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■事業の内容

(1) 航路標識機能に影響を及ぼす氷の除去対策に関する調査研究
[1] 委員会による検討と指導
 委員会を3回開催して、次の項目について検討して実験方法を指導し、成果の取りまとめを行った。
(a) 研究方針の検討
(b) 基礎資料による検討
 電力中央研究所の送電線に関する資料、海上保安庁の着氷に関する資料、外国文献等により、実験方法を検討した。
(c) 灯塔、配電線への氷の除去対策の検討
 灯塔への着氷防除機材、配電線の種類、架線方法等について検討した。
[2] 灯塔、配電線の氷除去対策現地実験
a. 現地調査
(a) 調査年月日  自 昭和61年7月21日
至 昭和61年7月23日
(b) 調査場所   北海道厚田郡厚田港付近
(c) 調査員    委託先社員  2名
協会職員   1名
(d) 調査事項   実験施設の設計を行うため、現地の状況を詳細に調査した。
b. 実験機材の設計及び設置
 現地実験のための機材を設計・製作し、又各測定機器を入手して現地実験場所に設置した。
c. 現地実験
(a) 北海道厚田港において灯塔金具及びテストピースヘ下記の氷除去対策を施し着氷軽減効果を調べた。
(イ) ネオプレンゴムの装着
(ロ) 着氷防止塗料デフロSの塗布
(ハ) 極部の電力加熱
(b) 防波堤上に4種類5本の実験用配電線を架線して着氷軽減効果及び着氷時の電線張力を調べた。
(イ) テフロンテープ被覆の電線  1本
(ロ) 相関スペーサ取付の電線   2本
(ハ) ヒレ付電線         1本
(ニ) OW電線1本
他に電柱に着氷防除帆布を装着した。
(c) 気象観測 その他
 観測室を設けて風向、風速、温湿度を観測し、又毎日、灯塔・配電線の状況を撮影した。
d. 現地実験調査
(a) 調査年月日  自 昭和62年2月12日
至 昭和62年2月14日
(b) 調査員    委託先社員   2名
委員会委員長  1名
協会職員    1名
(c) 調査事項   現地実験の着氷状況及び着氷の除去具合等を調査した。
(2) 規格、検定研究
[1] 委員会による検討
 委員会を3回、作業部会を4回開催して次の項目を検討した。
(a) 研究方針の検討を行った。
(b) 検定の運用方法に関する検討を行った。
 海上標識用灯器認定規則大綱について審議して了承を得た後海上標識用灯器規格及び型式認定規則について審議し、決定した。
 認定制度の周知について、周知内容、方法、周知先を審議し有益な助言、指導が得られた。
(c) 検定用機材整備の検討を行った。
 検定用機材は認定制定の発足に伴い、逐次整備することとなった。
[2] 検定用機材の購入
 検定用機材として下記のものを購入した。
(a) 照度計(PI-301B) 
イ. 数量    1個
ロ. 仕様
測定範囲  0.01〜300Lx
測定精度  ±3%以下
(b) 灯質チェッカ(CPD-5001) 
イ. 数量    1個
ロ. 仕様
測定範囲  灯質  0〜199.99sec
周波数 0〜19999Hz
測定精度  灯質  ±0.02sec
周波数 ±1Hz
(c) 周波数カウンタ(TR-5840改) 
イ. 数量     1台
ロ. 仕様
測定範囲  周波数   0.001Hz〜100MHz
時間測定  1μseo〜1,000sec
表示方法  カウンタ部 蛍光表示管 10進12桁
プリンタ部 印字桁 9桁
(3) マイクロ波位置測定装置の図形化表示等に関する調査研究
[1] 委員会及び作業部会の開催
 昭和61年5月27日より62年2月10日の間に委員会を4回、設標作業見学会を1回、作業部会を4回開催し、下記項目について指導・助言するとともに、研究成果の評価を行った。
(a) 研究計画
(b) 設標位置の決定要因と相関関係
(c) 補正の具体的方法
(d) 表示機能と試験装置の設計・製作
[2] 設標作業に必要な情報調査
 浮標の性質、設標作業の手順、精度の決定要素について調査するとともに設標船等の使用状況調査及び灯浮標の交換作業の実地調査を通して必要情報を確認した。
[3] 情報処理機能及び表示方式の設計
 距離測定装置の処理機能と表示について先づ確認し、前項の調査結果よりとくに潮流、風圧と設置位置の関係よりの補正法・表示の要求度順位を求めて各要素を補正値として計測するためのアルゴリズムを作成した。
[4] 集録、評価及び記録様式の設計
 設標作業のデータ、沈鍾投下時の位置データと評価等表現等を含めた設計を行った。
[5] 試験装置の設計、製作
 距離測定装置に付加するCPU、インターフェース、センサーの3基板を設計し、型を作ってからこれらの基板を作成した。さらにこれらの基板を距離測定装置と組合わせ、動作試験を行った。
(4) 走錨発生の予測に関する調査研究
[1] 委員会及び作業部会の開催
 昭和61年5月7日より62年2月24日の間に委員会を4回、作業部会を4回開催して下記項目について指導、助言をするとともに、研究成果の評価を行った。
(a) 研究計画
(b) 走錨発生の原理
(c) 走錨事例の収集と整理
(d) 走錨発生要因と相関関係
(e) シークラッター対策
(f) 走錨情報システム
[2] 走錨事例調査と各種要因分析
 航海学会その他の機関について、東京湾(7年間分) 、秋田船川港(4年間分) 及び伊勢湾台風時における走錨事例を約50例調査収集し、この事例について委員会の指導、助言のもとに学会等の研究成果等を利用して検討を実施した。
[3] 発生原理の把握
 走錨発生の原理としてまとまったものがないので関係論文や資料を調査し、錨の把駐力、錨鎖の伸出量を主題に、底質等との関連など発生原理の検討を行った。
[4] 海面反射(シークラッター)対策
前2項の研究の進展により船舶状況の把握のためのレーダーのシークラッター対策について検討した。すなわち東京工大その他の文献による各種対策案の検討評価を行い、対策として併合処理するための方案について研究を行った。
[5] 走錨注意情報の処理
 走錨要因とその相関関係より走錨発生の可能性の判定と危険状態時における提供情報のための要因の種類について研究を実施した。
(5) IALA工業会員委員会への出席及びIALA理事会の際の意見交換
[1] IALA工業会員委員会への出席
a. 工業会員委員会が62年3月6日フランス(パリ)で開催された。同委員会委員である当協会清野副会長の代理として当協会嘱託岩崎守が出席し、各国関係者と航路標識用機器の技術的な研究、開発状況について情報の収集及び意見交換を行った。
b. 期間  62.3.5〜62.3.7
[2] IALA理事会の際の意見交換
a. 第66回理事会が、61年5月8,9日カナダ(バンクーバー) において開催された。当協会から嘱託片山雅弘が政府委員の補助者として出席し、参加各国と技術上の情報交換を行い、国際的な動向把握につとめた。
 なお、題議は、下記について報告し又は討議された。
(a) 会員の資格について(入会、名誉会員、退会、除名) 
(b) 国際会議への出席について
(c) 他の国際機関との共同作業について
(d) IALA総会及びその他のIALA会議について
(e) 各種技術委員会について
(f) その他
b. 第67回理事会が61年11月19、20日フランス(パリ) において開催された。当協会から嘱託片山雅弘が政府委員の補助者として出席し、参加各国と技術上の情報交換を行い、国際的な動向把握につとめた。
 なお、題議は、下記について報告し又は討議された。
(a) 会員の資格について(入会、退会) 
(b) 国際会議への出席について
(c) 他の国際機関との共同作業について
(d) 各種技術委員会について
(e) 1987年予算について
(f) その他
c. 期間  第66回理事会
61.5.6〜61.5.11
第67回理事会
61.11.17〜61.11.24
■事業の成果

(1) 航路標識機能に影響を及ぼす氷の除去対策に関する調査研究
 寒冷地における航路標識は冬期間氷雪等が付着して航路標識としての機能及び点検作業に重大な影響を受けている。この着氷防止対策のため灯塔の金具類に施した3方式の内、ゴムを装置したもの及び塗料を塗布したものは着氷量の差が殆んど見られず、波しぶきや形状等の違いで着氷の状態が大きく左右されるが、極部の電力加熱のものは着氷が殆ど見られず極めて有効であることが分った。
 配電線については、一般に陸上の着雪に有効であろうと考えられる4方式について実験した結果、着氷の程度は各方式ごとに若干の差異が認められ、断線時刻に少し早い遅いの差ができたが、いずれも1日足らずの間にすべて断線した。このことから着氷地域での防波堤の配電線には有効な着氷防除の方法は見当らず、今後は外観上からも堤上埋設による配電線方式を進めることが有利であると考えられる。
 今回の現地実験により着氷に関する貴重なデーターが得られたので、今後の着氷雪に関する調査研究には本事業の成果が充分役立つと考えられ、寒冷地における船舶航行の安全に寄与できるものと確信する。
(2) 規格検定研究
 現在、相当数利用されている海上標識の灯器部分の規格が定められ、従来製造メーカでまちまちであった性能値や、表示方法等が規格化されたので、メーカは製品製造上の規範を得ることが出来、又今後検定制度が導入されれば、船舶交通の安全と設置管理者の利便を図ることとなり、もって船舶の航行の安全に寄与するものである。
(3) マイクロ波位置測定装置の図形化表示等に関する調査研究
 本事業により設標位置測定装置に要求される表示様式、操作手順を明確にし、a.プログラムの増加に対処するため32KバイトのROMとするとともにクロック周波数を8MHzとし、b.操作性を向上させるためのセンサーボード、c.信号の入出力回路のインターフェイスボードを作成し距離測定装置との実働試験に成功した。この研究を基礎にして、マイクロ波位置測定装置の図形化表示実用化が実を結ぶことにより、海難防止に寄与するところ大なるものがある。
(4) 走錨発生の予測に関する調査研究
 走錨事例は予期以上の件数について調査できたが、これを検討した結果、走錨は船型、錨鎖長と地形、底質、風等の自然環境とに強い関連があることが明確にされた。しかし、例外と思われる事例もあり、また対象船舶の荒天時の態勢や通信体制等にも大きく左右されるので要因の相関関係はより広範囲に検討する必要がある。
 本年度走錨発生の要素となる情報の種類をまとめこれを直接要因と間接要因とに区分したが、要因によって走錨に与える影響に差異があるので、今後各要因の影響度による重み付けをし走錨発生度が得られれば有効情報となり海難防止に寄与するところ大なるものがある。
(5) IALA工業会員委員会への出席及びIALA理事会の際の意見交換
 IALA工業会員委員会及びIALA理事会へ出席し、参加各国の関係者と技術上の意見交換を行ったことは、国際的な動向を把握することができ、我が国の技術水準の向上に大いに寄与するものである。





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