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貧しさから脱け出すには、人は自分の命を失う危険もおかす話を昨日は書いたが、今日は貧しさ故に人を殺すのに手を貸すのも平気になる現実を紹介しなければならない。
インドネシアのスラウェシの東南部のワンギワンギ地方では、昨年末、新たな手工業が加った。手製の爆弾作りである。
もともとこの地方は、トウモロコシ、ジャガイモ、蔬菜類を作って暮している、どこにでもありふれた農村だった。しかしこういう作物では大した金にならない。1カ月、70万ルピア(約1万円)の収入になるのがやっとだった。
漁民たちはずっと以前から、漁をするのに爆弾を使っていた。もちろん警察にかくれての違法行為だが、とにかく爆弾の製法は知っていたのである。近隣地区の不穏な情勢は、こうした手製爆弾がよく売れる社会状況を作り出した。
爆弾作りは簡単なものだ。私はそれを子細に記事で読んだがここには書かない。こうした知識が不要に流れると、すぐに真似をする人が出るからだ。
とにかく材料はいくらでも手に入るものだ。ありふれた化学薬品と太陽があれば、誰にでもすぐできる。それをソフト・ドリンクの壜や、ミルクの缶に詰めれば、たちどころに爆弾はできるのである。
約1万円で一家がやっと食べているのに比べて、爆弾の製造と販売は、数十倍のもうけになった。原料となるものを50キロ、マレーシアで仕入れる時には8万ルピア(1160円)で手に入る。それがワンギワンギに入ると40万ルピア(5800円)ほどになる。さらに爆弾の需要が多いポリやアンボン地区に入ると、値段はさらに数倍になる。
爆弾の値段は、その詰め方によって、3500円から7000円くらいまでさまざまだ。こんなに安くても殺傷力は非常に強い。だから手製爆弾はどんどん売れる。そして或る日、町角に立っている市民の傍に、近くで起きた爆発事件によって粉々に吹き飛ばされた人間の腕がドサリと降って来るような事態が起きるのである。記事の書き方は、多島海であるインドネシアのどの島も、この爆弾製造工場になるおそれがあるように読める。
教育と、誰もが普通に食べられて、爆弾製造などしなくても済むような生活を維持すること以外、この平然として破壊的な行為を止めさせることはできない。インドネシアの特定の島の人たちだけが殺傷に対して鈍感なのではない。日本人も食べられなくなれば、爆弾でも何でも作るに違いないのである。
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