
■事業の内容
(1) 対象国 エジプト、リビア、チュニジア、アルジェリア、モロッコ、メキシコ、キューバ、ドミニカ、ジャマイカの9カ国 (2) 研究事項 [1] 各国における船舶需要予測 a. 品目別輸出入貿易量 b. 貨物種類別海上荷動量 c. 船種別必要船腹量 (保有船腹量、喪失・解撤船腹量、発注済船腹量等の現状分析を含む。) d. 船種・船型別必要建造需要量 [2] 各国カントリーリスクの研究 a. カントリーリスク諸要因の現状分析(政治・経済リスク) b. カントリーリスクの将来動向(外貨獲得、債務返済動向) c. カントリーリスクの総合的評価 [3] 各国の総合的市場評価とわが国市場対策の研究 a. 新造船需要顕在化の動向(船舶拡充計画の動向) b. 新造船対外発注の可能性(自国建造能力、中古船購入の動向) c. 対日発注の可能性(競争相手国との競合状況等) d. わが国市場対策 (3) 各国の総合的評価等 [1] エジプト エジプト海運は既に一定のレベルに到達しており、海運政策遂行能力も着実である。今後ともバラ積船・定期貨物船を中心に需要はコンスタントに発生すると評価できる。累積債務問題を抱えているものの欧米諸国の援助を軸とした安定性を有しているので,わが国としてはソフトローンを含めた延払輸出の促進に積極的に取組むべきである。 [2] リビア 唯一の輸出産品といって良い石油の輸出が市況の低迷と米国の経済制裁によって不振を極めており、かつ現有船腹量もかなりあるため、今後新規の需要は当分の間望み薄である。また国際テロ問題によって西側先進国の経済制裁も強化される可能性が強く、カントリーリスクの不安要因が多い。今後は東欧諸国とのつながりがますます強まるものと思われる。 [3] チュニジア これまで主流を占めていた石油の輸出は今後減少の一途を辿るが、燐製品の輸出や硫黄・穀物の輸入の増大に伴い、一般貨物船やバラ積船の需要が増加している。カントリーリスクも発展途上国としては一応安全圏にあるので、わが国としては船舶関係プロジェクトの発掘や延払輸出の促進に努力すべきである。また海運の育成についてはわが国が協力できる十分な余地がある。 [4] アルジェリア 原油輸出は減少に向うものの石油製品・LNG、鉄鉱石の輸出、穀物・鉄鋼・セメント・石炭の輸入増によってプロダクトキャリアー、LNG船、乾貨物船の需要が高まっており、中でも一般貨物船、バラ積船の整備は急務である。政府の経済運営の堅実さについては西側諸国でも定評があり、豊富な輸出資源を背景としてポテンシャリティは大きい。国営海運の育成に対する技術協力やソフトローンを含む延払輸出の促進については積極的な姿勢が必要である。 [5] モロッコ 燐鉱石及び同製品の輸出の増加を背景とし、かつ現有船腹量が少ないことから、一般貨物船・バラ積船の需要が高まっている。但し、西サハラ戦争をはじめとするカントリーリスク要因が多くあり、現在実施中のリスケジュールは更に長期に亘る可能性が高い。わが国としては外貨獲得産業の有力プロジェクトに対する経済協力に前向きに取組む必要がある。 [6] メキシコ 豊富な天然資源を背景として、成長のポテンシャリティは極めて大きいものがあり、船舶の需要も内航タンカー、プロダクトキャリアー、一般貨物船を中心に高まっているが、現状は一時の石油開発関連の過剰投資によって厖大な累積債務を抱え、多年度一括リスケジュールの実施など国際収支面で困難な局面を迎えている。わが国としてはメキシコの長期的なポテンシャリティを考慮して、計画的な輸出信用供与および政府開発援助システムを作りあげていく必要がある。 [7] キューバ 砂糖輸出用の貨物船、漁船等の需要が高まっているものの、最大の輸出産品である砂糖の低迷によって国際収支は悪化、現在リスケジュール実施中である。但し、キューバの対外返済ビヘイビアーが優良であり、同国の国際収支改善の鍵が西側諸国との貿易拡大にある点を考慮して、わが国としては貿易協定等により取引枠の拡大を図るべきである。 [8] ドミニカ 貿易量の規模は小さいものの保有船腹自体が少ないため、全船種に亘り船腹不足であり、船腹拡充の願いは切なるものがある。対外累積債務の増大によって現在リスケジュール実施中であるが、わが国としてはドミニカ海運の基盤強化や船舶の供与について政府開発援助の増加に努めるべきである。 [9] ジャマイカ ボーキサイト・アルミナの産地として世界有数の国であるが保有船腹量が極めて少なく、それらの輸送はほとんど外国海運に依存している。また対外累積債務も大きく現在リスケジュール実施中である。わが国としては政府開発援助を通じて、海運の育成という初期の段階から、同国市場を開拓していく必要がある。 (4) 報告書の印刷・配布 [1] 体裁 B4判 146頁 オフセット印刷 [2] 作成部数 300部 [3] 配布先 組合員(全メンバー及び委員) 120部(80部) 官庁 27部 関係団体 71部 運輸関係(資料提供謝礼) 15部(15社) 海外業務連絡会 27部 金融機関 14部 保存活用 26部
■事業の成果
本事業は発展途上国の船舶需要とカントリーリスクとを科学的に究明し、これまでややもすれば過大視もしくは過少視されがちであった発展途上国の評価を適正なものとし、当該国市場の問題点と対策とを見出そうとするものであり、今日の厳しい国際海運マーケットの下において、長期にわたる不況を余儀なくされているわが国造船業にとって極めて有効な資料となり、今後、発展途上国の船舶需要を喚起せしめ、日本船舶の輸出振興に寄与するところ大なるものがある。
|

|