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朝起きたら、ケイタイもメールも持たない私のファックスに、通信が1枚入っていた。私が働いている日本財団の海洋船舶部からの報告である。
4月1日午前10時30分頃、静岡県清水港真崎灯台の北西200メートルの地点で、プレジャー・ボート1隻が火災を起こしているのを「海守」会員が発見、海の110番といわれる118番通報したというのが、その内容である。
清水からは海上保安庁の巡視艇「ふじかぜ」が10時45分頃には現場に着き、真っ黒こげになっていたボートの火事を消し、11時には清水港の船溜まりに曳航した。海に飛び込んだボートの2人は近くの船に救われ怪我もなかった。
「海守」というのは、日本財団が発案命名した活動なのだが、官民一体で日本の海を守る組織である。もちろん何か事故があった時に、一番最前線に立つのはプロの海上保安庁だ。しかしその背後には、あらゆる民間の海の関係者たちが、大きなものから小さなものまで全部動くことになった。
「海守」は自発的な登録制度で、海に関して何らかの専門知識と、海に関心のある人に登録してもらう。会費は無料だが、会員の知識と活動は、長い日本の海岸線と海を、清潔に安全に保つために動員される。
海岸線が汚れれば、皆で掃除をして自然を保ち、不法投棄は全員で見張り、海難事故があれば一番近くにいた人や船が駆けつけて救う。とりわけ海の専門家たちが、今どきこんな姿の船がこんな所になぜいるのか不思議に思った場合は、不審船や不審人物を118番通報して、即刻慎重な調査を開始してもらう。
イラクの戦争で、自国を他国の侵入から守ることに関するさまざまな問題を改めて考えさせられた。自分を守る力がなければ、外敵が入って来るのは、ごく一般的な常識である。大げさでなく国土を守るには、心と技術と眼のあるたくさんの有能な日本人の力を借りて連携の組織を作るべきだというのが、この制度を発足させる動機だった。
「海守」制度は、この2月26日に正式にスタートした。「海守」の登録会員から正式に通報があったのは発足以来これで2度目だというが、さすがに素人と違って正確で責任のある専門的なデータを添えて知らせてくれるから、信頼度が高くすぐに役に立つ。
今まで国民は、国に要求することを人権だと教えられたが、この国に住まわせてもらっている以上、できることでお役に立とうと考えるのは極く自然な感情だろう。
作家の北方謙三氏も「海守」会員で、三浦半島の海辺に仕事場を持ちヨットのオーナーだが、私は、「さしあたり相模湾内で起きるすべての事故・不審船を見張って下さい」などと、忙しい流行作家にただで海の見張りを命じているのである。
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