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■事業の内容

イ. 都市経営解析・実験システムの研究開発
(1) モデルの設計
 昭和55年度の研究において設定した枠組み、すなわち、都市行政におけるゲーミング・シミュレーションの開発から運営に移行するまでの全体手順を基に、試作システムの開発に必要なモデルの設計を行った。
(2) 試作システムの開発
 都市の住み心地の良さの改善について知見を得ることを目的とした試作システムU-AIM(Urban-Amenity Improvement Maneuver:都市快適性改善演習ゲーム)を開発した。
 このゲーミング・シミュレーションを通じて、次のような都市経営感覚を養う効果を期待できる。
ア 分析力………情報の分析、構造の分析
イ 思考力………目的・手段(原因・結果)の適合性・整合性
ウ 調整力………対立要素の調整、協調への誘導
(3) 実施マニュアル(手引書)の作成
 U-AIMの運用に参加する運営者(ディレクター)及び参加者(プレイヤー)に必要な手順とルールを定めマニュアルを作成した。
(4) 海外調査
 9月に欧米諸国の代表的な公共団体、大学並びに研究機関を対象に、欧州班、米国・カナダ班を編成し、都市経営解析・実験システムの開発の実態と利用状況を調査し、資料の収集を行い、本システムの開発に活用した。
ロ. 漢字住所マスター提供システムの研究開発
(1) 住所コード標準化の調査研究
 全国的に統一された町・字・丁目等の住所コードが未整備であったので、現在JIS化されている都道府県及び市区町村コードに加えてこれらの住所コードを設定するために町・字地名の複雑な市を対象にコード体系の設定状況、地名の数及び、住居表示の改定に伴う変更情報の発生の状況等を主に調査し、コード体系を検討するとともに標準化を図るための研究を行った。
(2) データの収集、蓄積、変換及び選拓方法の調査研究
 住所情報を扱う専門機関からデータを収集したほか、全国の市町村に対して町・字地名一覧表の提供を依頼し、正確な地名の収集を行った。
 このようにして収集したデータを基に文字数及びコード体系等の分析を行い、収録基準及びテープフォーマット等の設定を行うとともに初度マスターを作成した。
 また、その後に発生した変更情報を修正、追加、削除等、更新処理を行い、最終マスターを作成した。
(3) 一元的データ処理システムの研究開発
 町・字地名等の変更、削除、修正が生じた場合、新旧のデータのチェックを行いながら必要に応じて新しい住所コード及び郵便番号等を付与し、更新処理を行うとともに最新のカナ・漢字住所マスターを維持、管理するための一連のシステムの研究開発を行った。
ハ. 法人事業税の業務処理方式に係る研究開発
(1) 申告書様式の調査研究
 申告書様式の統一に当たって、各地方公共団体における法人事業税・法人住民税に係る事務処理の現状を実態調査し、資料の収集を行った。
(2) 電算入力統一様式の設定
 地方公共団体の事例等を参考に、申告書様式の統一及び電算入力項目等について検討し、入力様式の設定を行った。
(3) 申告書データチェックシステムの設計
 決定された入力様式に基づくデータチェックシステムの詳細設計を行い、仕様書を作成した。
(4) プログラムの開発
 プログラム仕様書に基づいて効率的な手法を用い、各地方公共団体が共通して利用できるプログラムを開発した。
ニ. コンピュータシステムに関する教育研修
 本年度実施した研修は、管理者研修、コンピュータ利用技術研修、コンピュータ委託処理専門研修、トピックス研修及び地方研修の5コースから構成され、受講対象者も管理職を始め、上級者から初級者までを対象として幅広い研修を実施した。
 開催期間は、4月から翌年3月までの期間において東京、地方を通じて73回の研修を開催し、受講者数は延べ4073人となっている。
 研修内容及び実施結果は次のとおりである。
(1) 管理者研修
 管理者を対象としてコンピュータの活用面、基礎知識の向上及び管理者の役割等について認識を深めることを目的とした研修
10回   522名
(2) コンピュータ利用技術研修
 実務者を対象としてコンピュータ活用に必要な技術、各種システムの開発に必要な技法及び地域社会における諸問題を分析、計画するための基礎的理論、手法等の習得を目的とした研修
28回  1400名
(3) コンピュータ委託処理専門研修
 地方公共団体において単独又は共同で民間計算センター等にコンピュータによる業務処理を委託する場合併ける基本的な事項及び実力処理の方法、留意事項等について習得することを目的とした研修
2回   44名
(4) トピックス研修
 コンピュータ情報処理技術等に関連する重要を課題及び新しい情報をトピックス的に取り上げ、1日から2日間程度の日程で随時実施し、地方公共団体の職員情報処理に関する知識向上を目的とした研修
6回   491名
(5) 地方研修
 市町村職員を対象にコンピュータ利用に関する正しい認識、利用技術等の習得を目的とし、地方に出向いて都道府県を単位として開催する研修
27回  1636名
■事業の成果

イ. 都市経営解析・実験システムの研究開発
 都市における行政需要の多様化、複雑化に伴い、効果的で均衡のとれた都市政策の立案、実施が重要視されている。
 これらの計画策定に当たっては、総合的な施策樹立の見地から検討することが極めて重要である。
 本研究では計画立案能力の向上を図る一つの手段として最近注目されてきている、種々の政策の相互関連を把握するために模擬実験が行えるゲーミングシミュレーションを利用し、最適案を見出す方法を開発したものである。
 このシミュレーションを地方公共団体の教育研修の場で活用することにより、分析力、思考力、調整力といった都市経営感覚を養うことにより行政効果の向上を図ることが大いに期待され各地方公共団体でも早期活用を望んでいる。
ロ. 漢字住所マスター提供システムの研究開発
 地方公共団体におけるコンピュータ処理のうち住民票の作成、諸証明の発行、各種台帳の管理及び納税通知書を始めとする通知文書等の作成に漢字情報処理システムが利用されており、いわゆる公文書の多くは漢字を必要とすることから漢字情報処理システムに対する関心と認識が深まっている。
 地方公共団体におけるこうした業務の多くは住所データが不可欠かつ重要な要素でもあるため、地方公共団体から共通的に利用できる全国の漢字住所マスターの整備を求める要請が強いことから、全国の市町村の町・字・地名データ及び住所コード並びに郵便番号をも付与した漢字住所マスター提供システムを研究開発し、カナ・漢字マスターを作成したものである。
 本研究の成果を地方公共団体が活用することにより、経費や労力等の多重投資を防止できるとともに行政事務におけるコンピュータ処理効率の向上が期待されるものである。
 各地方公共団体から利用したい意向が非常に高い。
ハ. 法人事業税の業務処理方式に係る研究開発
 法人事業税・法人住民税の事務をコンピュータ処理する地方公共団体が急速に増えているが、各団体が独自の処理方式を採用しているため、申告書も団体ごとに異なっている実情にあったが、納税義務者の申告事務の負担を軽減するため、今回、全国統一の申告書様式が制定されることとなった。この制度改正に対応して、既に法人関係税のコンピュータ処理を行っている都道府県及び市町村が、それぞれの負担において新システムヘ移行することは、期間、費用等の面から望ましいことではない。
 本研究開発事業において作成したプログラムを地方公共団体が活用することによって、各団体は経費の節減と円滑な業務処理が図られることとなり、その効果は非常に大きいものである。
ニ. コンピュータシステムに関する教育研修
 本研修は、地方公共団体の実施事例を主体に実務に役立つ研修テーマ取り上げていること、また、当センターが保有する3台のコンピュータを駆使して受講者の希望に合わせた機種により実習できることが大きな特徴である。
 今年度の実績は、73回のセミナーを開催し、受講者が延べ4073人を数え各地方公共団体からも、大いに研修効果が期待され好評をはくしている。





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