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著者: 粟津 知佳子  
記事タイトル: 中越地震復興ボランティア・「春の陣」を終えて  
コラム名: FEATURE  
出版物名: タマリスク  
出版社名: 地球緑化センター  
発行日: 2005/09/20  
※この記事は、著者と地球緑化センターの許諾を得て転載したものです。
地球緑化センターに無断で複製、翻案、送信、頒布するなど地球緑化センターの著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   2004年10月に新潟県中越地方で起こった地震から7ヶ月。日本財団では、冬の間立ち入れなかった塩谷地区において、ボランティアによる復興支援活動を展開しました。活動にあたり地球緑化センターにお話をしたところ、快く承諾をいただき、第1陣(2005年5月14?15日)と第2陣(5月21日?22日)に渡り、計19名の方々にご参集いただきました。皆さまのご厚意と現場で流された汗に、この場をお借りして改めて感謝申し上げます。
 
■日本財団とは

 日本財団は国内外における公益活動を支援する助成団体です。海洋安全・福祉・環境・災害救援など幅広い分野において、公益法人やボランティア団体に対する助成事業や、セミナーの開催・調査研究などの自主事業を行っています。
 中越地震では、地震発生直後からニーズ調査のため職員が現地入りし、ボランティアセンターの設立支援、ボランティア団体のための拠点の提供などを行いました。

■塩谷について

 新潟県小千谷市塩谷地区は、山古志村から山をひとつ隔てたところにあります。
 国道から山道を20分ほど上がったところに位置する、51世帯からなる集落。棚田と錦鯉の池が点在し、日本の原風景がそのまま残ったような美しいところですが、冬の間は豪雪に閉ざされます。今年の冬も例外ではなく、19年ぶりの大雪に見舞われました。避難勧告地域のため雪下ろしができず、雪の重みで倒壊した家屋も少なくありません。
 通常、災害が起こるとボランティアセンターが立ち上がります。全国から「何かしたい」という人たちがボランティアセンターに集まり、ニーズの中から、避難所での炊き出しや家屋の片付けなど自分のできることを行います。
 しかし中越地震では、余震が多く続いていたこともあり、避難勧告が解けない地域においてボランティアの立ち入りが認められていませんでした。それでも、生活に必要な物品を取りに行かなければいけない、家や畑を守らなければいけない住民は集落へ戻らざるを得ません。
 今回活動に至ったきっかけは、そんな状況の中、倒壊した家でひとり黙々と片づけをしているひとりの男性との出会いからでした。

■「一般ボランティア」ではなく、「精鋭部隊」で

 ボランティアの力を借りて片づけを手伝おう、という話が持ち上がったものの、「ボランティアに個人的な家の片付けまで頼んでいいのか」「身元のわからない人が集落を出入りするのは不安」など住民側から不安の声もあがりました。それに対し、住民有志からなる塩谷地区復興委員会とボランティア団体とが間に入り、繰り返し話し合い、「今は甘えていいんだ、困ったときはお互い様だから」、「不特定多数が出入りするのが不安なら、受付制にして通行許可証をつくり、許可証のない車両は集落へ続く一本道に設置したゲートから先へは入れないようにしよう」など、ひとつひとつ解決策を講じてきました。度重なる協議の末、厚い雪が溶けるのを待って、山間の遅い桜の花が咲き始める5月に実現にこぎつけました。



■人の力が集結した「春の陣」

 つながりのある個人ボランティアや団体に呼びかけた結果、全国各地から約100名の方が小千谷に集合しました。
 まずは事前に連絡をもらっていた名簿のリストと照らし合わせ受付を済ませた後、簡単なオリエンテーション。次に班ごとに車に乗りわけ、塩谷地区へと移動。家庭の倉庫をお借りして臨時の資材基地にし、一輪車、ゴーグル、防塵マスク、手袋、タオルなど、作業に必要な資材を一人一人に手渡します。
 今回の活動は、前もって住民からあげてもらったニーズのリストを元に、活動場所ごとに5?6班に分け、それぞれ経験豊富な災害ボランティアをリーダーに任命し、リーダーの指示のもと活動する、というかたちを取りました。作業内容は主に倒壊家屋の片付け、瓦等の分別、必要な家具の選別、運び出しなど。緑化センターの有志の方々にはチェーンソーを持参していただき、屋根から解体していく際に入り口を開けたり、倒壊家屋から運び出した梁を使ったベンチ作りなどもお願いしました。
 毎回100名近くのボランティアの手を借りて、土日の2日間、6月も含め計3回に渡り作業を行ったところ、どこから手をつけていいかわからない状態だった瓦礫の山がみるみるうちに片付いていき、集落の景色が変わってきました。大勢のボランティアの中でも、普段から道具を使い慣れた緑化センターの方々の手際とチームワークの良さは言うまでもありません。

■塩谷の「これから」

 作業を終えて挨拶のとき、区長さんが「みなさんのおかげで、復興の一歩を踏み出すことができました」と声をつまらせました。業者に頼めば済む仕事もありますが、そこをボランティアの手で担うことによって、被災者の金銭的負担を減らすこと、そして何よりも復興に向けて活力となるエールを送ることができる。それが、災害ボランティアの力だと思います。
 災害は忌まわしいものですが、それをきっかけに知らない人同士が出会い、復興の力が生まれたことは、その場に居合わせて言葉で表現しがたい感動を覚えました。
 避難勧告はまだ続いています。それでも、傾いていた家が消え、更地になった土が畑になり、種が蒔かれ、少しずつ日常の風景を取り戻しつつあります。まだ解決しなければならない問題も多く残されていますが、塩谷では暮らしの再建に向けた一歩を踏み出したところです。
 



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