、CCDE全体の燃料消費率に及ぼす影響を調査し、220g/ps・hを満足する結果を得た。 b. 排熱回収用熱交換器性能試験 排熱回収用の熱交換器について性能試験を行い、総括伝熱係数24.6Kal/hm2℃、温度効率0.95という結果を得た。この熱交換器の熱は炭酸ガス吸収液の加熱に用いるが、十分な性能があることが確認された。 c. 排気浄化装置 排気浄化装置として試作したバグフィルター式煤塵除去装置について、性能確認実験を行った結果、200時間の連続使用に耐えることが確認された。 d. システム制御系試験 制御弁などの末端制御機器とホストコンピューターを繋ぎ、模擬入力をホストコンピューターに与えて各機器の動作を調べた。その後CCDEの運転試験において、酸素供給系の流量制御を、完全自動運転で動作試験を行い、それが確実であることを確認した。 [2] 模擬海中試験 海中での運転を模擬した試験運転を行った。特に、排ガス排出処理装置が不良になり、炭酸ガスを動作流体として使用するようになった場合についても適切に対応出来るようにした。 [3] 解析とりまとめ 上記実験データーの整理・解析を行い、とりまとめを行った。
■事業の成果
大陸棚石油資源開発等海中作業を目的とする潜水艇は、潜水時間5〜10時間で作業範囲も狭いため、海面の支援船なくしては、作業不能であり、同時に海象の影響も受けやすく稼動率が大きく制限される。そこで長期潜水、長期動力を供給することが可能なディーゼル機関の開発が要望されている。 本事業の実施により、クローズドサイクルディーゼルエンジン(CCDE)の基本装置が完成し、陸上で模擬海中試験等実験の一部を行った。小型自航潜水艇用の本機関の開発により、気象、海象に影響されない高稼動率の海中作業システムの構成が可能になり、海中での作業動力が、従来より強力、かつ長時間供給できることになるため、一度に多様かつ高能率の海中作業が可能になる。 これにより、今後小型自航潜水艇に必要とされる高性能クローズドサイクルディーゼルエンジン主機関を開発する目途がつき、わが国の海洋開発の発展に寄与することが期待される。
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