
■事業の内容
外航大型船における超粗悪燃料油使用に関する調査研究 [1] 超粗悪燃料油対策の調査 (1) 外航大型船における燃料油性状と燃料油に起因すると思われる障害発生との因果関係の資料調査。 A 船主協会加盟各社外航大型船の燃料油に起因すると思われる障害例152件について燃料油性状との因果関係を調査。 a. 主な障害発生機器:ディーゼル主機51%、清浄機15%、こし器10%、発電機6%等、 b. 主な障害内容:スラッジ異常析出19%、こし器閉塞18%、燃焼不良16%、燃料ポンプ固着9%等。 c. 障害発生時の燃料油性状:C重油 300cSt以上 11.2% 200〜300cSt 21.9% 150〜200cSt 36.0% 150cSt未満 18.5% A重油 12.4% B 輸出外航大型船の燃料油起因の障害例78件について使用燃料油性状との因果関係を調査。 主な障害内容:燃料ポンプ固着36%、ピストンリング摩耗・切損24%、シリンダライナー異常摩耗14%、こし器閉塞10%等。 (2) 船内燃料油関連機器に対する要求仕様の資料調査とディーゼル機関に対する要求仕様の資料調査及びこれ等の相互調整とりまとめ 船内燃料油関連機器の仕様、ディーセル機関の仕様及び燃料油の動向に関する資料・文献100種を調査し、燃料油前処理装置の燃料油高粘度化、高比重化、触媒粒子対策とディーゼル機関の燃料油粗悪化対策を相互に検討し現状での調整とりまとめを行った。 [2] 超粗悪燃料油使用のための実験研究 (1) 各種清浄度の試験油の実験室的製造 供試超粗悪燃料油(FCCタール・ビスプレーカボトム基材)を実船用SJ3000型清浄機により3種の清浄条件で清浄し、得られた3種の清浄度の試験油中の触媒粒子粒径分布を遠心分離法及びフィルタ法で求めた。 遠心分離法用小型油清浄機の要目 型式:シャープレスペンボルトTI型 保有液量:197cm3 最大回転数:50,000rpm (2) 各種燃料油の熱力学的基礎データを得るための実験室実験 A 供試燃料油:常圧蒸留残渣油基材油2種 ビスブレーカボトム基材油2種 ビスブレーカボトム及びFCCタール基材油2種 B 供試油の熱安定性 6種の供試油を12時間及び48時間140°に加熱、加熱前後のn-ヘキサン液不溶解分の増減量測定及び光学顕微鏡による粒子増加の観察。 C 清浄器で除去されたスラッジの性状 6種の供試油を清浄機で清浄し分離されたスラッジの重量、比重、流動性、粘度及び灰分を測定。 (3) タンク内・配管内加熱方法に関する模型実験 A モデルタンク実験装置 寸法:1m×0.62m×0.236m(角形、前面ガラス板) B 配管内加熱実験装置 寸法:長さ3m、三重管 C 供試油 高粘度重油、FOCタール・ビスプレーカボトム基材油(超粗悪油)、タービン油(基準油)の3種。 D タンク内加熱方法の模型実験 モデルタンク内の供試油をタンク内設置の蒸気加熱管で加熱。タンク内9点での油温計測及び赤外線カメラによる温度分布計測。 E 配管内加熱方法の模型実験 一定温度の供試油をモデル配管に一定流量で流し、一定圧力・一定温度の蒸気で加熱。モデル配管内壁3点、加熱前後の供試油温度を計測。 第185研究部会 10回(1回) (うち地方開催)
■事業の成果
船舶燃料油は石油需給の逼迫に加え、原油の重質化、石油製品需要の軽質化、石油精製法の変化等に伴い急速に高粘度化、粗悪化するものと予想される。特に燃料補給を国内のみならず海外でも行うことの多い外航大型船においては接触流動分解残渣油や熱分解残渣油を基材とした劣悪な性状の燃料油の使用を余儀なくさせられることが考えられ、ディーゼル機関、関連機器、配管、タンク等を含む燃料システムに重大な影響を及ぼすものと予想される。そこで技術的・経済的観点からも最も効果的な超粗悪燃料油使用対策を確立するため本調査研究を3カ年計画で開始し、その第1年度にあたる本年度研究の結果、外航大型船における燃料油に起因する障害の実態及びこれに対する機関・関連機器等の使用対策の実状が把握され、また、実験研究により超粗悪燃料油清浄方法及びタンク・配管設計に関する基礎データが得られた。これ等の成果は、造船業界・海運業界及び関連業界が超粗悪燃料油対策を確立する上で極めて有用なものであると考えられる。
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