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■事業の内容

(1) 対象国
 カメルーン,コートジボアール、ガボン、ケニア、マダガスカル、ナイジェリア、シエラレオーネ、タンザニア、ザイールの9カ国
(2) 研究事項
[1] 各国における船舶需要
a. 品目別輸出入貿易量の推移
b. 貨物種類別海上荷動量
c. 船種・船型別必要建造需要量
[2] 各国カントリーリスクの研究
a. カントリーリスク諸要因の現状分析(政治・経済リスク)
b. カントリーリスクの将来動向(外貨獲得、債務返済動向)
[3] 各国の総合的市場評価とわが国の市場対策の研究
a. 新造船需要顕在化の動向(船腹拡充計画の動向)
b. 新造船対外発注の可能性(自国建造能力)
c. 対日発注の可能性
d. わが国の市場対策
(3) 各国の総合的評価等
[1] カメルーン
 同国市場は旧宗主国フランス、西独が支配しており、海運関係でも、CAMSHIPが保有している船舶は西独からのソフトローンで購入したものであり、また同社の管理・運営にあたっては西独のUNIMARが人材派遣と技術移転を行っている。
 これまで同国から多目的貨物船等の引合が寄せられたことはあるが、日本からの船舶輸出は皆無である。現在わが国の同国向け輸出信用供与は、特に制限はないが、これまで延払輸出の実績がないため、延払の場合には新たに格付けを行う必要がある。しかし、同国の実情からして、ソフトローンの供与が不可欠であり、そのためには、マッチングの弾力的運用ないし経済協力を適用してもらう必要がある。但し、経済協力による実現を図るためには、同国に日本の公館がないため、業界側で率先してプロジェクトを推進する必要がある。
[2] コートジボアール
 これまで、同国は旧宗主国フランスやスペインから船舶を購入しており、わが国の新造船輸出実績としては、1977〜78年にかけて輸銀ベースによる16,000DWT型貨物船5隻と81年に一般無償による220G/T型船員訓練船1隻がある。
 現在、わが国の同国向け輸出信用供与は、政策的に特に必要とする以外、原則として引受停止となっており、輸銀ベースでの輸出は不可能である。従って、わが国としては経済協力ベースでしかプロジェクト実現の可能性はないが、同国はこれまでフランスの支配が強く、また同国からの日本政府への要請が出にくい状況にあったが、80年以降海運関係で5件の一般無償のE/Nが締結されているので、業界の努力により船舶のプライオリティーを高めていく必要がある。
[3] ガボン
 現在、同国が保有している外航船は、東独のRostock建造の12,000DWT型貨物船2隻(1983年竣工)とフランスのCNNが保有していたものを、Elf-Gabonが購入した140,000DWT型タンカー1隻(1974隼竣工)のみである。
 わが国からの同国向け船舶の輸出実績はないが、わが国の輸出信用供与は実質的に停止されており、近々リスケになる予定であるので、コマーシャルベースでの輸出はown risk/own financeしか方法はない。一方、運輸関係のわが国の経済協力については、75年にE/Nが締結されたトランス・ガボン鉄道のプロジェクトがあるが、現在では同国の1人当りGNPが3千ドルと高いため経済協力を出しにくい国となっている。
 従って、同国向け船舶輸出を実現するためには、国際・地域開発金融機関等の資金ソースに依存せざるを得ないと思われる。
[4] ケニア
 これまで同国からは国営船社設立計画との関連で多目的貨物船やビクトリア湖の漁船等の引合いが経済協力ベースで寄せられたが、同国政府からの要請が出ないため、計画倒れに終っている。
 現在、わが国の同国向け輸出信用供与は短期案件は通常通りであるが、中長期案件については金額制限が行われており巨額案件は困難な状況にある。
 一方、同国の資金事情や経済開発計画における優先度等からみて、自国資金での船舶購入は困難と思われるので、経済協力ないし国際・地域開発金融機関等のプロジェクトとして仕組んでいく必要がある。その際、運航ノウハウ、船員教育等のソフトと併せて協力することがプロジェクトの早期実現に早道と思われる。
[5] マダガスカル
 同国は、現在第5次リスケジュール(86年4月〜87年12月)を実施しており、コマーシャル・ベースによる船舶の輸出は困難である。
 従って、同国向けの船舶輸出のためには、世銀・アフリカ開銀等の国際金融機関や経済協力によるしか方法はない。しかし、国際機関のテンダーの場合は、旧宗主国との関係の強さから、日本が落札するのは難しい場合が多い。
 わが国の新造船輸出実績としては、78年、81年にかけて輸銀ベースによる6,350DWT型Tanker1隻、5,000DWT型一般貨物船2隻、1,000DWT型Passenger Ferry 1隻、4,000DWT型Product Tanker1隻があり、81〜82年には無償によるFishing Boatがある。
 なお、10港の大規模な改修・近代化計画が進行中であるが、港によっては浚渫の強化計画もあるため、作業船の需要が若干期待できる。
[6] ナイジェリア
 同国向け船舶商談は、70年代半ばのNNSLの多目的貨物船19隻の国際商談で韓国(11隻)、ユーゴ(9隻)に敗退して以降、多目的貨物船やLNG船等の引合いが寄せられたが、コマーシャルベースでは1隻も実現しておらず、81年に水産無償による200G/T型漁業調査・訓練船が1隻あるのみである。
 国営船社のNNSLは87年度計画でバラ積船、コンテナ船、RO/RO船の購入計画、また民間船主も多目的貨物船の購入計画をもっているが、現在、わが国の同国向け輸出信用供与は、同国がリスケ国であることから実質的に停止しているため、制度金融の利用は不可能である。従って、今後の商談実現のためには、リース、ハイヤー・パーチェス等民間でも何らかのリスク・テイクをするか、経済協力ないし国際機関のプロジェクトとして取上げてもらうよう努力することが必要である。
[7] シエラレオーネ
 同国は現在リスケを実施しているが、日本は債権を有していないので、同国とのリスケをしていない。従って、政府の対応も他のアフリカ諸国とは違い比較的緩やかである。コマーシャル・ベースでの短期の少額案件については可能性があるが、中長期の案件は難しいため、経済協力または、国際金融機関のサポートを期待するしかない。
 わが国の同国向け経済協力としては、80年に400G/T型Car Ferry1隻の無償援助がある。
[8] タンザニア
 同国は、現在、第1次リスケジュールを実施中であるので、コマーシャル・ベースによる船舶の輸出は困難となっている。
 従って、同国向け船舶輸出のためには、世銀・アフリカ開銀等の国際金融機関や経済協力によるしか方法はない。
 わが国による、同国向け経済協力実績は、80年に特別円借款による1,500G/T型Cargo/Passenger Boat及び2,100DWT型Tanker各1隻があり、無償援助では、80年にFishing Boat 6隻、86年に150G/T型漁船1隻がある。
[9] ザイール
 同国には、71年に12,000DWT型貨物船1隻の輸出実績があり、その後も多目的貨物船の引合が思い出したように寄せられてきているが、ファイナンス条件や信用供与の問題から実現していない。
 現在、わが国の同国向け輸出信用供与は、同国がリスケ中であるため、引受停止となっている。従って、同国向け船舶輸出を実現するためには、リスケを実施中の他のアフリカ諸国同様に経済協力ないしは国際機関のプロジェクトとして取り上げ、その実現に努める必要がある。
(4) 報告書の印刷・配布
[1] 体裁    B5判、115頁、オフセット印刷
[2] 作成部数  300部
[3] 配布先   組合員(全メンバー及び委員)  101部
官庁              28部
関係団体            28部
海運関係(資料提供謝礼)     15部
海外業務連絡会         26部
金融機関            14部
保存活用            88部
■事業の成果

本組合は、60年度から発展途上国向け船舶輸出の可能性を探るために、発展途上各国における船舶需要を把握し、その顕在化とわが国からの輸出促進の方策とを国毎に研究する本事業を実施してきたが、本年度はアフリカ9カ国を対象として実施した。
 今回の対象国は、旧宗主国である西欧諸国の影響度が強く残っており、わが国からの船舶輸出実績も少ないが、研究の結果、程度の差はあれ船舶の潜在需要は底堅いものがあり、それをわが国の受注に結び付けるためには、現在の経済状態からして、経済協力、ソフト・ローン、マッチング等を弾力的に運用してもらうのが有効との結論に達した。
 本組合としては、今後とも本研究を継続実施して可能な限り全ての発展途上国をカバーするよう努めるとともに、本研究の成果が一層有効活用されるよう、本研究により指摘された各種市場対策の実現に向かって最大の努力を尽くす所存である。





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