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1月10日にフジモリ前大統領が新しく客員教授になられた拓殖大学で、第1回の公開講義をされた。
その前日、日本の大学や学生さんについての一般的な質問のお電話があったので、私は政治的なことより、社会的、文化的な内容の方が喜ばれるのではないでしょうか、と申し上げたが、もうその時にはすべての原稿は出来上がっていたことと思われる。その時の会話で、私も講義を聞かせて頂いた方がいい空気だったので拓大に行くことにした。
校門の前で待っている一団が、私の写真を撮り、「藤森をかくまって」と怒鳴った。また同じ返事をしなければならない。私は一度も私の家にフジモリ氏がおられたことを隠したことなどないのである。彼らは学生ではないようだった。学生なら当然門の中に入れるのに、彼らは外にいたからである。
私は彼らのくれたビラをもらった。私はビラを受け取るのが割と好きなのである。後でゆっくり読める。その日も席に着いてから読んだ。ビラの制作者は「フジモリを被告席へ! 行動」という組織らしいがもちろん連絡先も何もない。
おもしろいことに私のことも書いてある。(だからくれたのだろう)こういう文章だ。「曽根綾子といった言論人がフジモリがテロと戦った『英雄』などと祭り上げている事態は日本の民主主義概念とその価値観の低さを世界に露呈していると言わざるを得ません」
ワルクチを言う時はせめて相手の名前くらい正確に書いた方がいいのではないか。個人の識別はきちんとしないと攻撃の目標が狂う。私は曽野綾子である。
もう1つ、私がフジモリ氏を「英雄」と書いたり言ったりした証拠は提示できなければならない。テレビなら何月何日のどの番組、出版物ならそれこそ正確に何新聞の何月何日付け、或いは何という雑誌の何月号と明記できるわけだ。しかし彼らが証拠を示すことはできないだろう。なぜなら、そんなものはどこにも存在しないからだ。
こういうアジビラというものは、この程度に名前から内容まですべて間違った捏造記事によって作られ、そのガセネタを種に怒りや反撥を煽っているという図式がよくわかる。
と私が言ったら、夫が、
「怒るな、怒るな。我々は知らなくても、どこかに『曽根綾子』という方がおられて、その方がそうお書きなのかもしらんぞ」と嬉しそうに言った。
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