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■事業の内容

(1) 地震に伴う津波に対する安全防災対策の調査研究
[1] 津波来襲時における港湾の安全防災対策に関する研究
A 予想される東海地震によって発生する津波に対して、清水港・田子の浦港・焼津漁港を対象に、港内に停泊している船舶の安全対策を主体として、港湾の安全対策を調査研究し、大規模地震対策について検討した。
B 委員会を開催し、調査研究方針を決め、作業部会で具体的な調査・検討を行い、その成果をとりまとめた。
C 作業部会で次の事項について検討した。
a 津波の状況
b 岸壁係留船の安全性
c 浮標係留木材船の安全性
d 錨泊の安全性
e 沖田小型船の安全性
f 警戒宣言発令後の安全対策
g 事前の安全対策
D 津波対策港外避泊船の耐波性に関する計算を行った。
E 現地関係者の意見等を聴取するため、事務局職員による清水港の現地調査を行った。
F 昨年度の中間報告を含めて、本年度の報告書を作成した。
注: 一部委員による大船渡・釜石方面の現地調査は、文献等で状況把握ができたので取り止めた。
・ 委員会名  津波対策研究委員会  2回
 同   作業部会  4回
(2) 船舶の積載物による災害防止に関する調査研究
[1] 港別法上の危険物の安全、防災対策に関する調査
[2] 危険物積載船舶の海難事故調査
A 委員会を開催し、本年度の調査研究方針を決め、次の事項について検討を行った。
a 少量危険物の危険性の判断基準
b 溶融状態における危険物の危険性の判断基準
B 危険物の品名別手引データシートの作成を行った。
C IMCOの船積危険物の事故時の応急処置表のほん訳改訂を行った。
D ロイド海難週報から危険物による事故及び危険物積載船(タンカー等)の事故について調査した。
・ 委員会名  危険物研究委員会  6回
(3) 小型漁船におけるマン・マシン・システムとしての安全性に関する調査研究
[1] 小型漁船のマン・マシン・システムの実態調査
[2] 小型漁船の海難とマン・マシン・システムとの関連の調査
A 委員会を2回開催し、調査方針をきめ、委員会で定めた、「漁船実態調査表」「一人乗り漁船調査表」の調査結果について、検討し取りまとめた。
B 第一管区海上保安本部海難調査票により、一人乗り漁船等の船舶海難及び人身事故の内容を分析調査した。(53年〜56年の4カ年間)
C ごく少人数(1人〜数人)の漁船(いか、たこ、かれい、まぐろ、帆立漁業)について、函館、積丹、宗谷、留萌地区において現地調査を行った。
(注) 当初計画では函館、白糖、網走地区で実施することにしていたが、委員会で検討の結果、函館、積丹、宗谷、留萌地区に変更して実施した。
D 函館地区において転覆海難(1人乗船)、稚内地区において乗場海難(2人乗船)について事情聴取し海難とマン・マシンとの関連について調査した。
・ 委員会名  小型漁船におけるマン・マシン・システムとしての安全性に関する調査研究委員会  2回
(4) 狭水道における船舶交通の実態調査及び解析
[1] 通航船舶の観測
[2] 運航船舶の観測結果に関する処理及び解析
A 委員会を開催し、調査方針と作業方針を決め、観測及び解析について検討を加えながら調査を行った。また、航路が井桁状に交差している備讃瀬戸東部海域において観測された船舶の避航状況について解析した。
B 下記の2海域において目視及びレーダーによる船舶交通の実態について観測を行い、その資料に基づき各海域ごとに航跡、密度分布、速力分布、ゲート別隻数分布等について解析し、検討を加えた。
a 備讃瀬戸東部  (3日間、調査員5名)
b 関門海峡西部  (3日間、調査員5名)
C 目視観測による資料の集計及びレーダー観測による資料との照合(一部電算機処理による)を行った。
D 関門海峡西部における船舶交通の実態調査は本委員会の設置以来初めてのことなので、同海域における地形や海上交通の状況等を直接見聞するため委員等全員の参加を得て現地調査を実施した。
・ 委員会名  海上交通実態調査委員会 4回
(5) 海上交通環境の整備に関する調査
[1] 海上交通環境整備の基本的事項に関する調査
A 委員会による調査研究
B 資料の収集
a 委員会を開催して、海上交通環境の整備に関する各事業について総合的かつ大局的見地から審議するとともに、幹事会を開催して委員会の事務を推進した。
b 漁場標識の統一化及び漁業操業の周知宣伝方法に関する検討方針について海運・水産関係団体連絡協議会に提示する等各事業項目の調整を図った。
c 海洋プレジャーの現状及び安全確保上からみた漁業操業実態等の資料を収集した。
・ 委員会名  海上交通環境調査委員会  2回
同     幹事会  3回
[2] 船舶交通と漁業操業に関する諸問題の調査
A 海運・水産関係団体連絡協議会の開催
B 海域別の海運・水産関係団体連絡協議会による現地の実情調査及び研究
C 海運・水産の相互理解を深めるための水産関係者による体験航海及び海運関係者による漁業操業の調査
a 協議会を2回開催し、本事業の運営方針及び要領を検討するとともに、事故防止のため、漁業標識の統一化及び漁業操業に関する周知宣伝方法について検討し、実施方針について海運・水算関係者の一致を得た。
b 地域的な問題点の抽出と検討を行うため、東京湾及び伊勢湾協議会(海域別協議会)をそれぞれ東京及び名古屋で開催し、主として前項の問題点を検討した。
c 海運・水産関係者の相互理解を促進するため、水産関係者による体験航海を次のとおり実施した。なお、海運関係者による漁業操業実態の調査は、実施予定日の海象が不良であったので中止した。
○ 日時    56.6.24〜25
○ 船名    新さくら丸(13,082総トン)
○ 航路    百貫島(備後灘)〜神戸
○ 参加人員  17名
・ 委員会名  海運・水産関係団体連絡協議会     2回
東京湾海運・水産関係団体連絡協議会  1回
伊勢湾海運・水産関係団体連絡協議会  1回
[3] 東京湾情報システムに関する調査研究
A 委員会及び作業部会による研究
a 委員会及び作業部会を開催し、調査方針を決め、作業部会で具体的な検討を行った。
b 委員会においては次の事項について検討した。
(a)有効な情報連絡方法及び情報連絡のための機器に関する検討
(b) 東京湾海上交通センターの情報の利用に関するアンケート調査についての調査方針の基本事項の検討及び調査解析結果についての情報システム上の問題点の検討
(c) 本年度の中間報告のとりまとめ。
c 作業部会においては次の事項について検討した。
(1) アンケート調査の調査内容、実施要領の検討
(2) アンケート調査の集計方法、解析項目の検討及び作業
B 東京湾航行船舶等に対する情報システム上の現状及び問題点に関する調査
a 東京湾海上交通センターの情報の利用に関するアンケート調査票
3,000部を印刷し、商船、漁船、遊漁船に配布し有効回答876部を回収した。
b 質問項目42項目について解析作業を行い、東京湾航行船舶等に対する情報システム上の現状を明らかにした。
c 調査結果にもとづく、情報システム上の問題点を抽出し、今後、対策を講じて行くこととした。
・ 委員会名  東京湾情報システム調査研究委員会  2回
同     作業部会  3回
[4] 来島海峡における航法に関する調査研究
A 委員会による調査研究
B 来島海峡における航法等に関する資料の収集及び整理、解析
C 現地調査及び委員会の開催
a 委員会による調査研究
 委員会においては、各種の既存資料等に基づき来島海峡の航法に関して次の調査検討を行った。
(a) 潮流の方向によって異なる航法をとるに至った沿革
(b) 来島海峡及びその付近海域における衝突、乗揚げ海難の実態
(c) 通航船舶及び操業漁船の実態
(d) 水路環境状況
(e) 操船者の意識
(f) 強潮流中における船舶の操縦性
b 来島海峡の環境及び航法等に関する資料の収集、整理、解析委員会の検討に資するため、来島海峡の潮流の本流、渦流、湧昇流、わい潮等の環境及び一般船舶、漁船の通航、操業、海難の実態等に関する資料を収集し、整理、解析した。
c 来島海峡の現地調査
 来島海峡の大潮時における強潮流の時機を選定して、委員等による現地調査を行い、巡視船の便宜供与を受けて中水道、西水道の潮流の状況及び船舶の通航状況等を調査した。
・ 委員会名  来島海峡航法調査研究委員会 4回
[5] 国際浮標式の導入に関する調査研究
A 委員会による調査研究
a 日本において、今後採用する側面標識の浮標式方向について検討し、委員会の意見をとりまとめるとともに、浮標式方向の逆転する海域についての措置対策を審議した。
b 海外における実情調査について調査方法、調査項目等を検討し、調査結果について審議した。
c 性能野外実験の実験方法、実験内容等を検討し、実験結果について、委員会の意見をとりまとめた。
d 標識種別の選択基準について、各標識の使用目的、選択して使用する場合の基準について検討し、修正側面標識の不採用、安全水域標識の燈質の採用基準、追加特殊標識の種類、海交法及び行政指導に関連する標識の取扱い等について委員会の意見をとりまとめた。
e 変更工事の実施計画の基本事項について検討し、問題点について要望意見をとりまとめた。
f 変更工事の周知方法について、検討し、周知の迅速徹底をはかり、利用者の混乱を防止する対策について要望意見をとりまとめた。
B 性能実験の実施
a 新浮標式の導入にあたって、使用される紅、黄、緑の3色の表面色について、野外視認実験を行い採用すべき標準色度及び許容範囲を決定した。
b 方位標識、孤立障害標識、修正側面標識、安全水域標識の2色塗り分け区画について、パネルによる陸上視認実験実物標体による海上視認実験を行い委員会の意見をとりまとめた。
c 頭標の形と大きさについて、円錘形、円筒形、球形、X型及び円錘2個形、球2個形について海上視認実験を行い、委員会の意見をとりまとめた。
C 海外における実情調査
a 調査員3名により英仏両国の航路標識及び水路機関、現地事務所を訪問し、英仏両国が1976年IALA浮標式“A”を採用した当時の行政上、技術上の対応措置及び標識の現状を調査した。
b 調査した項目は次のとおりである。
(a) 新浮標式規則の統一解釈、運用選択の基準
(b) 設置運用上の問題点と対応措置
(c) 変更実施計画の立案、混乱を避けるためにとった措置
(d) 周知の徹底のための措置
(e) 実施後生じた問題点、利用者の反響意見
(f) 技術上の規格基準
C 調査結果を報告書として取りまとめ、入手した資料写真等を翻訳整理し、爾後の委員会の討議の基礎資料とするとともに、官側に提供して、参考に供した。
・ 委員会名  国際浮標式調査研究委員会  4回
[6] 電光表示方式による航行情報提供システムに関する調査研究
A 委員会による調査研究
B 性能実験の実施
a 委員会を開催し、調査研究方針を検討するとともに、電光表示方式の現状に関する調査及び海上における電光表示方式の問題点に関する研究を実施した。
b 電光表示方式の見え方特性に関する室内実験を行い、委員会の検討に資した。
・ 委員会名  電光表示方式調査研究委員会  3回
(6) 国際海上衝突予防規則に関する調査研究
[1] 国際海上衝突予防規則及び同国内法改正に関する問題点の検討
[2] IMCO会議への参加
A 国際海上衝突予防規則及び同国内法改正に関する問題点の検討
 1972年国際海上衝突予防規則の一部改正に関するIMCOの動向に対応して、関連資料を収集整理し、委員会において同規則改正上の問題点及び各国の意見等について検討した。
 また、上記検討の結果をふまえて、国内法改正にあたっての問題点を検討し、要綱案の審議を行った。
B IMCO会議への参加
 昭和56年11月開催のIMCO第12回総会、第45回海上安全委員会及び昭和57年2月開催の第26回航行安全小委員会に当協会職員2名を各会議に派遣し、本会議及び作業部会等に出席のうえ、国際海上衝突予防規則の改正作業に当るとともに関係資料の収集を行った。
・ 委員会名  国際海上衝突予防規則調査研究委員会  4回
■事業の成果

海難発生の原因は、極めて複雑多岐にわたっており、いくつかの発生原因が複合的に作用して発生するもので、海難防止対策は総合的に行い、その実効を期す必要がある。
 本事業は、海難の発生原因をあらゆる角度から調査研究し、船舶等の安全対策の確立に役立てるもので、本年度は下記の項目について実施し安全基準の資料とし又海運業界、港湾業界、化学工業界、貿易業界等の安全対策の向上に大いに役立つものである。
[1] 地震に伴う津波に対する安全防災対策の調査研究
[2] 船舶の積載物による災害防止に関する調査研究
[3] 小型漁船におけるマン・マシン・システムとしての安全性に関する調査研究
[4] 狭水道における船舶交通の実態調査及び解析
[5] 海上交通環境の整備に関する調査
[6] 国際海上衝突予防規則に関する調査研究





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