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著者: 曽野 綾子  
記事タイトル: 天下り?適材適所で利用すればいい  
コラム名: 透明な歳月の光 101  
出版物名: 産経新聞  
出版社名: 産経新聞社  
発行日: 2004/03/19  
※この記事は、著者と産経新聞社の許諾を得て転載したものです。
産経新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど産経新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   お役人のいわゆる「天下り」を、悪の根源と受け取る人がまだ世間には多い。

 福田康夫官房長官は「事務次官経験者らによる特殊法人や独立行政法人への天下りについて『役人(出身の割合)は、(法人の)長、役員の半分以下にしていくのが妥当ではないか』と述べた」そうだ。

 この問題に関して、小泉総理は初め天下りは認めないと言っていたのに、霞が関の反発に遭って、次第に「半分以下ならいい」と変節したのは、道路の民営化と同じで、どんどん公約が後退している、と言わんばかりのコメントを述べる識者も、朝のニュースに出演していた。

 しかしそもそも元お役人の専門家を、組織が利用するかしないかを、そんなに固定的に考える方がおかしいように思う。もっと流動的に、つまり役に立つ人材なら使えばいいのだし、義理で押しつけられるのは拒否できる体質でいなさい、ということだ。

 今私が働いている日本財団の場合、8人の理事・監事のうち、天下りは理事と監事が1人ずついる。

 監事は自治省出身者だが、私たちの財団の財務状況はむしろ外部から必ず人を入れて常に監査してもらうべきだと考えて迎えたのである。

 もう1人の天下り理事は日本財団の主務官庁である国土交通省出身者だが、財団の仕事は海上保安庁を含む国交省と密接な連携を保たなければならないのだから、むしろ国交省からはお互いの意思の疎通を密接にするために来てもらうべきだろう。「ただし今回いらしたこの財団は純粋に民間のものですから、お役所的な予算は通じない場合が多いです」と私は最初にお願いした。

 ここで働き出したころ、私の最大の驚きは、元お役人には「要るだけは要る。かかるだけはかかる」という発想があることだった。私たちの財団は個人の懐と同じで、必ずどこかを削って必要な面に回すほかはない。もっともその主導権も、日本財団の場合には会長・理事長が民間出身だったからやりやすかった。トップを天下りに任せたら、確かに再び「要るだけは要る」型の予算になる恐れはある。

 役人であろうと民間人であろうと、その仕事に精通した人と独自の才能を持った人を、うまく混ぜ合わせて適所に配置することが大切だ。日本財団の任務は、対立のための対立ではないが、初めから役所のできない仕事をすることだと私は思っていた。そうでないなら、存在意義がない。「役人秀才はできない理由を素早く並べあげ、(我々)民間鈍才はできる方法をしぶとく考える」ことを、私は財団の「ちょっとイヤミな姿勢」にして働きたいのである。

 天下りを1人も認めないことに固執する人は、実は天下り組と同じ発想の硬化が始まっているように思う。
 



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