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■事業の内容

(1) 海洋開発関連の国際会議・展示会への出席
[1] OTC'86調査
a. 派遣した職員の職名、氏名
深海開発技術部 網谷 泰孝
b. OTC'86会議・展示会
(a) 論文発表:49 セッション  約230論文
うち日本からの発表  17論文
(b) 展示参加:約1200社
(c) 参加人員:約40,000人
c. 海洋開発関連機関の調査
(a) ペリー・オーシャノグラフィック社
 同社における、潜水調査船当センターの開発状況について調査した。
 同社の製品は次の分野がある。
イ. 無人探査機:Triton、Challenger等
ロ. マニピュレータ付作業機:OMB
ハ. 有人潜水調査船:PCシリーズ
ニ. ダイビング{4}
ホ. 医療用高圧チャンバー
 現在の生産の主力は、無人探査機が中心で、八台が建造中であった。
(b) ハーバー・ブランチ・ファウンデーション社
 沿岸域の海洋調査及びこれに必要な機器類の開発を行っている私設の研究所で、視察した内容は次のとおりである。
イ. R/V SEAWARD JOHNSON:潜水調査船JOHNSON SEALINK母船であり、また、各種の海洋調査にも使用される。
ロ. 工場:潜水調査船JOHNSON SEALINKの整備等を行っている。
ハ. 生物関係の研究棟:魚介類の養殖を行っている。
(c) US Geologcal Survey
 米国内務省所属の地質調査所で、当地では、主として大平洋の海底地地質等に関する調査研究を行っている。
 特に、次のテーマについて調査を行った。
イ.コバルトクラストについて
ロ. グロリアを用いた、米国西海岸200海里経済水域の海底地形調査について
ハ. 東南アジアの鉱物資源調査について
ニ. 北極海の地質構造について
ホ. 南極大陸の地質調査について
へ. 熱水鉱床について
[2] ROV'86調査
a. 派遣した職員の職名、氏名
深海開発技術部 高橋 賢一
b. ROV'86会議・展示会
(a) 論文発表:6セッション、35論文
(b) 展示  :約125社
(c) 参加人員:会議 362名、  展示会 1,560名
c. 海洋開発関連機関等の訪問調査
(a) Ospery Electronics社
 同社は、浅、深海用テレビカメラシステムの製造・販売を行っており、1985年のカメラシステムの売り上げは、350台であった。今回のROV'86に展示されている各社のROV等に搭載されているカメラの大半は、同社の製品であった。
(b) サブシー・オフショア社
 同社は、海中エンジニアリングを主要な業務としており、潜水作業技術の支援に必要な装置・支援船の設計・建造も行っている。
 さらに、ROVとダイバーによる海底パイプラインの建設や、それに附帯する水中自動溶接機、検査機器等の開発も実施している。
 また、ダイバーやROVのオペレータの養成も実施しており、今後の海中技術の動向等について調査を行った。
(c) モナコ海洋博物館
 同博物館は、モナコの皇大子アルバート一世によって、1910年に建てられた世界的に有名な博物館である。
 アルバート一世は、1884年から1914年の30年間に4隻の海洋調査船を用い、28回の海洋調査を行っており、その際の各種の海洋生物の標本、調査用機器、港水装置等が展示されている。
(d) DEUTSC社
 同社は、電気コネクタ、リレーのメーカーであり、特に水中用のガラスハーメチックシールを採用した、同社独自のコネクタを製造している。
 今後、わが国でも、深深度用の潜水調査船、無人探査機などの開発に伴って必要となる水中コネクタについて調査を行った。
(e) ノルウェー海中技術センター(NUTEC)
 同センターは、ノルウェーの民間企業3社の出資による会社組織で、主要な業務内容は、次のとおりである。
イ. 潜水作業技術及び高圧生理学分野での研究開発
ロ. 潜水機器、装置の試験及び研究開発
ハ. ダイバー及び潜水要員の養成
 同センターでの潜水作業技術に関する今後の実験計画及び当センターとの共同研究の推進、研究者の交流等について調査及び協議を行い、今年度の研究者の招へいについての打ち合わせ等も併せて行った。
[3] OCEANS'86調査
a. 派遣した職員の氏名
深海開発技術部 研究副主幹  高川 真一
b. OCEANS'86会議・展示会
(a) 論文発表:57セッション、294論文
(b) 展示  :約140社
(c) 参加人員:約1,800名
c. 海洋開発関連機関等の訪問調査
(a) 国際交通博覧会
 同博覧会は、交通博覧会として開催されており、特に、海洋開発関連の展示を中心に調査を行ったが、現在、当センターで計画中の6,500m潜水調査船で使用することとしている、マスタースレーブ方式のマニピュレータが、海洋開発以外の分野でも応用されていることがわかった。
(b) International Submarine Eng.社
 1974年に設立された、カナダのROVメーカーで、同社で製作中の各種ROVを視察した。
 同社では、小型の観察用ROV“DART”〜数10kgのものから、大型の作業用ROV“TRARR”まで製作している。
 また、最新のマスタースレーブ方式のマニピュレータの開発状況についても調査した。
(c) ウッズホール海洋研究所
 同所は、米国有数の海洋研究所で、潜水調査船“ALVIN”とその支援母船“ATLANTIS<2>”を詳細に視察したほか、同船が深海用 ROV“JASON Jr”を用いて行った、タイタニック号の探査記録についても調査することができた。
 また、潜水調査船“ALVIN”は、最近、推進システムの改造をおこなっており、その技術的評価について、わが国の6,500m潜水調査船と比較しての意見交換等を行った。
(d) International Underwater Contracters社
 同社は、米国、ニューヨーク市にあり、種々の有人、無人の潜水船の運用、開発等を行っているほか、潜水訓練施設を保有し、ダイバーの訓練や、高圧治療も行っている。
 また、当センターの海中作業実験船「かいよう」と同じ、半没水型双胴船型の海洋作業船を保有しており、これらの船舶や、潜水機器システムを視察、調査した。
(e) クストー協会
 同協会は、SCUBA潜水の発明者として、世界的に有名なクストー氏が主宰する協会である。
 この協会の水中写真撮影技術は世界でも超一流と言われており、各種の写真ビデオ、写真等を見ることができた。
 また、同協会が最近完成した、最新型の帆船“ALCYONE”の概要についても知ることができた。
(f) Eastport International社
 同社は米国海軍と連携して、ROVの開発、運用等を行っており、特に、“Deep Drone”の運用で有名である。
 同機は、1983年の大韓航空機の捜索にも使用されたが、その時の経験を生かし、ブラックボックス探査装置の開発が行われている。このシステムが1985年に、インド航空機が大西洋で爆破、墜落した時の捜索に使用され、多大の成果を挙げている。
(2) 海外の研究者・技術者の招へい
ノルウェーのNUTEC(ノルウェ海中技術センター)から、潜水作業技術に関する専門家を招へいし、当センターの今後の潜水作業技術の研究開発に資するため、意見交換等を行った。
[1] 招へい者
NUTEC(ノルウェー海中技術センター)潜水技術部長
Mr. Tom Getz
[2] 招へいの内容(指導、助言を受け、意見交換を行ったテーマ)
a. 潜水実験の運用方法
b. 潜水支援船の自動船位保持装置(DPS)の運用方法
c. 飽和潜水の安全対策
d. ダイバー作業時の自動船位保持装置(DPS)の操作と緊急処置要領
e. 200m以上の水深での潜水作業技術に関する技術的諸問題等
■事業の成果

昭和61年度においては、[1]OTC'86会議・展示会及び米国の海洋開発関連機関、[2]ROV'86会議・展示会及び欧州の無人探査機開発関連機関、[3]OCEANS'86会議・展示会、米国及びカナダの海洋開発関連機関の調査等を実施し、最新の技術動向を調査した。
 その結果、当初予期した以上の技術情報、資料の収集を行うことができ、特に、現在当センターが進めている、6,500m潜水調査船の研究開発等、先端的研究開発事業の推進にとって極めて重要なデータや情報が得られた。
 また、海外からの研究者・技術者の招へいについてはノルウェーから、潜水作業技術、自動船位保持装置を装備した潜水支援船の運用手法等について評価、指導、助言を受けた。
 これにより、今後当センターで推進することとしている「かいよう」を使用した、「ニューシートピア計画」の推進に際し、貴重な情報を得ることができた。





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