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2003年5月31日より、九州南西海域で引き上げられた北朝鮮工作船の一般公開が東京・お台場にある船の科学館で行われている。この船は、海上保安庁巡視船の追跡を受け、銃撃するなど逃亡を企て、海上保安の正当防衛射撃を受けた後、自爆沈没した。
今回の一般公開は、できるだけ多くの国民に、日本を取り巻く海の現状を理解していただくことを目的に日本財団により企画され、9月30日まで行われている。
船体は、44総トン、全長約30メートル、幅約5メートル、高速航行に適したV字型船型を有している。4基並列に並んだプロペラが4基のエンジンとそれぞれ長いシャフトで連結された特殊な構造である。合計4,400馬力のエンジンは、同クラスの漁船の10倍近く、30ノット(時速約55キロメートル)以上の高速航行が可能であったと推定される。当初、漁船を改造したものではないかと考えられたが、その構造は、明らかに特殊な目的のために製造されたものと思われる。また、工作船内から発見された武器類は、想像していたよりはるかに重武装であり、数量も非常に多かった。
公開約1ヵ月後の7月1日、工作船見学者は、30万人を超えた。1日平均約1万人。土日にもなると1万5千人近くの方が来場し、混雑時には、40分程度待つ場合もある。北朝鮮工作船事件に対する国民の関心の高さがわかる。来場者の層は、家族連れ、お年寄り、若者のグループなど幅広く、特に修学旅行生の姿が多く見うけられる。また、総合的な学習の時間を利用し、見学に訪れる中学生も多い。
新潟県から修学旅行で来た小学生は、「東京に来たので、ぜったい見たかった。グループ行動の時間で見学することを提案しました。思ったより大きな船なのでびっくりしました。」と目を輝かせながら話していた。引率の先生は、「子供たちが、自分たちで調べて、ここを選びました。何事も『百聞は一見に如かず』ですから。」と子供たちの自発的な意思での来場を話してくれた。
国際協力とは、それぞれの置かれている現状を正確に認識することに始まる。北朝鮮工作船の姿を実際に見て、今後の国際協力のあるべき姿を考えてもらいたい。工作船の前に立つと、平和への道の険しさを痛切に感じる。二度とこのような事件がおきず、同じ海を囲む国々が互いに理解し、協力しあえる環境が整うことを祈る。
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