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著者: 曽野 綾子  
記事タイトル: 銀行名?合併繰り返しより混乱招く  
コラム名: 透明な歳月の光 49  
出版物名: 産経新聞  
出版社名: 産経新聞社  
発行日: 2003/03/14  
※この記事は、著者と産経新聞社の許諾を得て転載したものです。
産経新聞社に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど産経新聞社の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。  
   銀行の名前があまりくるくる変わるので、経済人でも、昔の何銀行がどういう経緯で今何銀行になったか、正確に理解している人は少ないだろう、という人もいる。

 調べてみると、確かに大変な経歴だ。東京銀行と三菱銀行が合併して東京三菱銀行になったのは、命名に芸はないがまだしも理解できる。

 しかし三井住友銀行の場合は、さくらと住友(以下、銀行を略する)が合併して三井住友になったのだが、理解するにはさくらの源から探らねばならない。1968年に日本相互が太陽と改名。1973年、太陽と神戸が合併して太陽神戸に。1990年太陽神戸と三井が合併して太陽神戸三井となる。合併しても三者が名前一つ譲らなかったということを示している。この太陽神戸三井が1992年にやっとさくらとなる。

 一方住友の方は、1895年に住友として創設されたのを、1948年大阪と改名。財閥解体の時期である。しかし再び1952年には住友に戻り、その後、河内、平和相互などを吸収しながら、2001年にさくらと合併して三井住友になった。こうした合併劇と比べると、「昔の名前ででています」という流行歌の主人公さえ折り目正しく見えて来る。

 みずほの場合も複雑だ。1948年に安田が名前を富士と変更。一方1971年に第一と日本勧業が合併して第一勧業になった。2002年の合併には、富士と第一勧業と日本興業の3行が加わった。

 UFJは三和と東海の合併だが、この3文字名前を正確に言える人はあまり多くない。ケネディ大統領の頭文字を取ってJFKと言う人。空飛ぶ円盤と間違えてUFOと言う人。世の奥さんたちはほとんどMJB。コーヒーと混同している。

 りそなに至ってはラテン語だそうだから、我々は意味もわからない。あさひと大和の合併だが、このあさひは1991年に協和と埼玉の合併でできた。りそなではなく、えこな銀行と言う人が多い。えこなオイルの壜は台所にある。

 この合併の姿は、人間にすればそろばん弾いての政略結婚を思わせる。銀行が苦境に立ちだしたのは、合併名称の変更で何とか状況を打開できると思った頃からか。しかもいい名前をつける文学的才能のある人物が、銀行の世界に1人もいなかったことが証明された。

 幸福だのトマトだのあおぞらだのしあわせだの「ふざけないで」と言いたい銀行名もある。今に、家族銀行、長寿銀行(マークは杖をついたお年寄り)、市民参加銀行、ふれあい銀行(女性社員に触らないでください、という注意がカウンターに出ている)、うねり銀行、横綱銀行、ノーベル銀行、おやじ銀行、出会いいやし銀行(出会い銀行といやし銀行の合併)、野球サッカー銀行、おしん大根銀行(商標は2本の大根のぶっ違いで迫力がある)、おむすび銀行(マークがいい)などもできそうだ。
 



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