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今回が最終回の原稿になるかもしれません。
この連載は2年間という約束でしたから。早いものですね。
そもそもの始まりは21世紀初頭に、圓山和則社主と私とが対談して、これからの将棋界を語った熱い誌面でした。私が書いてきたものは「将棋のルールを知らない人でも読める」内容だったはずです。
同時に、パソコン操作が苦手な人にとっても読めることを心掛けてきましたが、果たしてその通りに筆が進んでいたかどうか私自身は自信がない。
この2年間で書いたものを振り返ってみますと、題名が“みんなの将棋”とあるようにお母さんと子どもを中心にしています。これは、近代将棋誌を買う人は将棋マニアのお父さんでしょうから、家に持ち買ったのを奥さんや子どもも楽しく読んで、ファンにもなってもらえればと考えていたからです。
また、将棋に理解を示す企業、団体を取り上げてあります。
特筆すべきは、今年の9月号の原稿です。日本財団は本誌の了解を得て自分のホームページに全文を掲載の要請を出したのです。
日本財団は年間500億円近くの金を有効に活用しています。なかでもハンセン病制圧には全力を注ぎ、この28年間で300億円近くを使って、あと5年以内には世界中から制圧できるところまでになりました。
その基金に、ヤフーオークションを通して競り落としたものをお願いしています。皆さまご協力を。
これは多くの人々からも金や心をいただきたいという方針を打ち立てたからなのです。この出品物に、私のタイトル戦での優勝カップを出すことの是非を問うたもので、全文を日本財団の関係者によろこんでもらえました。
その次の号はJTについて。
日本たばこ産業が公式戦である日本シリーズJT杯の公開対の前に、小学生対決を2局入れた手に触れました。
高学年と低学年の2局。
これが大きな反響で、それを名古屋大会で解説をした私が本誌に寄稿したものです。
勿論JT社の担当の方にもよろこんでいただきました。
たばこは教育とは遠く離れた存在でしたが、将棋を通して、JT杯主催者に各地の教育委員会が協力や後援をする。これからの教育は生きる力を育くむことが重要課題です。JTは大阪府高槻市に生命誌館を建て、バイオに関しては日本有数の会社です。
私は教育には将棋が最適なもののひとつと信じております。
自らが考える 自分で最善手を見つけ出す 自分が自由勝手に指すことができる 自分で決断する 自分で実行する 負けた時は頭を下げて認める 一対一でコミュニケーションが図れる 子供も大人も皆で楽しめる 女性も男性も皆で楽しめる
日本の教育界に欠けているほとんどの解決策が含まれているのです。
近年は将棋の強い中・高校生が学校の成績が一番というケースも目立つようになりました。
高校選手権は団体の部は日本でも指折りの名門校が優勝しています。これを将棋界あげてPRに務めて欲しいものです。論より証拠。
将棋が強い子どもは頭も良く、学校の成績も良い。これを定着化させることが大切です。
教育については、私が東京都教育委員の肩書で将棋のみを賞賛するのは我田引水のそしりが生ずる恐れがあって差し控えています。
プロ棋界は、将棋は強くても、学校の中に将棋を導入することの重要性を強く意識している人は少ないのが現状です。
ならばアマチュアの方々に、日本中の全ての学校に将棋の授業をしてもらえるようにしようではないか。
幸いなことに日文研というのは京都にある日本を代表する学者の研究所。
尾本恵市先生が中心になって2年間に亘るシンポジュームを開き、その成果が1冊の本になるのです。
プロ棋士では、京都在住の木村義徳9段、飯田弘之博士、羽生善治の面々の名前が出ています。私の長兄も研究を発表している。
学者の立場で将棋を眺めた珍しい本で、この種のものは棋界初でしょう。
帯は私が書く。近々私のホームページでもご紹介しますのでご一読を。
将棋学を確立させる。現状ではこれが良い方法かと思います。それには学者の先生方や文化庁の協力が必要です。勿論プロ棋士にも参加してもらい、幅広く運動を推めてゆく。
学校教育の主人公は子どもですし、そのお母さん方の支持は絶対です。
お母さん方に安心してもらえる理論と顔ぶれが必要ですね。
本誌が主催していた「すくすく王将杯」が今年度限りで終了したのは残念です。昨年度を以って打ち切りという結果になりました。この小学校の団体戦は21回にもなる手作りの大会でした。各地で予選を行ない、決勝大会は毎日新聞社のホールを借りていました。私が決勝の審判でずっと務めており、各地の地区予選は地元の愛棋家の皆様のご協力で成り立っていた大会でした。
お母さんや先生方が顔を出すという珍しいもので、そこには本来の将棋の持つ人問同士の交流の場がありました。
諸般の事情により打ち切り。これまでご協力して下さった方々に感謝申し上げます。
将棋盤や机を運んだり、並べたり、引率の人たちとお話しをしたり、私が八面指しを指したりと、苦労もありましたが楽しい思い出が多い大会でした。
将棋界を取り巻く環境も変化しています。
現在のプロ棋界は70年前に確立されたものです。将棋はプロとアマの実力差が一番というのが常識でした。それゆえに、アマチュアに発行する免状には権威があったのです。
ところが、今年度などは公式戦で10勝10敗。アマのトップとプロが同じくらいかと思われるくらいの印象を与えてしまったのです。
アマがプロに負けたことがニュースになるという不思議なことになった。
プロとアマの垣根をプロ側が取り払ってしまったのです。もうひとつの流れ。それは真剣師の復活です。
将棋は金を賭けなくても面白いものという認識が、また元へ戻りつつあります。近頃のアマの将棋大会は賞金が出る。
今月号は2年間の総括とも言うべきものになりました。
2年間愛読感謝致します。
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