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【「海の日」の総理大臣声明継続を】
??国際海事社会の中で海国日本が果たす役割は大きいと思うが、日本財団の取り組みの現状は。
「私たちはこれまで『海洋日本』『海運大国』『造船大国』という言葉を何となく使ってきたが、実際には中身が伴っていなかった。私は海の恩恵に感謝するという姿勢がすべての基本と考え、『海の日』に総理大臣からメッセージを発してもらうよう働き掛けを続け、時間はかかったが、ようやく実現した。総理大臣が海に対する思いを述べ、それを国民に理解してもらい、共通認識を持つことが重要だ。そこから子供たちに海のことを教えたり、知らせたりする基本が形成される。『海の日』の総理大臣声明はこれからも毎年続けてもらいたい」
【海洋基本法の制定に向け支援】
「もう一つは海洋基本法制定に向けた取り組み。国会議員を中心とした海洋基本法研究会が設置され、海洋政策研究財団が事務局を務めている。日本の海洋政策は9省庁11部局にまたがっており、個別省庁による立法化は不可能だ。来年の通常国会提出に向けて議員立法による海洋基本法案が現在検討されている。総合的な海洋政策の欠落は、国づくりのいわば盲点となっており、それを埋めるのが日本財団の役割だ」
??海洋基本法の議論は当初の海洋権益保護や海洋管理から、海洋科学技術の推進、海洋産業の振興、自国海運・船員の必要性などに広がりをみせている。ある程度整理する必要があると考えるか。
「それはまだ、もう少し先に進んでから議論していきたい。『そんなことを検討してもうまくいくわけがない』と高みの見物をしていた人たちが『どうやら前に進みそうだ』とあわててバスに乗り込んできたのが現状であり、それはそれで結構なこと。多くの人たちが真剣になってきたことは大変好ましいことだ」
??海事・海洋活動で国際社会に発信していることは。
「新しい海事社会への改革に向けて『海の利用は伝統的にただでいいのか』と問題提起している。『マラッカ・シンガポール海峡の通航はただでいいのか』と長年言い続け、ここにきていい方向に進み出している。先般の政府間協議では利用国と沿岸国の協力が確認され、来年3月には民間だけの国際会議を開催し、マラッカ・シンガポール海峡の安全・環境を維持するための仕組みを具体的に構築する予定だ。マレーシア、シンガポール、インドネシアのシンクタンクに呼び掛けて研究してもらい、その成果を沿岸諸国の意見として国際社会に発信してもらう。『海はただ』という通念に対し新しい概念を打ち立て、海運会社のCSR(企業の社会的責任)の一環として安全な航行や海洋環境の保全に代価を支払う仕組みが必要だ」
【海洋環境保護へ人材育成を提言】
??昨年のIMO(国際海事機関)会合で国際海事社会のための人材育成について政策提言した。
「船舶の建造、運航、解体というライフサイクルを考えると最終的には環境間題に行き着く。船舶をいかに安全に航海させ、海洋環境を保護するかという原則に立った船員教育を推進するためには、船員の置かれている現状を社会科学的に研究する必要がある。また、LNG(液化天然ガス)船が急増し、高度な技術を持った船員が多数必要となる中で、船員教育をレベルアップすると同時に、教育内容を国際的に統一していくことも重要な課題である」
??安倍内閣は教育再生を重要政策課題に位置付けているが、海洋教育をどう考えるか。
「既に多くのNPO(非営利組織)が海に親しむ活動を展開しており、私たちはその活動を支援している。教科書や学習指導要領に書けば子供たちが海を理解するかというと、そう単純なものではない。海に触れる場の提供など地道に取り組まねばならない。統一的に教えることも考慮しなければならないが、教える人を学校の先生に限る必要はない」 (「海国日本の針路」取材班)
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