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アメリカの同時多発テロの黒幕とされるオサマ・ビンラディンについて、日本のマスコミの表記がどうも気になっていた。9月20日頃の全国紙を見てみると、朝日は「オサマ・ビンラディン氏」、読売は「ウサマ・ビンラーディン」、毎日は「ウサマ・ビンラディン氏」、産経は「ウサマ・ビンラーディン氏」である。読売だけが氏を抜かしている。これがまっとうな感覚だろう。なぜなら、オサマはテレビの中でアメリカと闘うことをはっきり自分の口で述べているのだから、テロの意図は、明確なので、氏をつけることもないように思う。オサマかウサマかについては、アラビア語のできる人に聞くと「オサマ」が適当だという。
ビンラディンは名字ではない。オサマ・ビンラディンという名は、普通なら「ラディンの息子、オサマ」という意味だ。ビンとかイブンとかいうのは、息子という意味だが、それは強力な父系社会を言外に匂わす命名の習慣による。
アラブ社会では、女性たちの性の純潔が今でも重んじられるのが普通で、中には女性がヴェールで顔を覆ったり、脚や髪を見せてはいけなかったり、男性と同席したりしない習慣がごく普通に残っている国もある。
人間としての尊厳は、何より先祖に淫らな者がいず、父親もはっきりしているということで表される。命名法は、まず自分の名、父の名、祖父の名、曾祖父の名、という臭合に連ねて行き、時には信じがたいほどジュゲムジュゲムのようにご先祖さまの名が連なっている人もある。それだけ血筋のいい誇るべき家柄なのだということを示しているのだろう。
しかし一般に、日本人が考える姓、家族の族名というものはない。新聞の中に「ラディン氏」と書いていたのがあったが、あれは明らかに間違いである。
オサマの場合、彼の父、イエメン出身のムハンマドはサウジ一のゼネコン「ビンラディン」財閥の統帥にまでのし上がった人だったが、後に自家用機の墜落で死亡したという。オサマの父のムハンマドのそのまた父が、ラディンだった可能性は強い。オサマは普通なら、オサマ・ビンムハンマドとなるはずだから、ビンラディンは、財閥の名前が前面に出たものである。
名前一つでも、この通り日本とはつけ方の思想が全く違う。調べて行くと、彼は貧民出の解放闘士ではなく、自分の金で武器を買い、私兵も持てる大金持ちのご子息である。
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